ソードアート・オンライン~漆黒の剣聖~
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
フェアリィ・ダンス編~妖精郷の剣聖~
第三十七話 宴会と下調べ
「それで、どこにハッキングしてるの?」
「レクトのフルダイブ技術研究部門。なかなかセキュリティがたいけど・・・まぁ、これくらいなら何とかなるな」
「・・・翡翠の教育の賜物ね」
「・・・・・・・・・それには触れないでくれ」
キーボードを高速で叩きながら、影をおとすという器用な事をする桜火だったが、無事にレクトのフルダイブ研究部門のサーバーにハッキングできると真剣な面持ちになり、ディスプレイに表示されるものを見ていく。少しの間、その姿を微笑ましげに眺めた後、焔は部屋から出て行こうとする。
「さて、と。私はそろそろ準備を始めるから、使い終わったら電源落としておいて」
出て行く直前に桜火に向かってそう言うと、桜火はキーボードをたたく手をいったん止めて焔に向きなおった。
「了解・・・ああ、いく前に一つだけ・・・レクトが出してる何かしら知らない?」
「レクトは結構な大手だからいろいろなものだしてるけど・・・なにかしらって?」
「ん~、フルダイブ関係のもの。ゲームか何か出てない?」
「ああ、それなら、アミュスフィアってハードで出てるのがあるわよ」
「アミュスフィア?」
「ナーヴギアの後継機よ。簡単に言えばナーヴァギアのセキュリティ強化版と言えばいいかしら・・・それのことよ」
そういって焔が差した指の先には2つのリングが並んだ円環状の機械があった。それに一度だけ目をやると、再び焔に視線を戻す。
「そのソフトの名前ってわかる?」
「≪アルヴヘイム・オンライン≫だけど、それがどうしたの?」
「いや、ちょっと気になることが、な」
言葉を濁す桜火に焔は特に気にした様子もなく「それじゃ、あと片付けはしっかりしてね」とだけ言い残し部屋を出て行った。焔が出て行ったのを確認した桜火は再びハッキングを続けるがたいした情報を得られなかったのか、すぐにハッキングを切り上げた。
「≪アルヴヘイム・オンライン≫、ね」
ネットでそのソフトの名前を調べていくと公式サイトから掲示板のスレッドまで結構な検索数が表示された。公式サイトに入り、開発元と発売元を調べていくと意外な情報が手に入った。
「レクトプログレス、か。レクトのフルダイブ研究部門にレクトの子会社が発売しているVRMMORPG・・・しかも研究部門の主任は須郷伸之と来ている・・・これは偶然か?」
桜火の脳裏にちらつくのは須郷伸之の姿と言葉だった。
―――未だに眼が覚めない三百人の命を握っているのは僕だよ―――
冗談には聞こえなかったその声は本気の証だった。ならば、三百人が目覚めないのには必ず須郷伸之がかかわっていると思ったが、あくまで推論の域を出ない。
ピーン、ポーン
というインターホンが鳴ったが、そんなことお構いなしに桜火は再びキーボードに指を走らせる。今度はハッキングではなくアルヴヘイム・オンラインについて調べていく。いくつかの情報サイトを見ていく中で奇妙なものを見つけた。
「これは・・・改善要求の署名集め?日付は・・・去年の秋頃、か・・・どうも引っかかるな・・・」
背もたれに寄りかかりながら天井を見つめる桜火はああ間に引っ掛かるものを感じてはいるのだが、それが何かまではしっかりとわかっていない。ハァ、と溜息を吐くとパソコンに視線を戻したところで再び須郷伸之の言葉が頭に響いた。
―――三百人を生かすも殺すも僕しだいってことさ―――
「生かすも殺すも、か・・・・・・まてよ・・・須郷伸之が主任をしている部門がSAOサーバーを管理している。それは間違いない。レクト・プログレスはレクトの子会社。その子会社からVRMMORPGが発売され、改善要求があげられるほどのゲーム・・・」
そう呟くのと同時に桜火は愛用のスマホに手を伸ばし、ある人物へと電話をかけた。
『はい、もしもし』
「親父か?おれだ、桜火だ」
『よぉ、桜火!今どこにいるんだ?』
「姉さんのところ」
『焔のところか。なら暇見つけてこっちにも顔出せよ、焔と一緒にな』
「顔出したら出したで砂糖を吐きたくなるんだが・・・」
『さぁな、それはおれの知ったことではない。んで、突然どうしたんだ?声を聴きたくなったってわけでもないんだろ?』
「ああ、もちろん。いくつか聞きたいことがあるんだ」
◆
「姉さん、ちょっといいか?」
そう言いながらリビングに顔を出すと、そこには見知らぬ顔ぶれが八つ並んでいた。
「ん?どうしたの、桜火?」
「・・・えっと、とりあえず、自己紹介が先か?」
それから、桜火をはじめとした自己紹介が行われた。
「月影 桜火です。姉がご無沙汰しています」
「ンじゃ、俺からだな。霧雨 迅だ。よろしくな」
「島津 正宗です。よろしく」
「十六夜 久遠よ。こちらも焔にはお世話になってるよ」
「水鏡 渚です。焔とは仲良くさせていただいています」
「私は小鳥遊 奏ね。よろしくお願いします」
「御剣 燕だ。よろしくな」
「俺は不知火 蓮だ。よろしくたのむぜ」
「最後は私ね。天壌 瑞希よ。焔とは恋人ね」
因みに焔はここにはいない。なくなったおつまみを作りに台所で腕を振るっているところでる。
「それにしても、かの月影 桜火と会うとは考えませんでした」
「あれ、この子有名人?」
正宗の言葉に反応したのは久遠だった。その久遠の問いに答えたのは正宗ではなく酒の入ったコップを口に運んでいた迅だった。
「少なくとも武術の世界では、な」
「武術の世界では?」
「ええ、そうです。『月影の三人の闘神と一人の鬼神』の話しは前にしましたよね?」
「ええ。三人の闘神の一人が焔だということは聞きました」
確認するかのような言葉に同意したのは渚。その言葉を聞いた正宗は続きを語っていく。
「そのなかで、一人の鬼神というのが彼のことです」
「へぇ~、人は見かけによらないというが・・・その典型例という訳か。なぜ、鬼神なんだ?」
頷きながらもふとした疑問を口にする蓮に答えたのは迅でも正宗でもなかった。
「落ちこぼれという扱いをされながらも、流派の技をほぼ使えないにも関わらず、己が一族において片手で数えられるほどの存在へとなっていたからよ」
桜火以外が声のした方を向くといくつかの皿を持った焔が立っていた。
「畏怖の念を込めて呼ばれたのが鬼神。基本を極めた桜火の武は皮肉にも鬼と例えられたのよ」
「おれ的には別にどうでもいいんだけど。それより、おれは姉さんの恋人が同性だったっていうのが驚きだな」
「・・・翡翠の影響よ」
「それは・・・ご愁傷様?」
桜火の隣に腰を下ろしながら言う焔に言葉がなくなる桜火。若干テンションが下がった二人を見た瑞希は今思い出したかのように桜火に言った。
「そういえば、桜火君って焔に用事があったんじゃないの?」
「・・・そういえば、そんなこと言ってたな。おれたちのことは別に気にする必要はないぞ?」
「そうですよ。ことによっては私たちも力になれるかもしれませんし」
瑞希に続き、燕や奏もまくしたてるように口を開く。それを聞いた桜火は焔に件の用件を伝えた。
「≪アルヴヘイム・オンライン≫について教えてほしいんだ」
◆
「これは、また、ピンポイントというか、なんというか・・・」
「ええ、まさか、その名前が出てくるとは思いませんでした・・・」
正宗と渚の反応を見た桜火は首をかしげる。他のメンバーの反応をうかがってみると、二人に似たり寄ったりな反応だった。それに桜火が首をかしげるのは当然である。
「えっと・・・?」
「えっとね、桜火君・・・私たちは、そのアルヴヘイム・オンラインで知り合ったのよ。だから、みんなこんな反応なの」
「・・・なるほど」
瑞希の説明に納得する桜火。数奇な運命もあったものだ、と心の中で呟きながら。
「それで、何が知りたいの?」
「まぁ、いろいろと・・・」
そこから桜火の問いに答えていく焔たち。ある程度質疑応答が終わると、桜火は少しばかり考えた後、溜息を吐いた。
「確証はないが、これはログインした方が早いかな・・・」
「それなら、私の使う?」
焔の申し出を桜火は首を振って遠慮した。
「いや、さすがにそれはいいよ。とりあえずいろいろ買ってくるわ。パソコンねぇと何もできないし、こんなことがあるとは考えなかったがナーヴギアは持ってきてるしな」
「ナーヴギアでやるの?」
「ああ、見たところできるみたいだし、そうお金もかけられねぇからな。問題は歩きや自転車だとパソコンは持ち運び辛いってことだよな」
「それなら、私が車を出しましょう」
今度は正宗の申し出に桜火は驚いた。
「いいのか?」
「かまいませんよ。それに結構な大荷物になると思いますよ?」
「まぁ、確かにな・・・でも飲酒運転はだめなんじゃなかったっけ?」
「まだ酔うほど飲んでません」
「・・・・・・つか、おれとあんたってそこまでしてもらうほどの関係だったっけ?さっき何度か話した程度だった気がしたけど?」
「ええ、一度話せば友達、二度話せば親友、三度話せばなんちゃらと言うではありませんか」
爽やかな笑顔で言う正宗だったが、迅から突っ込みが入った。
「気をつけろよ。こいつ、こう見えて得結構腹黒いぞ」
「ひどいことを言いますね、迅。わたしはただこれをきに手合わせを願えたらな、と思っていただけですよ?」
「いや・・・んな恩着せられなくても、示現にその人ありと言われるあんたからの申し出なら喜んで受けるんだが・・・」
「そうですか!では、今はさっさとあなたの用事を済ませるとしましょう!」
意気揚々と立ち上がる正宗にほかのみんなは呆れていた。正宗に続くように出かける桜火に焔が聞いた。
「桜火、お金あるの?」
「ああ、いつぞやの宝くじのお金が」
「なら、心配いらないわね」
それから一時間後、パソコンとアルヴヘイム・オンラインのソフトなどを買ってきた桜火と正宗。なぜそれだけの買い物で一時間もかかったのかというと―――
「パソコン選ぶのに苦労した」
とは桜火の言葉であった。
◆
「そんで、どの種族にするんだ?」
パソコンの初期設定までを完了させた終えた後、桜火は休憩がてら焔たちの宴会(?)に混ざっていた。酒を片手(現在十六歳なため違法であるが止めるものは誰もいない)につまみをちびちびと食べているとき、迅が聞いてきたのはアルヴヘイム・オンラインのことであった。
「どんな種族があるんだっけ?」
「サラマンダー、シルフ、ウンディーネ、ノーム、インプ、ケットシー、スプリガン、プーカ、レプラコーンの九種類よ」
「九種類、か。それぞれどんな特徴があるんだ?」
桜火の問いにそれぞれが答える。
「サラマンダーは武器の扱いと攻撃に長けた種族よ」とは焔。
「シルフは飛行速度と聴力に長けた種族だな」とは迅。
「ウンディーネは回復魔法と水中活動に長けた種族ですね」とは渚
「ノームは耐久力と採掘に長けた種族ですよ」とは正宗。
「インプは暗中飛行と暗視に長けた種族だよ」とは久遠。
「ケットシーはテイミングと敏捷に長けた種族ね」とは瑞希。
「スプリガンはトレジャーハントと幻惑に長けた種族な」とは燕。
「プーカは演奏と歌唱に長けた種族です」とは奏。
「レプラコーンは武器生産と細工に長けた種族だぜ」とは蓮。
九人の言うそれぞれの種族の特徴を聞いた桜火は数瞬悩んだがすぐに答えが出た。
「ん~、選ぶならウンディーネかインプだな」
その言葉で場の雰囲気が二つに分かれた。明らかに喜ぶ二人と落ち込む七人。結構酒がまわっているようで全員のテンションがおかしい。
「どうして、その二種族に絞ったの?」
「えっと・・・まず、ケットシーとスプリガン、プーカは柄じゃないってのと、ノームとレプラコーンは特徴的におれに余り合わない。んで、サラマンダーとシルフはプレイヤースキルでどうにかなりそうだからね。だったら、水中活動ができるウンディーネか暗視がデフォでついてるインプかってことになった」
「「それで、どっち(どちら)にするの(ですか)!?」」
桜火に詰め寄る久遠と渚。二人ともおもいっきり美人なため、非リア充な男が今のこの光景を見たら桜火を呪い殺そうとするだろう(できるかできないかは別にして)。詰め寄らながらも桜火は頭を回転させどちらの種族が得かを選んだ末出た答えは
「・・・えっと、インプにします」
というものだった。しかもなぜか敬語で。それに喜んだのは久遠。落ち込んだのは渚。最終的な勝者は久遠となった。
「(いや、その前にいつから勝負になった?)」
なんにせよ、この状況をどう納めるか悩む桜火だった。
後書き
どーもです!今回からアルヴヘイム・オンラインにログインすると思った読者の皆様には申し訳ないのですが、今後重要になってくるオリキャラを八人も出させてもらいました!
ルナ「これからややこしくなってこないことを祈るばかりです・・・」
それは言わない約束だろ!どれより今回は君かい?
ルナ「当分出番はなさそうだし、ソレイユは収録で忙しそうだから代わりに私が来ました。多分次回からも私だと思うなー」
ジト目でこちらを見ないでください!こうするしかなかったんだ!仕方がないじゃないカ!!だから拗ねるなって!!
ルナ「別に拗ねてませんよーだ。それでは感想などお待ちしております」
ちょっ、それ私のセリフ!!
ページ上へ戻る