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八条学園騒動記

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第七百四十八話 球種は三つだけその九

「宗教説もある」
「本当に色々ね」
「ユダヤ教だからな」
 ユダヤ系であるからこのことは当然である。
「それがあったとかな」
「それで真相は?」
「怪我説が有力だな」
「そうなのね」
「ただ早過ぎる引退はな」
 このこと自体はというのだ。
「今も惜しまれている」
「これはそう思うわよ」
 七回を三者凡退に打ち取ってだ、アンは答えた。
「こんな活躍したら」
「そうなるな」
「当然よ」 
 早過ぎる引退を惜しまれることはというのだ。
「三十代前半なんてね」
「まだまだだな」
「今だとね」
「その頃はキャリアハイだった」 
 タムタムが言ってきた。
「そこからは落ちるだけだ」
「成績が」
「年齢でな」
 この問題でというのだ。
「当時は本当にな」
「現役でやっていける年数短くて」
「それでだ」 
 まさにその為にというのだ。
「三十代後半になるとな」
「落ちていったの」
「誰もがそうなった」
 成績も能力も下り坂になっていったのだ。
「そして四十になるともうな」
「現役の人少なかったの」
「今では普通に現役でもな」
「昔はそうだったのね」
「そうだった、だがそれでもな」
 タムタムは苦い顔で述べた。
「三十一歳やその辺りでの引退はな」
「早過ぎたのね」
「当時でもな」
「だから惜しまれたのね」
「俺としてはやれるだけだ」
 まさに現役までというのだ。
「やらないとな」
「駄目ね」
「そうあって欲しいしだ」
 人にはというのだ。
「俺自身もだ」
「やれるまでなのね」
「やってな」
 そうしてというのだ。
「そのうえでだ」
「終わりたいのね」
「そう考えている」
「限界までなのね」
「もうどうにもならない」
 その様にというのだ。
「そこまでな」
「やって」
「引退したいな」
「そうなのね」
「若しプロになれたら」
 その時はというのだ。
「本当にな」
「限界までやりたいのね」
「ああ、還暦までやれたら」
「やるのね」
「そして動けなくなったら」
 満足な活躍が出来なくなればというのだ。
「走れなくなる位になってな」
「引退したいのね」
「そう考えている」
「とことんやりたいのね」
「まだやれるという状況なら」
 そうであるならというのだ。
「やりたい、無理はな」
「嫌じゃないのね」
「多少以上無理しても野球をしたい」
 野球に対する確かな愛情を以てだ、タムタムはアンに言った。その言葉こそまさに野球への愛情そのものとなっていた。 
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