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老人の性欲

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第四章

「倅がやっと結婚するんだな」
「もう三十五か」
「それで二十八の嫁さんだが」
 その彼女がというのだ。
「物凄い美人でスタイルもいいが」
「何も思わないんだな」
「これがな」
 実際にというのだ。
「思わないんだ」
「そうか」
「同じだな、というかそんな倅の嫁さんだのな」
「倫理ってやつがあるしな」
「人妻で義理の娘でな」
「そんな人にどう思うかなんてな」
「谷崎潤一郎の瘋癲老人日記があったな」 
 南はこの文豪の最後の代表作の名前を出した。
「息子の嫁にっていう」
「ああ、読んだことないがもう身体はどうでもな」
「欲だけ残ったっていう」
「谷崎の実際の話らしいな」
「ああいうことはな」
「もうわし等にはないな」
「あるものか」
 それこそというのだ。
「全くな」
「あること自体がな」
「身体はどうでもな」
「やっぱりないな」
「どうしてもな」
 現実はというのだ。
「ないな」
「そうだな」
「あったらな」
 それこそというのだ。
「そっちの方がな」
「凄いな」
「ああ、しかしな」
 それでもというのだった。
「七十過ぎで子供作る爺さんも」
「谷崎のその作品も」
「異世界に行く方が現実的だよ」
「死んでな」
「死んだら生まれ変わる」
 輪廻転生を信じているからこその言葉だ。
「だからな」
「それもあるな」
「有り得る、魔法やモンスターの世界もあるだろう」
「こっちの世界とは別にな」
「しかし性欲旺盛な爺さんなんてな」
「そうはないぞ、そっちが真っ先に衰えて」
「枯れてな」 
 そうなりというのだ。
「そしてな」
「こうして話すだけだな」
「本当にな」 
 二人で話した、そして実際にだった。
 藤本は孫の彼女、アイドルの様に可愛いその娘がミニスカートで家に遊びに来てもいらっしゃいと微笑んで言うだけで。
 南も息子の嫁になる女性の見事な胸や尻服の上からはっきり出ているものを見ても何も思うことなく。
 やはりだ、二人で言うのだった。
「何も感じないな」
「本当にな」
「街を歩いてもな」
「女の子に奇麗とか可愛いと思っても」
「それだけだ」
「欲を感じることはない」
「幸いまだ食欲はあって」 
 藤本はそれでと話した。 
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