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神々の塔

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第六十二話 緑の迷宮その七

「心の病もな」
「ほんまにあるね」
「それは恥ずかしいことやない、誰でも病気になって」
 それでというのだ。
「心もや」
「同じやね」
「そういうことやからな」
 だからだというのだ。
「別にや」
「恥ずかしいとは思わへんで」
「診察受けることや」
「それで治してもらうことやね」
「そや、芥川さんは抜群に頭がよかった」
「凄かったのよね」
 アレンカールが応えた。
「英語も漢文もすらすら読めて」
「古典かてな」
「物凄い教養と理知があったのよね」
「学校の勉強も凄かったしな」
 学生時代のそれもだ。
「何しろ抜群の秀才でや」
「確か東大無試験で入ったのよね」
「それで二番で卒業した」
 第一高等学校今で言う東大教養学部をだ。
「そうしたわ」
「そうだったのよね」
「それで海軍で英語教えてたわ」
 海軍機関学校においてだ、その為帝国海軍に対しては終始好意的であったという。
「そこまでの人やった」
「ほんまに頭よかったのよね」
「作家さんとしてだけでなくな」
 このことを抜いてもというのだ。
「当代一流の知識人やった」
「そうだったのよね」
「そんな人やった、けどな」
「そんな人でも狂気に陥るのね」
「誰かてそうなるんや」 
 その可能性はゼロではないというのだ、そもそも病気にならない人というものはこの世に存在する筈がないのだ。
「そやからな」
「恥ずかしいことやないわね」
「誰かてなるからな」
 だからだというのだ。
「ほんまな」
「そうなっても恥やなくて」
「問題はな」
「治すことね」
「そや、本人さんも助かるし」
「周りもね」
「助かるわ」
 そうなるというのだ。
「ほんまな」
「そうよね」
「いや、しかし破滅願望はあっても」
 人間にとだ、リーは話した。
「人には。けど何があってもな」
「人類滅亡を言うのはね」
「やっぱりキチガイや」
「そうとしか思えないわね」
「そや」
 まさにというのだ。
「大抵の人から見たらな」
「おかしい人やないと」
「そう思うわ。キチガイを普通と言えるんはな」
 そうした者はというのだ。
「キチガイや」
「自分と同じやね」
「そういうもんや、予言と言うても」
 それでもというのだ。 
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