小者のウェイター
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第二章
「あんた達みたいな粗末な身なりの連中が来るところじゃないんだよ」
「このお店は服装の決まりはないが」
小林はこのことを指摘した。
「それでもかい」
「貧乏人お断りなんだよ」
右手でしっしっ、とやって言ってきた。
「わかったら帰れよ」
「予約を取っていてもかい」
「そんなの知るか」
やはり馬鹿にしきった顔で言った。
「わかったら帰れ」
「わかった、ちょっと待ってくれ」
「待たないから帰れ」
店員はこう言うばかりだった、見れば制服の左胸に名前が書いてあった。浅香米助という名前だった。
小林は彼の言葉を無視してだった、そのうえで。
スマートフォンに連絡を入れてだ、何か色々と話した。するとそこにタキシードを着た初老の紳士が来てだった。
小林に深々と頭を下げてだ、こう言った。
「申し訳ありませんでした」
「いえ、お話しただけでこれからです」
「席に案内しますので」
「それではね」
「あれっ、オーナーどうしたんですか?」
店員はその男性を見てきょとんとして言った。
「こんな貧乏人に頭を下げて」
「まず言う、君は本日付けで懲戒免職だ」
オーナーと呼ばれた彼は店員に怒った顔で告げた。
「お客さんにとんだ無礼をするとは。しかも」
「しかも?」
「この人はうちに食器を仕入れている会社の社長さんだぞ」
「えっ、ですが」
「人を外見で決めるとは君はとんだ愚か者だ」
店員にこうも言った。
「当店はお金とマナーさえちゃんとしていれば誰でも大事なお客様だぞ」
「それはそうですが」
「君は店の決まりも守れないのか」
「うちは高級レストランですよ」
店員はそれでもと言った。
「東京でも有名な三つ星の」
「それがどうした、外見で判断しては駄目だ」
「ですが」
「ですがもこうしたもない、店の考えもわからず」
そうしてというのだ。
「お客様それも取引先の人に無礼を働く君に接客業をやる資格はない」
「だ、だからですか」
「今日杖けでだ」
それでというのだ。
「君は懲戒免職だ、この業界にいられると思うな」
「懲戒免職なんて表社会じゃ生きられなくなりますよ」
「君はそれだけのことをしたんだ」
こう店員に告げた。
「わからなくてもいい、もう決定だ」
「そんな、もう一度チャンスを」
「君の様な輩にチャンスはない」
これがオーナーの返事だった。
「わかったら荷物をまとめて出て行くんだ、即刻」
「そんな・・・・・・」
店員は項垂れてだった。
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