私 あの人のこと 好きなのかも やっぱり好きなんだよ 昔からー
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第6章
6-1
2日間の大学祭があって、我が峰ちゃんクラブは校門を入っての庭園の近くという絶好の場所を確保していた。この日はたこ焼き串に蜂蜜レモン水とハンディお好み焼きを揃えていた。
9時過ぎから、中学生とか高校生のグループが買い求めてくれていて、売れ行きは順調で、ポチポチ待つ人も出てきていた。
「おい おい イオ 素通りかよー お前の可愛い真織が頑張っているのによー」と、桐山さんが、澄まして通り過ぎようとしていた伊織利さんを呼び止めて
「アホッ 試合あるんじゃー そこに看板出てるじゃろがー」 確かに、地区対抗戦の何試合目かなんだろう 対校試合のことが・・・12時 キックオフって。
「試合が終わったら 寄るよ」と、離れていたけど私の眼を見て言ってくれていた。
「そうかー じゃー 負けるとこ見に行ってやるから がんばれよ!」と、桐山さんは相変わらずの対応だった。
お昼の11時から庭園で教育学部の音楽専攻の連中のカルテット演奏が始まった。深川翠さんがバイオリンを持って、黒の袖なしのロングワンピースに衿元はパールのネックレスに髪の毛も後ろで銀の飾りで留めていた。バイオリンが二人でチェロとフルートの四重奏なのだ。なかでも、あの人は気品のある美しさで輝いて見えていて、やっぱりすごいと私は圧倒されていたのだ。演奏が始まって、まわりの人達も庭園のほうに集まりだして、聞き入っていて、みんながスマホ片手に写真を撮っていた。
「やっぱり すげーぇなぁー 深川翠 ミスなんとかのコンテストに出たらダントツだよなー なっ 真織?」と、桐山さんが
「そうですね おきれいですね」
「なんだよー 反応薄いのう あっ 妬いてるんだ! 私のほうがきれいだわよって」
「そんなことないですよ おきれいなんですものー」
「へぇー 確かにのー 真織と比べると 気品の差は歴然カナ」
「そんな 私は、野菜じゃぁないし 比べないでください」
「ほっ ほぉー なんか 今日は乗ってこないネ 普段は、マオはどっちみち ごんぼですとか ガサツですよー とか 言い返してバタバタするくせに」
「そんなことは無いですよ 私は 私ですから!」
「へぇー なんか 今日はおかしいよねー」と、他のメンバーにも同意を求めるようにしていたが
「まぁ 真織もそーいう時もあるんじゃぁないか」と、鏡さんが笑いながら言っていたのだ。
その後、演奏が終わると、ラグビー部のマネージャーの小野寺瞳さんが、試合が始まる旨を大声で叫んでいて、みんなをグラウンドに誘導していた。朋子さんが私に行ってきなよって言ってくれて、私は桐山さんとグラウンドに向かった。
「ウチ ラグビーの試合って 見るのん初めてやねー」
「あっ そーなんかー 真織が応援してたら イオも頑張るでー」
「そうかなー」と、でも私はどういう風に応援したらいいのかも知らなかったのだ。
試合が始まって、ボールを持っても、囲まれてくしゃくしゃにされて、上から乗られたりして、私には、こんなに激しいスポーツなのと衝撃だった。あんなことされて、よくケンカにならないもんだと、半分呆れて見ていた。
ハーフタイムだろう時、私にも宇大が負けているのはわかっていた。
「メンバーが足りなくてよ 野球部と柔道部から二人借りているんだよ もう ダメだな 4年生が4人居るんだけど 卒業したら 9人だろう 新入生も期待出来ないし 試合もまともに出来ないから・・・運動部はどこも入部希望者に苦労しているよ 特にラグビーは試合人数が多いからなー 大変だ ここのラグビー部は歴史が古くってな 昔 東大と練習試合をしてたとか言うのを聞いたことがあるけど・・・もう 廃部だな」
「そうなの 部員 少ないんだ」
「まぁ ここに来る奴なんて ラグビーなんて・・・ 最近はな とくに」
「そうかぁー どうすんだろう イオ」
だけど、前半が始まって、直ぐに、密集から伊織利さんが抜け出してボールを持って走った。
「イオ ガンバ・・・・れぇ」と、言い終わらないうちに向こうに倒されていた。それでも、終了間際には、4年の桾沢さんが抜け出して、二人ぐらいの人に掴まれていたんだけど、その後ろから伊織利さんともう一人が押していて、そのままラインに倒れ込んでいた。レフリーが手を挙げてホイッスルを・・・点が入ったみたい。
試合終了のホイッスルとともに
「負けちまったかー まぁ 善戦したんじゃぁない 少ないメンバーで 真織 あいつが後で 寄っても 試合のことは言わない方がいいよ!」
「あっ そう ショックだから?」
「うん まぁ ショックっていうか 秋の対抗戦の中では 唯一勝てる可能性のある相手だったらしいからー 今年は全敗で終わるだろうよ」
「あっ そう そんななんだー」私のほうが、そんなクラブに一生懸命やっている伊織利さん・・・その方がショックだったのだ。崇拝している先輩を追ってまでここにきたのに・・。
1時間程した時に伊織利さんがお店に寄ってくれて、私は
「お疲れ様」と、言ってしまったら
「なんも 疲れるほどやり切ってないよ」と、心無しか機嫌が悪かった。
「蜂蜜レモン水 2ツ」と、注文して一気に飲み干していた。私は何だか近くに寄るのも躊躇していたら、深川翠さんが来てくれて
「たこ焼き串 いただこうかしら」と
「ハイ! たこ焼き串 1丁」と、私は、うれしそうに中に声を掛けていて
「演奏 素敵でした」と、私はおべんちゃらみたいに言って、丁寧にたこ焼き串を手渡ししていて、すると、髪の毛からフレグランスの良い香りがしてきて「あのぅ 先輩って いつも 素敵ですね」
「??? そうかしら? あなた この前 私が帰る時に お会いしたわね」
「そっ そうです 実は 先輩にお会いしたくってー」
「そうなの? なにか用事があったの?」
「いえ ただ 先輩にお会いして見たかっただけなんですけど・・・素敵な方だと聞いていたから・・」
その会話を伊織利さんも桐山さんも呆然として聞いていたのだ。すると、深川翠さんが
「まぁ 私も 一度、大学のアイドルにお会いして見たかったのよ あそこで、出会った時 すぐに あなたのことってわかったわ」
「えっ そんなー 私 あのー もっと 先輩のこと・・・ 友達・・ちゃう・・・あの もっと知りたくて、いろいろと教えてもらったらー」と、私は、どう話したら良いのか、口の中でもごもごしていたら
「いいわ 私も あなたのこと もっと知りたいわ お友達になれたらね それにね あなたに、お話ししたいこともあるの 今度 水曜日のお昼 学生食堂で また お会いしましょ」と、その時、桐山さんが「へぇー」と、思わず言っていた。
「わかりました 必ず 行きます」と応えると、先輩はさよならしながら消えて行った。
「真織 なんだよー あの人に憧れてんのか?」
「うん でも 男の子って訳じゃあないから イオも安心でしょ」と、伊織利さんに向かってウィンクしていたのだ。
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