金木犀の許嫁

「そのことが」
「白華ちゃん羨ましいって思ってたの」
「そうだった」
　こう言うのだった。
「これが」
「お互いコンプレックス持ってたのね」
「うん」
　まさにというのだ。
「そうだった」
「成程ね」
「それで」
　そしてというのだ。
「今は俺も白華も」
「コンプレックスがなくて」
「俺は俺で」
　こうした考えでというのだ。
「何でもやってる」
「そうなの」
「うん、それで夜空さんも」
「そうしてるわ」　
　微笑んで答えた。
「そう考えて」
「いいことだね」
「自分は自分って考えることは」
「そうしたら楽になるから」
「他の人へのコンプレックス考えないなら」
「そうだね」
　佐京はそれでと応えた。
「最高だね」
「結局ね」
　夜空はこうも言った。
「自分は自分でそうして努力していく」
「そうすることがだね」
「一番気が楽で」
　そうであってというのだ。
「それで」
「そのうえで」
「うん」
　まさにというのだ。
「そこから」
「さらによね」
「自分を高めていく」
　そうもするというのだ。
「それがいいと思う」
「そうよね」
「逆に」
　こうもだ、夜空は言った。
「コンプレックスばかりになったら」
「歪になるわね」
「人は」
　まさにというのだ。
「自分が劣っていて駄目だとか思って」
「そればかりになったら」
「もう」
　そうなればというのだ。
「歪になって」
「駄目になるわね」
「多分」
　こう言うのだった、そしてだった。
　佐京は顔を正面にやった、そうして澄んだ顔にもなってそのうえで夜空に対してこんなことも言ったのだった。
「努力も劣等感からじゃなくて」
「普通にね」
「そう、中には」
　佐京は夜空に話した。
「何でも全肯定か全否定しかなくて」
「一旦否定するとね」
　夜空も言った。
「否定した相手をね」
「人でも物事でも」
「全力で嫌って」
　そうなってというのだ。