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神の肩入れ

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第三章

「駄目だ、だからな」
「エンキドゥを死なせますか」
「運命であるしな、そなたは運命を変えられるか」
「私は太陽の神であり運命の神ではありません」
 実に忌々し気にだ、シャマシュは答えた。
「残念ですが」
「ならばいいな」
「エンキドゥを死なせる」
「そしてそなたもだ」
 シャマシュにまた告げた。
「これからはだ」
「ギルガメシュにですか」
「普通に加護を与えるのだ」
「そうしなければなりませんか」
「反論は許さぬ」
 祖父としてそれを封じた、そうしてだった。
 エンキドゥは死ぬこととなりシャマシュもギルガメシュにこれまでの様な加護を与えられなくなった、そうしてだった。 
 孫を止めることが出来たエンリルは神々にこう言った。
「若しあそこでだ」
「シャマシュ神の我儘を許せば」
「その時はだな」
「より酷いことになっていたな」
「今でも贔屓が過ぎるのだ」
 そうであるからだというのだ。
「もうな」
「それでだな」
「エンキドゥは死ぬ運命であったし」
「ここで運命のまま死なせ」
「かつシャマシュ神を止めた」
「そうしたな」
「加護を与えることはいい」
 エンリルはこのこと自体はよしといた。
「人にとってな、だが」
「それでもだな」
「それが過ぎるとよくないな」
「やはり」
「そうだ、孫は過ぎていた」
 まさにというのだ。
「だからな」
「止めたな」
「もうこれで彼がギルガメシュを過度に肩入れすることはない」
「贔屓をすることないな」
「そうなったな」
「これでよし、過度な肩入れはいいものではない。一人だけそうしてもよくはない」  
 こうも言うのだった。
「だから止められてよかった」
「全くだな」
「その通りだな」
「それが出来てよかった」
「実にな」
「本当にそう思う」
 エンリルは微笑んで言った、そうしてだった。
 孫神を止められて良しとした、だがイシュタルはまだ言っていた。
「全く、外見のことまで決めて」
「シャマシュ神がな」
「ギルガメシュが生まれた時にそうしたな」
「わざわざ出て来て」
「全く。何を考えているのか」
 イシュタルはむっとした顔で述べた。
「シャマシュ神も」
「全く。贔屓し過ぎた」
「だが我々も戒めねば」
「そうせねばな」
「そうね、そうしたら死ぬ運命にあった者を蘇らせることにもなるわ」
 シャマシュのこの度の望みが通った場合のことを話した。
「そんな理不尽は許さないから」
「加護を与えることは必要でもな」
「神であるなら」
「だがそれは程々に」
「そうしないとな」
 他の神々も頷いた、そうしてだった。
 神々は人それに世界のあらゆることに過度な加護を与えて極端に肩入れすることはしなくなった、そうして世界を司っていったのだった。シャマシュはそれでもギルガメシュを何とか贔屓にしたかったが。
「程々にせよ」
「わかりました」
 祖父神に常に見られ言われたので従うしかなかった、そして英雄に加護を与え程々に助けていったのだった。


神の肩入れ   完


                   2024・1・15 
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