神々の塔
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第六十話 酔いどれ詩人その十四
「ほなうち等や」
「全力でや」
「九人で向かうで」
「そういうことで。頼むで」
綾乃は今度は微笑んで言った、そしてだった。
自ら上に舞い上がった、するとその足元に八岐大蛇が出て主を乗せた。綾乃は自分を乗せた上司にまた言った。
「ほな頼むで」
「お任せあれ」
「ここでも我が主と共に戦います」
「そうします」
「ほお、別嬪さんと八つ首の大蛇とな」
アブー=ヌワースはその綾乃を見て言った。
「しかも日本の神々しい純白の巫女服の」
「あの、ひょっとして」
「ううむ、ムスリムでないのが無念」
神霊は綾乃に応え神妙な顔で述べた。
「そうであるなら声をかけたのに」
「ムスリムやないとですか」
「手を出せぬのだ、しかしアッラーは寛容であられる」
このことも言うのだった。
「それでどうじゃ、改宗せんか」
「イスラムにですか」
「何、夢に白馬の王子が出て来て改宗をせよと言われたとも言えば」
そうすればというのだ。
「簡単にだ」
「改宗出来ますか」
「イスラムは来る者は拒まぬ」
そうした宗教だというのだ。
「そうであるからな」
「だからですか」
「どうじゃ、それは」
「うち巫女ですさかい」
「それは無理か」
「申し訳ないですが」
「なら仕方ない、イスラムは強制もしない」
布教にあたってだ、税を納めれば他宗教の信仰も認めるのだ。ただしそこでイスラムに改宗した際の恩恵を宣伝するところが見事であるのだ。
「だからな」
「ええですか」
「女は一人ではない、では諦める」
「うちのことは」
「そうする、ではわしとか」
「今から戦います」
「仕方ないのう、では術を使うか」
こう言って術を放ちはじめた、その術に向かってだった。
九人で戦いそうしてアブー=ヌワースを総攻撃で退けその後で来た神霊も倒した、そうしてこの階の全ての神霊を倒すと。
アブー=ヌワースは笑ってだ、こう言った。
「お主達のことを謡うぞ」
「そうしてくれますか」
「そしてだ」
そのうえでというのだ。
「この世界を救う姿をな」
「謡ってくれますか」
「楽しみじゃ」
ヌワースはもう飲んでいる、そのうえで言うのだった。
「その時を謡うのがな」
「そうなんですか」
「では行くのだ」
ヌワースはこうも言った。
「さらに先にな、わしはだ」
「飲むんですね」
「ははは、酒池肉林だ」
この言葉も出して綾乃に話した。
「いいぞ、この世の楽しみだ」
「飲んで食べてですね」
「美女美少年にな」
「まさに酒池肉林ですね」
「そうだ、それを楽しむ」
これからというのだ。
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