星河の覇皇
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第八十六部第四章 エウロパが受けた衝撃その三十六
「忌まわしいことだが」
「食人の話もありますね」
「それも世界中に」
「しかも未開の部族だけではないです」
「所謂人食い人種だけでもです」
「ありません」
「首狩り族と共に冒険作品の敵の定番だった」
ジャングル等未開の地域を進むもののだ。
「ロビンソン=クルーソーでも出て来た」
「左様でしたね」
「実際にあの地域にそうした部族がいたかはわかりませんが」
「確かに出ていましたね」
「あの作品にも」
「そして飢餓になるとな」
その状態に陥ればというのだ。
「その時にこそだ」
「そうした話が出ましたね」
「まさにあらゆる地域で」
「死んだ者の肉を、であったり」
「中には襲ったりまでして」
「そうだった、人は餓えるとだ」
それが極限状態に陥ればというのだ。
「その行為に手を出す場合もある」
「飢餓になれば」
「まさにその時はですね」
「他に口にするものもなく」
「仕方なく」
「これも人間の性だ」
フレッセルはその顔に忌々しさを出しながら話した。
「残念だがな、しかし常に好き好んで食うなぞはだ」
「狂気ですね」
「まさにカニバリズムですね」
「その話ですね」
「フリッツ=ハールマンがそうだった」
一次大戦後の経済だけでなく社会も倫理も崩壊してしまっていたドイツに出て来た連続殺人鬼であり同性愛の殺人鬼としても知られている。
「どういう考えか理解不能だが」
「好んで人を殺し」
「そしてその肉を口にしていましたね」
「しかもその肉を自分の店で売っていたとか」
「人肉を」
「この男は狂人だった」
このことは間違いないというのだ。
「むしろこの男が狂人でなければ」
「この世に狂気は存在しませんね」
「狂人は」
「まさにそうですね」
「あの男こそが狂人ですね」
「そうだ、食人なぞだ」
まさにというのだ。
「狂人の所業でだ」
「幾ら連合でもですね」
「人間は食べませんね」
「流石に」
「あの国でも」
「かつてはそうした話があってもな」
それでもというのだ。
「流石にな」
「今は普通に他の食べものもあります」
「また薬の効果も迷信です」
「そうしたこともわかっているので」
「それで、ですね」
「あの国もですね」
「そうだ、人は食べない。しかしまさにそれ以外のものはだ」
人間以外はというのだ。
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