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リュカ伝の外伝

作者:あちゃ
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Let It Be

(ラインハット王国領:サンタローズ教会)
アーノSIDE

午前中の早い時間に事務所に集まったが、聖歌隊へ提供する新曲の練習と、奥様が作ってくれた昼食(サンドイッチ)を食べ終わってから私たちはサンタローズへと到着する。
もう既に何度かは社長の魔法(ルーラ)を体験していたが、本当に便利だ……ここは外国なのに、一瞬で到着出来る。

到着早々サンタローズの教会が目前にあり、周囲の田舎差加減に比べて豪華である印象を受ける。
そんな豪華な教会から一人のシスターが姿を現す。
唖然とするほど美女だ!

それなりの年齢なのは窺えるのだが、若く見えるし美人だし……そして何より巨乳!
あの野暮ったいシスターの服(スカプラリオって言うんだっけ?)を着用していながらボディーラインが強調されていてセクシー!
ウチ(メンバー)のピノよりも大きいかもしれないわね。

「フレアさんお待たせ」
現れたシスターに優雅に近寄り左手の甲へさり気なくキスする社長。
因みに現在は社長の姿だ。あの筋肉美を拝めないのは少しばかり残念ではある。

とは言え社長の格好良さには変わりなく、私たちを何時もの様に格好よく教会へとエスコートしてくれた。
通された協会内は外観共々豪華だ。
奥の壇上(ステージ?)には15~6人のシスター(の格好をした)が居る。社長も言っていたがかなり平均年齢は高い。

高齢シスター()かりの中央付近に居た一際背の低いシスターがこちらに気付く。
深々と頭を下げて我々(ほぼ社長)に挨拶をする。
如何(どう)やら社長とアイリーンが最年少だと言っていた少女だろう。本当に若い……私よりも年下で美少女だ。

そんな美少女の隣に居た、これまた若い(と言っても我々くらい?)のシスターもこちらに頭を下げる。
そして私はまたビビる。そのシスターの巨乳に!

先ほどの“シスター・フレア”と呼ばれたシスターよりも大きいかもしれない。
そんな彼女だとシスターの服(スカプラリオだったよな?)でも凄くエロく見える。
逆に彼女の様な女性は、あんな服は着ちゃダメなのでは無いだろうか?

「いらっしゃいプーサン♥」
そんなエロシスターが社長に歓迎の挨拶。
あれ……よく見たら彼女って……リュリュ姫様か?

「二人への説明が遅くなって申し訳ないけども、あの女……ゲフンゲフン……あの女性はリュリュさんで、その隣に居る一番若いシスターはリュリュさんの妹で名前はフレイちゃんよ。フレイちゃんは凄く良い()だから優しくしてあげてね。……それと二人のお母さんが、そこに居るシスター・フレアさんよ。ここの教会の責任者だし、そこら辺の意味をちゃんと理解してね」

なるほど……だから社長自らが直接手を出してこの村の教会に協力しているのか!
関心と納得の入り交じった感情で社長等の後に付いて進むと、シスター()かりの奥から、これまたインパクトのあるシスターが姿を現す。

年の頃ならリュリュ様よりかは多少(?)上……だと思われるのだが、何がインパクトなのかと言えば……う~ん……言い辛いのだが……その……巨漢!?
そう、彼女は初見では驚かない方が無理があるくらい巨漢な女性なのだ!

彼女も皆さんと同じくシスターの服(スカプラリオ?)を着ているのだが、私とアイリーンとちょっと無理をすればヴァネッサ先輩が一緒に着られそうなくらいワイドにデカい。
ここまでの流れで言ってしまうが、彼女もかなりの巨乳だゾ。ただ全体的に大きいだけで、カップ数となると……?

シスターの服(スカプラリオ)の所為でヘアースタイルは判らないけど、プックリとパッツンパッツンに張った丸く大きい顔には、牛乳瓶の底をレンズ代わりにした様な丸眼鏡を掛けている。社長とお揃いに見えるのだが、社長の方には度が入っておらず伊達眼鏡なのに対して、彼女の眼鏡には確実に度が入っているだろう……しかも結構強めに。

こう言うのって眼鏡を外すと絶世の美女ってパターンが往々にしてある(特に演劇の世界とかでだけど)のだが、彼女は顔の汗を拭うために一度眼鏡を外したのだが、顔に肉が多すぎて結構な細めになっており……正直絶世の美女では……無い。
……これ以上彼女の容姿について語るのは止めよう!

我々が進むに合わせて彼女も近づいてきて、程良い距離になったところで社長が、
「先ずは紹介するね。彼女の名前は“カサンドラ・ファン・クラブ”ちゃん。この国の貴族“クラブ侯爵家”のお嬢さんだ。まぁ貴族だからって特別扱いする必要性は無いよ」

「よろしくお願いいたします、カサンドラ・ファン・クラブと申します。如何(どう)かカサンドラとお呼びください。本日よりピアノを習う事となりました……音楽の基本は学んできたつもりですので、どうぞその辺はよしなにお願い致します」

社長の言われるとおり“貴族”で有る事を意識する必要性は無さそうだ。
かなりソプラノな声質で、声量も申し分ないくらいデカい!
この距離で聞こえるから、もう少し小声で喋って欲しいわね。

そんな事を考えてる内に他の方々や我々の紹介が終わる。
遠目ではリュリュ様を眺めた事はあったが、やっぱり間近で見ると絶世だわ!
世の男共が夢中になるのも共感出来る……だが、その美しさを台無しにする程極度のファザコンという話だが……?

いくつか事務的な話が終わると、社長が持ってきた新曲の楽譜が皆さんに配られる。
殆どの人が楽譜を見ても理解出来ないのだろう……理解出来る歌詞だけを小声で読んでいる。
そこで社長から「取り敢えず一度僕等で歌ってみようか。ヴァネッサちゃんは通しで弾ける?」
「午前中のぉ練習でぇ大体は大丈夫にぃなりました。ピアノは私がぁ……」
アイリーンへの対抗心からか、ピアノ伴奏は譲らない先輩。プライドが高いわぁ。

先程まで挨拶をしていたカサンドラさんも一旦雛壇状のステージに戻り新曲を披露するために集まった私達のピアノ側を注視する。
ピアノを弾く先輩以外、私とアイリーンと社長は雛壇に集合したシスター等の方を向く。

「ワン・ツー……」
と社長のリズムで先輩が弾き始め、私等も歌い出す。





シスターの服(スカプラリオ)を着たほぼ老婆達から感嘆の溜息が聞こえこの新曲の素晴らしさを実感してる事が解ってくる。
だがそれを凌駕するのがカサンドラさんの感動的な絶叫だった。

この()(年上に()と言うのは失礼かもしれないけども)は本当に音楽が好きなのだろう……それが心底伝わってくるくらい感動して、それを自らの言葉で語ってくる。
うん。解るわ……凄く共感出来るわ……でもね、貴女声がデカすぎるのよ。

この教会は流石というか、音響が整っていて彼女みたいに声がデカいと、それも大きく影響して凄い事になる。
こう……耳が……キーンと……
悪気が無いのは解ってるけど、もう少し意識して欲しいわ。

「カサンドラちゃん……この前も言ったけど……君はもう少し小声で喋る癖を付けてくれ。この曲に感動してくれたのは伝わったし嬉しいけど、それだけの大声で感動を伝えられると、その後の他の人との会話に支障が出る。君は歌も上手いし、音楽の知識も多い……だけど声のバランス調整が出来てない。結構な欠点だよ。それをこのサンタローズの聖歌隊で学ぼうね……あと普段喋る音量も一緒に……ね☆」

もうどうやら既に社長から注意は入っていた様だ。
何時もお優しい社長が、何時も以上に優しく諭す。
「あぁ……す、済みません。そうでした。ついうっかり感動してしまいまして……カサンドラの悪い癖でございます……申し訳ありません」

んんん……!?
如何(どう)やら彼女にはもう一つ悪い癖がある様に見受けられる……
今だけだったのか、自分の事(一人称)が“私”とか“僕”ではなく、自らの名前……かもしれない。悪い事ではないのだけど……正直私は嫌いなのだ!

まぁ性格を含めた他の事に関しては嫌悪感は微塵も感じないから一人称くらいは私達が我慢するべき事だろう。
何より社長に言われて直ぐに音量調節が出来たのだから、意識はしているのだろう。

兎も角……今日はこの方々に音楽のレッスンを付けるのが私の役目。
初めて他人(ひと)様に音楽を教える立場になるのだ……
気を抜くわけにはいかないわね。

パーカッション関連であれば自信があるのだけれども、ピアノや歌唱となると、他の二人に頼る事が多いだろう。
まぁコレも勉強ね。



他人(ひと)に自分の得意な事を教えるって楽しい!
窓の外は既に黄昏時になっており、結構な時間を聖歌隊方の練習に費やした事が窺える。
皆さんご高齢な方が多いので、そろそろとの事になり時間の経過に驚いた私達。

この教会の責任者であるシスター・フレアさんに「プーサン社長……そろそろお時間的に……」と言われ、熱中しすぎてる事に気が付く私達。
「わぁ、失礼した! 皆があまりにも覚えが良いから、熱中しすぎて時間感覚がなくなってたよ。そうだね、今日はここで終了しよう……続きは来週だね」

社長も熱中しすぎてた事に気付き謝罪で本日は終了。
来週もやるのかぁ……私も参加させてほしいわね。
社長に頼み込もう!

「はい。皆さんも今日は練習に付き合ってくれてありがとうね♥ これ……少ないけども今日のバイト代よ。また時間が有ったら私達聖歌隊の練習に付き合ってね」
そうシスター・フレアさんが私とアイリーンと先輩に近づき封筒を手渡しながらお礼を言ってくる。

何の封筒なのか解らなかったから受け取ってから直ぐに中身を見てしまう。
すると中からはお金が……!?
しかも1200(ゴールド)も!!

え、何!?
“バイト代”とか言ってたけど、多過ぎよ!
私は別にお手伝いをしたかっただけだし、寧ろ楽しんだのは私の方なんだし……貰えないわ!

「しゃ、社長……貰えませんってこんなに!」
「さぁ……そう言われても、僕が用意したワケじゃないし。フレアさんのご厚意だし。それを無碍にしようって娘にも困り者だし(笑)」

「アーノ……諦めなさい。シスター・フレアのご厚意をありがたく受け取りましょう。世の中に嫌われてもシスター・フレアや社長に嫌われる事は回避するべきよ(笑)」
アイリーンに諭される。

もう彼女は解っていたのだろう。
言っておいてくれれば良いのに……性格が悪いわね。
私は先輩と目を合わせて頷き合う。

やっぱり絶世と呼ばれるレベルの美男美女は神に近い存在なのだろう。
大金の入った封筒越しにシスター・フレアさんに頭を下げて素直に高額バイト代を懐にしまった。
こんな大金を貰えてしまうとなると、来週の練習参加申出が言い辛くなるわね。

そうか……だからアイリーンもそんなに高頻度で聖歌隊の練習に参加してなかったのか!
社長の新曲を聴きたい。
自身の得意分野で他人(ひと)様に教えたい。

でもノコノコ行くと分不相応な大金を渡される……
私は自分が常識人ではあるだろうと認識しているから、これは遠慮してしまうかもしれないわね。
他の()(プリ・ピー(プリンセス・ピープル)メンバー)に声を掛けてこなかったのも、アイリーンなりの気遣いだったのかしら?

とは言え、今回の呼び出しは説教では無かったのだし、今日参加できなかった3人には説明しないとならないわ。
面倒くさいし、アイリーンに押しつけちゃおうかしら?



(グランバニア王都:ニック・ジャガーの店)

後片付け(と言う程の事も無い)も終わらせ、シスター・フレアさんからの夕食の誘いを社長が「う~ん……ごめん、今日はパスするね。事務所に奥さんを待たせてるから」との事でお断りさせてもらい(因みにアイリーンもこの後に別のバイトがあるた断るつもりだったらしい)グランバニアの事務所へと帰ってきた。

こちらも事務員さんとともに後片付けを終わらせて、社長からの「魔法(ルーラ)で送るよ?」とのありがたい申し出を断って、社長夫婦と私達3人組は別れて帰る。
だが私達はアイリーンの次のバイト時間までミック・ジャガーさんの店で夕食を摂る事に。

頂いたありがたすぎるバイト代で“肉ジャガ定食”と“生ビール”を……
先輩は“塩鮭定食”とやっぱり“生ビール”。
アイリーンはこの後バイトがあるからアルコールはなしで“生姜焼き定食”と“ジンジャーエール”だ。生姜三昧ね(笑)

「しかしムカつくわねぇ!」
私や先輩が生ビールを飲む姿を見詰めながら、何か気に入らない事があるアイリーンが文句を垂れてくる。
ビールならやらねぇぞ。

「なぁにが気に入らないのぉ?」
飲んでるビールをアイリーンから遠ざけながら、先輩が不思議そうに尋ねる。
私もつられる様にアイリーンからビールを遠ざけた。

「別にビールの事じゃ無いわよ!」
「じゃぁ何よぅ?」
「この流れでクレームは、如何考えてもビールだろ!」

「違うわよ! あの女よ、あの女!」
「どの女だよ!? 今日一日、社長とニック・ジャガーさん以外の男には会ってないだろ!」
「お婆ちゃんが多かっぁたけど、女ぁの人ばっかりだったわよねぃ」

「リュリュさんよ!」
「リュリュ様ぁ? 何か問題があったかしら? 聖歌隊の中でもズバ抜けて覚えが良くて上手かったけど……?」
私や先輩は彼女(リュリュ様)の評判を、グランバニア内での事しか知らないから、あんなにも歌唱力があるとは思ってもみなかった。

アイリーン程では無いが、凄い早さで新曲を憶え、合わせ練習でその能力を発揮してた。
教える立場なのに、彼女が歌う度に聞き惚れていたわ。
「だからムカつくのよ!」

「何だぁ!? 天才の自分より上手いからって嫉妬か? みっともないぞ!」
「はぁ!? そんなんじゃ無いわよ!!」
じゃぁ何だよ?

「あんなに美人で、歌の才能もあって、聖歌隊に凄く貢献してるのに……あのファザコンっぷり! 見ててイライラするのよ!! 社長は嫌がってるじゃない! 気付かないの、あのバカ女!?」
「ちょ……言い過ぎぃなんじゃぁ……?」

「アイリーンはリュリュ様が嫌いなのか?」
「大っ嫌いよ! 社長の嫌がる事をする女なんて!」
そうは言ってもなぁ……

「社長のお手伝いもできるし、聖歌隊のお手伝いもできるし、サンタローズのバイトって最高なんだけど……如何してもあの女に近づかなきゃならないのが難点なのよね!」
「でも本当に上手かったじゃないか。私は彼女の歌声に聞き惚れてしまったぞ」

「そこよ、そこ! 私だってあの女の歌声に聞き惚れてんの! だから余計にムカつくのよ! さっさと男作って結婚でもしちゃえば良いのに、いい歳して『パパぁ、パパぁ♥』ってベタベタ社長にくっつくなっての!」
身勝手な嫌悪だな。

そんな勝手に苛ついてるアイリーンにビールを見詰められながら、私達は今日のディナーを終わらせる。
家に帰ったら直ぐにでも今日習った“Let It Be”の反復練習をしよう。
今日は最高の経験だったわ!

アーノSIDE END



 
 

 
後書き
私の書くDQ5では設定上ラインハットの貴族の名前に特徴があります。
それは『ファン』です。
以前登場して貰ったネル子爵家のドン君はフルネームが『ドン・ファン・ネル』となり、中央の『ファン』が彼を貴族であると記してます。
現実でもドイツやオーストリアあたりに『フォン(VON)』という貴族の証明があります。
カサンドラも同じです。 
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