仕事が出来ない人

　　　　　　　　　　　　　　　仕事が出来ない人
　葉山薊はＯＬだが上司の緑山信勝は心から困っていた、緑山は営業課長で半分白くなっている髪の毛を右に分け四角い顔をしている細い目に薄い唇の一七〇位の背のがっしりとした体格の中年男である。
　その彼がだ、部長の椎名源蔵に彼女のことを聞かれて話した。
「どうにもです」
「噂通りだね」
「あの、メモを取っても」
　そうしてもというのだ。
「書いている文章が雑でエクセルもワードもです」
「覚えないんだね」
「全く。電話の応対もで」
「外回りでもだね」
「事前のアポもしないで」
　そうであってというのだ。
「それで、ですから」
「全くだね」
「成長も見られないですし」
「やはりね、ならね」
　椎名は苦い顔で言った、胡瓜の様な顔で四角い眼鏡をかけた痩せた男で黒髪は薄くなってきていて背は一七六程だ。
「配置換えをしようか」
「そうしますか」
「うん」
　こう緑山に言った。
「勤務態度は悪くないね」
「色々忘れて間違えますが」
「それでもだね」
「無断欠勤も遅刻もしなくて」
　そうであってというのだ。
「真面目です」
「それならね」
「配置換えですか」
「そうしよう」
　こう言ってだった。
　椎名は会社の人事と話して葉山を配置換えにしてもらった、すると。
「あの、葉山さんですが」
「どうたんですか？」
　緑山は彼女が行った部署の社員に声をかけられてだった。
　まずはそちらでもと思った、だがそれは違い。
「滅茶苦茶凄い人ですね」
「そ、そうなんですか」
「物凄く独創的で斬新な」
　そうしたというのだ。
「アイディアだしてお仕事どんどんしてくれて」
「出来ますか」
「野球のピッチャーでいいますと」　
　そうすると、というのだ。
「山本由伸投手です」
「メジャーに行った」
「もう宝箱から出て来たみたいな」
　そこまでのというのだ。
「逸材ですよ」
「そうなんですね」
「よくです」
　緑山に目をキラキラとさせて言うのだった。
「そちらからうちに来てくれました」
「そう言われますか」
「はい」
　心からの言葉だった。
「本当に」
「そうなんですね」
「いや、譲ってもらって悪いです」
　こうまで言うのだった。
「本当に」
「いえいえ、そんなことは」
「ないですか」
「全くです」
　こう言うのだった、だが。
　緑山はその話が信じられず葉山を見てみることにした、こっそりと彼女が今いる部署を見て見ると。