英雄伝説~黎の陽だまりと終焉を超えし英雄達~
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第18話
4spgに対応しながら情報収集をしていたヴァン達は東方人街のある酒場に入った。
~東方人街・酒場~
酒場に入ると酒場の客達が一斉にヴァン達に注目した。
「おいおい、こりゃまた随分と可愛らしい客が来たもんだな?」
「よぉ、お嬢ちゃんたち!良い子はこんなトコに来るモンじゃねえぞ!」
「えっと……」
「まあまあ、折角来たんだから楽しまねぇと!俺達と一緒に飲もうぜぇ?」
「そうそうそう、オジサンたちが面白い話、いっぱい聞かせてやるからよ~!」
客達のからかいの言葉にアニエスが答えを濁していると一部の客達が立ち上がってアニエスとフェリに絡んできた。するとヴァンが二人の前に出て二人に絡もうとした客達を阻んだ。
「んあ?」
アニエスの前をヴァンに阻まれた客は首を傾げ
「あいててててぇぇ!折れる折れるぅ――――――!!」
更にフェリは絡んできたもう一人の客の腕を強く掴んで客に悲鳴をあげさせた。
「その辺にしておけ、単に酔っぱらってるだけだろ。」
「そうですか?」
「コラ!酔っ払いが何やってるの!お客さんにちょっかいを出すなら、店から叩き出すわよ?」
ヴァンの指摘にフェリが返事をするとウェイトレスが声を上げた後アニエス達に絡もうとした酒場の客達に近づいて忠告した。
「おいおいハルちゃん、ひでぇよ。俺達だって客だろ?」
「しかもやられてるのはこっちじゃねぇか?」
「フン、自業自得でしょう?」
「そうだそうだ、自業自得だ!」
「てかあんな小さい子にやられるとか、情けなさすぎだろ!」
「まったくだ!」
「ワハハハハハハハッ!!」
反論する客達に対してのウェイトレスの指摘に同調した客達は大声で笑い始めた。それを見たウェイトレスに反論する客達は諦めて席に戻った。
「ったく、ここの連中は相変わらず酒癖が悪ぃな……」
「船乗りも多いから、陸に上がると思わずはしゃぎたくなるのよ。ゴメンね、大目に見てあげて?」
呆れた表情で溜息を吐いたヴァンに疲れた表情で答えたウェイトレスはアニエスとフェリに謝罪した。
「は、はい……」
「ふふ、里の大人にもいましたね。」
「久しぶりだな、ハル。」
「貴方もね、ヴァン。また厄介事を頼まれたそうじゃない?」
「あ……お知り合いですか?」
知り合い同士のように話すとヴァンとウェイトレスが気になったアニエスはヴァンに訊ねた。
「まあな。」
「とりあえず奥へどうぞ。」
そしてウェイトレスの案内によってヴァン達は奥の席に座った。
「私はハル、ここのウェイトレスよ。たまに外でディーラーの仕事もするけど。」
ヴァン達を席に案内したウェイトレス――――――ハル・コールマンは自己紹介をした。
「アニエス・クローデルと申します。まだ学生ですが、訳あってヴァンさんのお仕事を手伝わせていただいています。」
「えと、フェリーダ・アルファイドです。ヴァンさんへの恩返しと修行の一環として”あるばいと”をさせてもらってます。」
「ふふっ、よろしくね!どこでこんな可愛い助手を見つけたの?」
「ま、色々あってな。それよりお前さんの”相棒”はどうした?聞きたい事があるんだが遂にくたばったか?」
ハルの質問に答えたヴァンはある人物の事を訊ねた。
「そこでくたばってるよ。」
ヴァンの質問に答えたハルはカウンターにうつぶせになっている金髪の男に視線を向けた。
「誰がくたばってるだぁ……?二日酔いってだけだっつーの……」
視線を向けられた男はダルそうな様子で答えた後立ち上がってヴァン達の席に座ってヴァン達と対峙した。
「2年ぶりくらいか。」
「直接会うのはな。」
「にしても美少女二人も助手に雇うとは、お前も偉くなったモンだなぁ~。」
「言ってろ。」
「俺はジャック・トレバー。ここらのカジノでは知らねえヤツがいねぇ凄腕のギャンブラーだ、よろしくな。」
ヴァンとの再会の挨拶をした男――――――ジャック・トレバーはアニエス達に自己紹介をした。
「よ、よろしくお願いします。」
「スゴ腕のギャンブラー……」
「ホラ吹いてるようにしか見えねぇだろうが一応は本当だ。そこのハルと二人で、その界隈じゃ結構知られてるコンビでな。」
戸惑っているアニエスと目を丸くしているフェリにヴァンはジャックとハルの事を説明した。
「わぁ……ずいぶん歳の離れたコンビですっ。」
ヴァンの話を聞いたフェリは興味ありげな表情でジャックとハルを見つめた。
「コンビを組んだつもりはねぇんだが……」
「なにか言った?」
「あはは……」
疲れた表情で呟いたジャックを睨んでいるハルの様子を見たアニエスは苦笑を浮かべた。
「ちなみに、二人はあちこちのカジノに出向くことが多いのもあって――――――裏で”情報屋”もやっている。」
「あくまで副業だがな。」
「それを言うなら、ジャックの本業は無職になるじゃない。」
「俺にはギャンブラーという立派な本業がだな……」
「はいはい。それでヴァン、何が聞きたいの?」
自分のからかいに対して腕を組んで答えたジャックの言葉を軽く流したハルはヴァンに目的を訊ねた。
「アーロン・ウェイという若造について詳しく教えてくれ。2年前も小耳に挟んだことはあったが今じゃ相当有名人らしいな?」
「あいつか……ま、ちょうどいい。ちょくちょくこの店にも顔を出すしな。」
「ホントですか……!」
「アシェンさんからの話だと、かなり強烈な方のようですが……」
ヴァンの質問に答えたジャックの話を聞いたフェリは驚き、アニエスは苦笑しながら確認した。
「危なっかしい所はあるけど、そこも含めての魅力かもね。あんまり悪い噂は聞かないし。それにああ見えて案外家族想いで、実際アーロンが幼い頃に病気で亡くなった母親の命日には毎年必ずお義姉さんのマルティーナと一緒に墓参りをしているし、マルティーナの誕生日にはマルティーナ本人への誕生日プレゼントを毎年欠かさずしているわ。」
「ここら一帯の血気盛んな若いモンたちを取り纏めてる。チンピラたちの親玉っていう見方もできるが……実際はあいつがいなかったらもっと悪さをするような連中だったろ。年寄りたちにも感謝されるくらいだ。」
「なるほど、大したモンだな。」
「ギャンブルのセンスも半端ねぇ。たまに俺やハルに勝負を挑んでくるが……3回に1回は勝ちやがる。」
「!そいつは相当だな……!?」
ジャックとハルのギャンブラーとしての腕前を知っているヴァンはアーロンのギャンブラーの腕前をジャックから聞かされると驚きの表情で声を上げた。
「……てめえも裏技で相当食い下がってただろうが。」
驚いている様子のヴァンにジャックは苦笑しながら指摘した。
「アーロンという方、聞いてる限りではちょっとヴァンさんに似てるような……?」
「クク……あっちの方が遥かに美形だがな。」
「うーん、ジャックとアーロンを足して割るとヴァンになるって感じかも?」
アニエスの推測にジャックは口元に笑みを浮かべて指摘し、ハルは考え込みながら例えを口にし
「こらハル、どういう意味なんだ!?」
それを聞いたジャックはハルに突っ込んだ。
「……実際、どうなんだ?」
「顔のこと?」
「いやジャックの冴えないツラのことはどうでもいいんだが……」
「ってオイッ!?」
「”メッセルダム商事”は知ってんだろ。その若造が、このまま大人しくして、これ以上の騒ぎを起こさせない可能性は?」
「それは……ないわね。」
「あいつが何かやらかす前に、今回のことにケリをつけるか……もしくは直接あいつと会って何らかの落とし所を納得させるか……目があるとしたらどっちかだろ。」
ヴァンの確認にハルとジャックはそれぞれ否定の答えを口にした。
「どちらも難しそうですね……」
「だろうな。――――――で、”A”の方は?」
「あっちはあっちでアーロンの暴走より遥かにヤバイんじゃねえか?半グレ共もタチの悪いのばかりだし、別の狙いもあるとしか思えねぇ。」
「アーロンたちに撃退されてから東方人街には入ってきてないけど……都市街には未だたむろしてるし不穏な気配がプンプンするよね。ギルドが一応警戒してるみたいだけどどこまで抑えられるやら。」
「そういやお前、最近ギルドに協力してるそうじゃねえか?どういう風の吹きまわしか知らねえが一応顔を出してきたらどうだ?」
ハルの話を聞いてふとヴァンとギルドに関するある事を思い出したジャックはヴァンに指摘した。
「……ベルモッティから聞いたのか。たまに下請けやってるだけっつーの。」
「クク、そういう事にしてやるよ。――――――ま、キナ臭いネタは多いが俺としちゃ”黒月”も気になるがな。この酒場は中立地帯みたいなモンだが文字通り煌都を支配している連中だ。長老たちの中にもヤバイのがいるし、何よりあの”二代目白蘭龍(チョウ・リー)”がいるからな。」
「うん、あれは相当なクセ者だよね。クロスベルに行ってるみたいだけど多分”銀”と再契約して呼び寄せるためだろうし。」
「……だろうな。まあ、裏稼業から退いた”銀”本人が”再契約”に応じるかわからねぇが。」
「”銀”……?」
「どこかでその名前を聞いたことがあるような……」
ヴァンとジャック達の会話の中で出て来た初めて聞く言葉にアニエスは首を傾げ、フェリは考え込んでいた。
「東方人街の魔人なんて言われてた伝説の凶手――――――暗殺者でね。数年前に今は帝都になったクロスベルに拠点を移したなんて言われてるの。何でも4年前の大きな事件終結を機に裏稼業から退いてそれ以降は活動してないみたいだけど……たまに大きな事件の時に聞くかな?」
「そんな人が……」
「……昔、戦士団がやりあった相手かもしれません。」
ハルの説明を聞いたアニエスは目を丸くして呟き、心当たりを思い出したフェリは真剣な表情で呟いた。
「ま、再び契約できるかどうかわからないその鬼札にも色々と手を用意してるだろうな。”裏”の使い手どもを抱えてるっつう話も聞くしよ。」
「……その話はやめとけ。”銀”以上にシャレにならん。ま、どう転ぶにせよ、煌都が血の色に染まりそうだぜ。」
「ふう、このまま行くとね。」
ヴァンが口にしたある話を聞いたジャックは真剣な表情で忠告した後推測し、ジャックの推測にハルは溜息を吐いて同意した。
「そういえば………アシェンさんが現在この煌都を”A”の捜査をしているクロスベル帝国とメンフィル帝国の合同捜査隊――――――”エースキラー”の人達は”黒月”でも手が出し辛い厄介な相手だと仰っていましたけど……その方達はどのような方達なんですか?」
「ああ……”そっち”の話はまだしていなかったわね。」
「この煌都で活動している”エースキラー”の関係者は5人なんだが……その内の2人は”北の猟兵”の生き残りの連中でな。どうやら連中の一部が”エースキラー”の応援要請に応えて煌都に訪れて”エースキラー”に協力しているとのことだ。」
「その口ぶりだと、実際に連中と話をしたのか?」
アニエスの質問を聞いたハルは目を丸くし、ジャックの説明を聞いてある事に気づいたヴァンはジャックに訊ねた。
「ああ。連中も煌都は初めてだろうに、お仲間である諜報が専門の”鉄血”の”子供”から予め煌都について聞いていたのか、俺とハルの事も知っていた上で接触してきたんだよ。」
「えっ!『鉄血の子供』ってまさか………」
ジャックの話から出て来たある言葉を聞いたアニエスは声を上げた後驚きの表情を浮かべ
「ええ――――――”鉄血の子供達”の一人であるあの”氷の乙女”も”エースキラー”の一員として、現在この煌都で捜査活動をしているのよ。」
「”鉄血の子供達”………その人達って確か3年前の大戦を勃発させた主犯の………」
「ああ。”鉄血の子供達”。その優れた政策を打ち出すズバ抜けた政治手腕と実行力によって当時のエレボニアの領土を拡大し、貴族達から既得権益を奪って庶民に開放する『革新派』の中心人物でもあった”怪物”とも称されたエレボニアのかの宰相――――――”鉄血宰相”ギリアス・オズボーンが各地で優れた若者を集めて結成した直属の部下達の事だ。……しかし、何で”鉄血の子供達”――――――エレボニア王国の関係者まで”エースキラー”の一員なんだ?”エースキラー”はメンフィルとクロスベルによる合同捜査隊だろう?」
ハルの話から出て来たある言葉に心当たりがあって真剣な表情を浮かべたフェリに説明をしたヴァンは眉を顰めて疑問を口にした。
「何でも1年半前の『ヘイムダル決起』の件をメンフィル帝国がエレボニアに対してお咎めなしにした事の”罪滅ぼし”や事件解決に協力した件の”恩返し”として”アルマータ”を危険視したメンフィル帝国が本格的に撲滅に向けてクロスベル帝国と協力しての”合同捜査隊”を結成する際にエレボニアも対価無しの協力を申し出たとの事だ。」
「そのような理由が………」
「なるほどな……ってことは、アーロンという若造に”格上”と認めさせたという”泰斗流”の使い手はログナー侯爵家の女当主か。」
ジャックの話を聞いたアニエスは目を丸くし、ヴァンは頷いた後ある出来事で出て来た人物の推測を二人に確認した。
「うん。で、最後の一人はよりにもよってあの”蒼の騎士”だよ。」
「なるほどな……”氷の乙女”に”三大名門”の当主の一人、そして”蒼の騎士”。どの連中も”黒月”も下手に手を出せない厄介な連中という話も納得だな。」
「えっと……その、”蒼の騎士”という方もそんなに有名な戦士なのですか?」
ハルの話を聞いたヴァンが納得している中ある事が気になったフェリがヴァンに訊ねた。
「”裏”の界隈ではそれなりに名が知られている奴だ。――――――何せ”灰の剣聖”の親友にして好敵手なのだからな。」
「ええっ!?は、”灰の剣聖”って3年前の大戦を終結させて世界を救った事から”現代のゼムリアの大英雄”と名高いあの……!?」
「その”蒼の騎士”という方は”灰の剣聖”の親友にして好敵手という事は、今でもシュバルツァー総督との親交はあるでしょうから、それを考えると”鉄血の子供達”やエレボニアの大貴族である”三大名門”の当主の方のように”黒月”でも下手に手が出せない厄介な人物という話も納得ですね……」
ヴァンの説明を聞いたフェリは驚きの表情で声を上げ、アニエスは真剣な表情で呟いた。
「しかも本人達から話を聞いた所、ログナー侯爵家の女当主はその”灰の剣聖”のエレボニアの士官学院の留学時代の”先輩”の上”氷の乙女”は3年前の大戦が起こる少し前に起こったエレボニアでの内戦やその内戦が勃発する前に起こったエレボニアでの数々の事件で”灰の剣聖”とは協力し合った仲だそうだから、今この煌都にいる”エースキラー”の3人は全員”灰の剣聖”との親交がある人物なんだよ。」
「そんでその”黒月”も3年前のメンフィル・クロスベル連合によるカルバード侵攻によって大きく力を削がれて、その出来事によって連合の力に対抗する事は不可能と判断した”ルウ家”は逸早く連合に恭順したからな…………その件もあるから、この煌都で活動しているメンフィル帝国も重用している”灰の剣聖”との親交関係がある”エースキラー”の3人は”黒月”にとっては”ある意味アルマータ以上に厄介な連中”なんだと思うぜ。」
「なるほど………ただ、私達にとっては場合にもよりますけどその人達はクレイユ村の時みたいに味方になってくれるかもしれない人達ですよね、ヴァンさん。」
「ああ。3人の内2人は知らない仲じゃないから、情報交換もそうだが共闘する事もあり得るかもな。」
ハルとジャックの話を聞いて納得したアニエスはある事をヴァンに指摘し、指摘されたヴァンは頷いた後静かな表情で答えた。その後ジャックとハルと別れて業務や情報収集を再開したヴァン達が新市街にある掲示板の裏に張ってある4spgを確認する為に掲示板に近づくとある人物がヴァン達に声をかけた。
~新市街~
「ああっ、あなた達は――――――!」
自分達に声をかけた人物へと視線を向けるとその人物はマリエルだった。
「……!確か”タイレル通信”の。」
「?お知り合いですか?」
「ああ、前にちょっと会った”頑張り過ぎる”新米記者だ。」
マリエルの登場にアニエスが目を丸くしている中、マリエルと初対面のフェリにヴァンは苦笑しながら説明した。
「どうしてここにいるんですか!?ま、まさかまた良からぬ企みを………」
「依頼されての国外出張でな。――――――そっちこそなんでいるんだ?」
「そ、その……文化面の取材で来てて……そっちの取材は終わったんですけどなんとなく事件の匂いがしたので……有休を使って滞在を延長してるんですっ!」
「そ、そうなんですか……(……あり得ない強運ってディンゴさんに言われてましたけど。)」
「(ああ、それと一丁前に鼻も利くみてぇだな。)――――――ま、頑張ってくれ。そんじゃ俺達は行くぜ。」
マリエルが煌都にいる理由を知ったアニエスはマリエルの推測が当たっている事に心の中で驚きつつヴァンと小声で会話し、アニエスの小声に同意したヴァンはマリエルに別れを告げた後マリエルから離れたがマリエルはヴァン達の後をついて行った。
(えっと……)
(ついて来てますね……)
(無視無視。)
マリエルがついて来ている事にそれぞれ気まずそうな表情を浮かべてアニエスとフェリに指摘したヴァンはマリエルを無視して歩き始めたがマリエルはヴァン達の後をついて行き続けていた。
(まだいます……)
(隠す気ゼロですね……)
「……なんで付いてくる?言っとくがジャコモの件についてもう言えることは何もねえぞ。」
ついて来続けているマリエルにフェリは困った表情で、アニエスは苦笑しながら呟き、ヴァンは疲れた表情で肩を落とした後振り向いてマリエルに指摘した。
「あれはもういいです――――――いつまでも過去の事件を追っても仕方ないですし。」
「だったら尚更、俺達に用はねえだろ?」
「フフン、そうでもありませんっ!――――――どうも貴方の周りでは色んな事件が起こっているようです。首謀者ではないにせよ、事件を引き寄せる”何か”があるとわたしは踏んでいます……なら後をつければ、自然と事件に遭遇してスクープチャンス間違いありませんっ!どうかわたしのことは気になさらず、いつも通りに行動してくださいっ!」
(今回の依頼の件も含めてヴァンと出会ってからの今までの出来事を考えれば、強ち間違っていませんね……)
「できるかっ!!」
自信満々に答えたマリエルの推測を聞いたメイヴィスレインはヴァンと出会って以降の出来事を思い返した後呆れた表情で同意し、ヴァンは思わず声を上げて突っ込んだが何かに気づくと気を取り直して話を続けた。
「ふう、さすが”タイレル通信”期待の新人、大したモンだぜ。――――――ここだけの話、俺達はこの地である人物に注目しててな。ほら、”あいつ”だ。」
話を続けたヴァンはある人物――――――映画館から出て来たサングラスをかけたマクシムに視線を向けた。
「っ……?も、もしかしてマクシム・ルーガン選手……!?」
「あ、”ぜっとわん”の人……本当に有名人だったんですね。」
「えっと、ヴァンさん……」
(懲りない男ですね……)
マクシムを目にして驚いているマリエルの反応を見たフェリは目を丸くし、ヴァンの行動を察したアニエスはヴァンに視線を向け、メイヴィスレインは呆れた表情で呟いた。
「ど、どうして”紅い流星”がここにっ?」
「ああ、そいつは守秘義務があるから言えねぇな。だが、あんな有名人が一人で煌都に来てあんな風にブラついている……ちょっとおかしいと思わねぇか?」
「た、確かに……」
「残念だが俺達は別件が入って奴さんは追えねぇんだ。悔しいが、ディンゴの誼もあるし、お前さんに譲ってもいいぜ?」
「で、でもわたしは政治記者志望で……それにそれこそゴシップ誌みたいな……」
ヴァンの提案に対してマリエルは複雑そうな表情で理由を説明をして断ろうとしたが
「タイレルだって芸能スポーツ面はあんだろ?何か掴んだら手柄だし、希望部署にも繋がる。それに――――――ディンゴの得意分野を学べるチャンスかもしれないぜ……?」
「………!わかりましたっ……!確かにわたしも芸能面は疎いですし……!ルールを破らず、プライベートに踏み込まず、必ずや何らかのネタを掴んでみせますっ。……ふふふ、そうすればディンゴさんもわたしの事を見直して……」
ヴァンから納得できる説明を聞くと目を見開き、嬉しそうな様子で自分の未来を想像した。
「お、おう……その意気だ。――――――そんじゃあ健闘を祈るぜ!」
「情報提供、ありがとうございます!待っていなさい~、今度こそ大スクープを掴んでやるんだから~!」
そしてヴァンに応援の言葉をかけられたマリエルは元気よく返事をした後マクシムの後を追い始めた。
「ふふっ、なんだか可愛らしいヒトでしたね。わたしよりちょっと年上くらいでしょうか?」
「い、いえ……記者なら多分二十歳以上だと思いますけど。――――――ヴァンさん、また……」
去って行くマリエルの背中を微笑ましそうに見つめているフェリの推測に指摘したアニエスは困った表情でヴァンを見つめた。
「嘘は言っちゃいねえぞ?ま、特に何もなさそうだがな。面倒も片付いたことだし、改めて掲示板をチェックするか。」
「はいっ。」
「ふう、わかりました。」
その後ヴァン達は業務や情報収集を再開した――――――
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