妹が作った料理
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第二章
「そう申し出るって」
「いや、実は欲しいものあってね」
視線を逸らしてだ、明日香は兄に応えた。
「買って欲しいかなってね、お母さんに」
「僕にじゃないのか」
「私だけが言ったら買ってくれないかも知れないから」
「僕からも頼んで欲しいんだな」
「そうなの、ネクタイ欲しいのよ」
これがというのだ。
「お兄ちゃんがお母さんに買ってもらった」
「大学の入学とかに着けたらいいって言われて買ってもらった」
「あのネクタイね、女の子もネクタイするでしょ」
妹はこのことも言った。
「それでね」
「僕にか」
「お願い出来る?」
「夜食食べないと元気出ないし確かにお握りとお茶漬けだけだと栄養バランス悪いし」
兄もそれならと応えた。
「頼む位でいいなら」
「宜しくね」
「それじゃあな」
こうしてだった。
明日香は兄の夜食を作る様になった、野菜サンドに雑炊に五目炒飯に鍋焼きうどんといったものをだった。
彼に作って出す様になった、兄はそうしたものを食べて受験に挑み見事志望校に合格した、それで約束通り母に言うと。
そのネクタイをしてみてだ、明日香は家で上機嫌で言った。
「これここぞという時にね」
「着けるんだな」
「そうするわ」
「僕が買ってもらったネクタイ欲しかったんだな」
「一目見ていいと思ったの」
そのネクタイを手に取って見ながらにこにことして言うのだった。
「私も欲しいってね」
「それで僕の夜食を作って」
「お母さんに一緒に買ってって言って貰ったの」
「ちゃっかりしてるな」
「いいじゃない、私だって家族で」
明日香は兄に少しむっとした顔になって返した。
「お母さんそれにお父さんの子供だし」
「兄妹でか」
「一緒のもの欲しい時もあって」
「そのネクタイがそうか」
「そうよ」
まさにというのだ。
「だから買って貰って嬉しいわ」
「そうなんだな」
「ええ、それじゃあここぞって時にね」
「着けるんだな」
「そうするわ」
こう言ってそうしてだった。
明日香は買ってもらったネクタイをここぞという時に着けていった、そうして笑顔でいた。彼女にとってこのネクタイは宝ものになったのだった。
妹が作った料理 完
2024・4・18
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