養子は宝
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第二章
彼は津田夫婦の養子に入った、そして寺の中で本格的な修行をはじめたがその中で苗字が変わった彼は両親となった二人に尋ねた。
「僕なんかを迎えてくれるなんて」
「いやいや、寺を継いでくれて」
「私達の息子になってくれるなら」
それならとだ、夫婦は言うのだった。
「どれだけ有り難いか」
「むしろわし等の方が有難いと思っているよ」
「とても真面目で誠実だし」
「そのこともあってね」
「そうですか、僕は本当に太っていて運動神経もなくて」
彼は恐縮して話した。
「もてないですが」
「外見やそうしたものが問題なのか」
父は息子に言った。
「お寺を継ぐことに」
「問題ないですか」
「奥さんも」
嫁いでくれる人もというのだ。
「人を外見で判断しない」
「そうした人がいるから」
「安心しなさい」
「修行を続けてお寺を継いでくれる位の人ならな」
「絶対に幸せになれる」
「そうなればいいですが」
彼はまさかと思った、だが正式に寺を継いで住職になる前にだ。
同じ宗派の寺の娘さんとのお見合いの話が来た、その人はただ外見が整っているだけではなく心もだった。
とても奇麗な人で彼を外見で判断せず。
その心を見て彼との結婚を承諾した、彼はそれを受けてまた言った。
「まさか僕なんかと」
「だから言ったな」
「大事なのは心よ」
「わし等もいい人に来てもらったと思っている」
「私達の息子になってくれてね」
両親はその彼にここでも言った。
「有り難いと思っているから」
「結婚してからも頼むぞ」
「はい、これからもお願いします」
彼は両親に応えた。
「至らないことばかりですが」
「子供のない家に来てくれるだけでどれだけ有り難いか」
「それも真面目なら言うことはないわ」
「だからな」
「これからも宜しくね」
むしろ両親の方が言うことだった、彼はそんな両親の心を受けて妻となった女性と共にさらに修行に励み立派な住職となった。そして引退した両親から宝とまで呼ばれたのだった。
養子は宝 完
2024・3・25
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