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偽マフティーとなってしまった。

作者:連邦士官
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9話

 4月のオエンベリは南半球もあってか少し肌寒いが過ごしやすい。フィフスルナが落ちたおかげで寒冷化したからか。

 まだ気は抜けない。ハサウェイと言うアトミックバズーカの引き金にまだ指がかかっている。ハサウェイまず話をするのならアトミックバズーカを捨ててから話してほしい。俺にお前がなんたるかを聞くんじゃない。なんかこう‥‥まだ話がわかりそうな木星に行ってジュドーに浄化してもらえ。いや、やめろ。ドゥガチに変なモノを貰いそうだしそのままでいろ。

「諸君らを解放する。今回、我々の活動に巻き込まれた皆さんには謝意を表明したい。マフティー・ツヴァイ。あれを配れ。早めにな。」
一分一秒も早く、ハサウェイと離れたい。ハサウェイの天パ気味の髪が風で揺れる。また目が合う、引かずに目を逸らさずに見つめ返す。スターリンは目を離したものを殺したんだ、ハサウェイがそうしないとも限ったことではない。

「わかった、マフティー。受け取れ、せめてもの罪滅しだ。」
ツヴァイやドライたちがオレンジの風呂敷に包み込んだレンガの山を渡していく。ちょっと待て!オレンジの風呂敷にってなんだ?後ろがカボチャの顔みたくなってるぞ!公式物販でもしてるのかおかしいだろ!ジャックを後で再度問い詰めてやれねばならん。

「最後に一言。マフティー・ナビーユ・エリンとして頼む。」
ツヴァイに言われたが正直、頭の中はジャックで巡っている。今頃になって宇宙世紀動画が腹立ってきた。緑に光るT字の金属で頭をピッケルにしてやろうかあいつ。

「あぁ、ジャック‥‥。失礼、ジャック・オー・ランタンは古来はカブであったとお知りの皆様は何人ほど居るか?じゃがいも飢饉により、移民をしたアイルランドの住民がアメリカで沢山採れたかぼちゃを使ってやり始めて、ジャック・オー・ランタンはかぼちゃとなったらしい。」 
クソ、ジャックと思わず言って、汚名挽回のために続けてって、汚名は返上だ。気を抜きすぎた。ハサウェイだけでなくケネスや他の奴らも皆、何を言ってるんだこいつって顔をしている。ワイアット!演説の力を俺にくれ。
 
「それがどうして?」
ふざけんなよ、ギギ・アンダルシア!またカットインしやがって!そんなにマフティーが好きならな、マフティーを見せてやるよ、同じやり方をするならばティファとチェンジしろ! 

「話は単純ではない。シンプルにことを進めればいいのなら、ここで全員を殺しているし、ハンドリー・ヨクサン長官は水の地球(ホシ)宇宙(ソラ)から愛をこめて、大気圏内降下作戦をさせている。だが、それをしても反省は促せない。」
声がギュネイみたいなおっさんに反省を促しても無駄だ。待てよ。あんまり、ギュネイみたいなおっさんとハサウェイを話させていると脳内のクェスがハサウェイにやっちゃいな!と促すのでは?お前も核のスイッチなのか長官!

「話を続ける。当時のアイルランド人ですらアメリカに適応させた訳だから、それよりも進んだ我々はアースから宇宙にあがり、その宇宙のスペースにより適応した人類になるなどと言うのは簡単にわかる道理だ。」 
くっ、ギギのせいで話がブレる!こっからどうやって軌道を修正するんだよ。もう、OOの軌道エレベーターぐらいズレてるだろ、降下物に殺されそうだぞ!

 そして、ツヴァイは頷くな!退路を断つなお前!
「しかしだ。革新をすることで日々を失う恐怖を持つ市民は居る。マフティーは1000年後の事を考えたり反省を促すだけの暇人だね、というぐらいにな。」
ふざけんなよ!今のでハサウェイが怖い顔をしたぞ!もう言葉が出てこない!

「それは、それで私は良いと思う。人々の中には善性や悪性があるのだが、それを含めて全人類が皆、マフティーが備わっていると強く信じている。マフティーが備わっていなければ地表にはアクシズが落ちていた筈だ。人々のマフティー(優しさ)マフティー(怒り)やらマフティー(正しさ)マフティー(若さ故の過ち)を認めたくないのもそれもまたマフティーなのだ。」
何言っているんだ!全く意味がわからんぞ!助けてくれ!なんでみんな聞き入ってるんだよ、意味不明だろ!

「しかし、人はナビーユ(預言者)を求める。また文字通りマフティー(救世主)を求める。それもまたマフティーの道理なんだろう?」
ケネス!乗るな!ほら見ろ!ハサウェイが興味を示してるじゃないか!

「マフティーは‥‥マフティーは総意の器さ。この場合は遥かなる感情というイデアのパワーを手に入れた人類が絞り出した一つの選択に過ぎない。人はリスク分散をしてここまでやってきたのだから、地球連邦政府との選択肢の一つとして、マフティーがあり、マフティーはすべてを内包した総意の器なのだから、間違いも正解も全てはマフティーに帰り、人類は宇宙に登るだろう!」
より意味わからねーよ。なんだよ何が起きているんだ?こういう時にこそ、ギギは「マフティーの言い分正しくないよ」とかカットインしてこいよ! 

「それでは、戦士たるマフティーはどうなる?」 
ハサウェイまでカットインするなよ!キャパシティをこっちは超えているんだやめてくれ!ギギ・ケネス・ハサウェイのジェットストリームアタックじゃないんだ!死への三連星か?ドムかジャムル・フィンにでも乗って外宇宙に飛び立ってくれ!荒野を駆けて3人の死神が列を作るんじゃないよ!

「それもまた、マフティーだ。マフティーはすべての可能性と意志を内包する。従ってマフティーという存在もまたマフティーに帰る。マフティーを討つのもマフティーなら、マフティーが殺すのもマフティーだ。だから、マフティーが討った人間の名をマフティーは刻まねばならない。マフティーが行った自傷行為なのだから。しかし、すべての罪も功績もマフティーが一身に受けて、犠牲となったマフティーがいる所である天に召されるだろう!それでも、残ったマフティーがマフティーを成す。これこそがマフティーが持つ総意の器、可能性の魔物だ。一連の全てはマフティーに始まり、マフティーに終わる。ならば、戦士たるマフティーが救われなくて、犠牲になったマフティーも救われなくて何がマフティーか!ニュータイプとマフティーは違う。」
もうさっきからずっと訳がわからないよ。助けてよバナージ。この際、カミーユでも良いよ。違うと言って殴ってくれ。マフティーと言い過ぎて頭がおかしくなるよ。

「マフティーが我々を捕虜にして、捕虜になったのも潜在的に我々にあるマフティーとしての意志だというのかバカバカしい。」
さすがマンハンター長官!否定してくれてありがとう。

「しかしだねぇ、この話では君が否定しようともそれはマフティーとなるよ。ニュータイプの革新だとか宇宙移民の自治権の確立ですら無く、我々の選択する意志こそがマフティーと言っているのだから、人類の意志の根源の話だよ。哲学だな。」
邪魔をするな保健衛生大臣!神経が苛立つ!

「確かにそうですな。まるで古代ギリシア哲学のような難解さと懐の深さがある。全てはマフティーに帰るのならば、また全てはマフティーから産まれている。自由意志と神の意志と慣習などにより我々は動かされているというような全てが両立するような哲学に感じます。」
おい、文化教育振興大臣ともあろうお方が全く中身がない与太話を考察するなよ!頭おかしいで終わりだろうが。

「続きはどうなのだね?」
ふざけるなよ文化教育振興大臣、おかわりを求めるんじゃない!

「これ以上、お喋りをするつもりはない。」
疲れた。もう寝たい。だが、やるべきことはまだ沢山有る。

 まずは、負傷者と従業員とハサウェイを見送る。
その際に彼らに少しだけではあるがギミックを仕掛ける。手品の種はツヴァイにやらせたシャトルの秘密だ。

 密かにシャトルは貴金属と現金の密輸の隠れ蓑になっていたのだ。確かにお偉いさんが乗っていれば安全な密輸になる。手荷物検査や機体の中身をジロジロと調べるやつは居ない。良くもこんなことを考えられる悪党が居たものだ。そこから従業員12名に年収30年分を支払う。そしてまだ余っていたから負傷者にも支払ってもまだ余っている。

「キャビンアテンダント、スタークジェガンのパイロットへの弔慰金だ。必ず遺族に渡しなさい。彼もまた戦士だった。」
これで、警察は彼らの金を没収をして出どころを調べるはずだ。そうなったらスキャンダルに発展するだろう。そして一切、関係ないスキャンダルで身内に内通者を探して殺し合う。それをしてくれたらこっちに部隊を出す元気もなくなる。ハサウェイも巻き込まれた人間に金を渡し、パイロットに敬意を払うこの姿で、怒りも湧くまい。

「では、解放をする。」
集められた上等な車に彼らは乗り込み、居なくなった。残された連邦政府の閣僚とケネスやギギなどをバスに押し込むのだけだが。

「やっぱり、身代金誘拐じゃなかった。」
ギギはうるさいな。サークルクラッシャーは話すんじゃない。しばくぞコイツ。そうするとせっかく貯めたケネスポイントが無駄になるから我慢だ。

「人質の自覚があるなら黙るべきだが?ギギ・アンダルシア。」
もう怒った。一連の行動でサークルの姫でサークルクラッシャーがお似合いの女だと思うことにした。シーマの様な本当の君臨者とかになれるとは思いはしない。少なくても、セイラとかアナスタシアとかシーラ・ラパーナとかラクスは違うな。宇宙世紀にラクスが出て来たら怖すぎる。准将と共に永遠に封印されてください。

「私は‥‥。」
何かを言う前に追撃して叩き落さねば。「ララァのなりぞこないの女風情」は、多分、ハサウェイがこの話を聞いたらブチギレるから止めて、これにしよう。

「見透かしたようにやる。気に食わんな。望めば誰だって知れば誰もが望むだろう。君の様になりたいと、君の様で在りたいと容易く答えや望みを言う。だが、故に許されない、君という存在を!人の内側に潜り、たやすく人を傷付ける存在を!わかりすぎるということが必ずしも幸せとは限らない典型例だな。無自覚に人の瘡蓋をほじくり回す。」
ギギは呆気に取られたようで黙った。完全勝利だ。計8回以上ハサウェイがマフティーとして天パ化しそうになったんだぞ。反省しろ。

「女性に強く当たるのは感心しないな。」
ケネスもカットインするな。ふざけんなよお前、こういう時こそ銃で殴れよ。ハサウェイも居なくなったんだしさ。

「君は潜在的に妻が出世や活動の邪魔だと思っていたんだろう?しがらみが無ければマフティーに同意していたような部分もある。どうだね?不愉快では無いのかな?」
八つ当たりに過ぎないがケネスをハサウェイ側だとお偉いさんに印象付ける。

「クッ‥。」
ケネスは下がった。勝った!良し。あとはオエンベリの基地に向かえば終わりだ。バスに大人しく乗っていく。上流階級は意外と暴れなくて助かる。

「マフティー、準備ができました。行きましょう。」
ドライが話しかけてくる。比較的まともなドライを重要視するべきか。しかし、小指がなくていくらこっちで引き付けてるからと言ってSFSのメガ粒子砲でスタークジェガンを落とすのだから、あながちコイツは袖付きではなかったとは言えないんじゃないのか?

 バスの運転もフィーアがする。正規軍にいただけあって、戦車、バス、航空機、MSにSFSにミデアにクルーザーまで運転できるらしい。
それに口数も少なく、顔も美少年と来ている。モテるだろうなコイツ。宇宙晒し者の俺と違う。テレビでも見るか。

 カチリとテレビをつけるととんでもない事件が流れていた。
「ダバオのマフティー・ナビーユ・エリンと名乗る組織がマンハンターの刑務所を強襲しました。捕まえられていた人々が逃げ出しており、略奪が起きています。一部では暴徒化した市民がマンハンターの家族を殺していると‥‥。」
ブツリと画面は切り替わった。

「連邦政府閣僚各位に申し上げる。私がマフティー・エリンだ。」
先程のハイジャックが編集されて、電波ジャックされて流されていた。犯人はジャックに違いない。

 失敗をした。ジャックをマフティー性の抽象表現で刺激してしまったんだ。しかし、これでハサウェイはマフティーから外れるのだから皮肉なものである。

 従業員らに賠償金を支払って訳のわからない問答をしてる場面まで流れ始めたあたりでオエンベリ軍基地へと到着し、空を見ると秋のような気候なのに澄み渡り碧すぎる空が広がっていた。

 
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