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英雄伝説~黎の陽だまりと終焉を超えし英雄達~

作者:sorano
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第14話(1章終了)

~クレイユ村郊外・丘陵地帯・高台~



「はあっ、はあっ、はあっ、はあっ………ハハッ……やったじゃないか、アンタたち………それと……事情は知らないけど……フェリ達に加勢してくれた事……感謝しているよ、ガルシア……」

「アイーダさんっ……!」

「ハッ、”団”を離れてからも”西風”が”ルバーチェ”に色々と融通してくれた礼代わりのようなものだから、気にすんな。」

元に戻り正気を取り戻したアイーダを目にしたフェリはアイーダに駆け寄り、ガルシアは鼻を鳴らした後苦笑しながらアイーダに近づいた。一方変身を解いたヴァンは地面に崩れ落ち、メイヴィスレインはアニエスの身体の中に戻った。

「ヴァンさん、大丈夫ですか……!?」

「ハアハア……ま、何とかな……メア公め……何とか話を聞き出したかったが……」

ヴァンの身を心配したアニエスに声をかけられたヴァンは心配無用である事を告げた後メアとのやり取りを思い返していた。

「アイーダさん、よかった!いま手当をしますからっ――――――」

「ハハ……ありがとよ……だがその必要はないさ……」

「え――――――」

アイーダに傷の手当てを申し出たがその必要が無い事をアイーダが語ると呆けた声を出した。すると倒れているアイゼンシルトの猟兵達の全身は光を放ち始めて透明になり始めた。



「………ぁ………」

「……女神の、下へ……?」

「……………………」

「アイーダ………」

猟兵達の様子を見たフェリは呆けた声を出し、アニエスは呆けた様子で呟き、ヴァンは重々しい様子を纏って黙り込み、ガルシアは静かな表情でアイーダを見つめた。

「……遅かったか。」

「いや……間に合ってよかった。」

するとその時二人の男の声が聞こえるとクルガ戦士団の戦士達の部隊とアイゼンシルトの猟兵達の部隊がその場に現れた。



「ア、お父さん(アブ)……?」

「………連隊長たち……クルガも来てくれたのかい……」

クルガ戦士団の副頭目であり、父親でもあるハサン・アルファイドの登場にフェリが戸惑っている中、アイーダは苦笑しながらアイゼンシルトの連隊長であるゲラント連隊長やハサン副頭目達を見つめた。

「まったく馬鹿娘が……心配をかけおって。」

「……道すがら手紙は読んだ。アイーダ、災難だったな。」

ハサン副頭目は僅かに安堵の表情を浮かべてフェリに声をかけ、ゲラント連隊長は重々しい様子を纏ってアイーダに声をかけた。

「ハハ……面目ない……わかった情報だけまとめた……もし連中とやり合う事があれば参考にしておくれよ……」

「ああ――――――無駄にはすまい。”鉄の盾”を掲げる者達よ。……諸君もご苦労だった。」

アイーダの言葉に決意の表情で頷いたゲラント連隊長は透明になりかかっている部下達の遺体を見つめて敬礼をし、ゲラント連隊長に続くようにアイゼンシルトの猟兵達も敬礼し、ハサン副頭目達クルガ戦士団の戦士達はクルガに伝わる死者達を見送る時の動作である手を胸に当てた。

「っ………!?あ、ああ……」

「……………………」

その様子を見たフェリは驚いた後アイーダの肉体も光を放って透明になりかかっているのを目にすると悲痛そうな表情を浮かべ、その様子をゲラント連隊長は重々しい様子を纏って黙って見守っていた。



「ありがとう……裏解決屋。それと助手のお嬢ちゃんにお嬢ちゃんの天使に、ガルシアも………おかげで可愛い妹分と最後にこうして話ができる……」

「……アイーダさん……」

「……………………」

「……成り行きとはいえ、まさか”西風”が解散する前に”団”を抜けた俺が”団”の連中の代わりにお前を看取る事になるとはな………」

アイーダにお礼を言われたアニエスは悲しそうな表情を浮かべ、ヴァンは真剣な表情で黙ってアイーダを見つめ、ガルシアは寂しげな笑みを浮かべて呟いた。

「ダメだよ……アイーダさん……昔のことを教えてくれるって……」

「フフ……アンタが成長すれば他のヤツからも聞けるだろうさ……そうだね……アタシのもう一人の妹分とか……」

「そんなの知らないっ……!アイーダさんから聞きたいんだよっ!」

アイーダの死が近づいている事から逃れたいかのようにフェリはアイーダの言葉に首を横に振って声をあげた。

「……そのためにもフェリ、アンタは成長しなくちゃならない……だから―――……最後のトドメはアンタがしとくれ。」

「ッ……!?」

「なっ……!?」

アイーダの信じ難い頼みにフェリは息を呑み、アニエスは信じられない表情で声を上げた。



「聞き届けるがいい、フェリーダ。」

するとその時ハサン副頭目が二人に近づいてフェリに声をかけた。

「……お父さん(アブ)……」

「お前がこの先も戦士であり続けるなら必要な儀式だ。”火喰鳥”殿の厚意を無駄にするな。」

「……ッ……」

ハサン副頭目の指摘に唇を噛み締めたフェリは腰に差しているダガーを取り出してアイーダに向けた。

「フェリちゃん、駄目……!」

「お嬢さん、口出し無用だ。」

「見届けられぬならば目を背けていてもらおう。」

それを見たアニエスはフェリに制止の声をかけたが、ゲラント連隊長とハサン副頭目は口出し無用である事を告げた。



一方アイーダにダガーを向けたフェリだったが、アイーダに止めを刺す事を躊躇っていた。

「ど、うして……わたし……わたし……」

「……フェリ……」

「―――――ったく。子供に背負わせてんじゃねえよ。」

涙を流しているフェリをアイーダを辛そうな表情で見つめている中溜息を吐いたヴァンが二人に近づいてフェリからアイーダを離れさせた。

「こういうのは大人の役割だろ?……手伝うって依頼もあるしな。」

「ッ――――――」

ハサン副頭目に一声かけたヴァンは自身の得物である撃剣にエネルギーを流してアイーダの心臓を刺した。

「………ぁ………」

「ヴァン、さん……」

(……………………)

「……ふう……」

「……一理あるか。」

「ったく、話に聞いていた以上に甘っちょろい男だぜ。」

その様子を見たフェリは呆けた声を出し、アニエスは心配そうな表情でヴァンを見つめ、メイヴィスレインは目を伏せて黙り込み、ハサン副頭目は小さく溜息を吐き、ゲラント連隊長はヴァンの行動と言葉に納得し、ガルシアは苦笑しながら見守っていた。すると止めを刺された事でアイーダの身体は更に透明になり始め

「アイーダさん……アイーダさあああん……!」

透明になりつつあるアイーダを目にしたフェリはアイーダを抱きしめて泣きながら声をあげた。

「やれやれ……甘いねえ……だが急ぐ必要もない……か……ありがとう……裏解決屋にお嬢ちゃん……それにガルシアも………さよならだフェリ……連隊長にみんな……フィー……も……ルトガー団長……ゼノ……レオ……やっとアタシも……アンタたちのもと……へ……」

フェリの様子に苦笑を浮かべたアイーダは空を見上げて呟いた後既に消滅した部下達のように塵すらも残さず消滅した。

「うううぅ………わあああああああっ………!」

アイーダが消滅するとフェリは大声で泣き始め

「これは……な、何があったんだ!?」

その場に警官と共に駆け付けたアルヴィスは周囲の状況に困惑していた。





数日後――――――



9月12日 16:00――――――



~アークライド解決事務所~



「……やっぱりあれから特に反応はありませんでした。」

数日後アニエスは二つのゲネシスを机に置いてヴァンに報告をした。

「―――――まあ、間違いなく何らかのトリガーがあるんだろう。今回の”火喰鳥”たちの屍鬼化……それを起こしたのは間違いなくそいつだ。たしか”生命活動”に関係する実験装置って話だったか?」

「はい……曾祖父の手記によれば。”ティア”みたいな回復アーツの開発に貢献したみたいですけど……」

「その機能を何らかの方法で”反転”させたのかは知らねえが……改めてヤバイ代物みたいだな。お前の曾祖父さんの遺産ってのは。」

「……はい……しかもそれをマフィアの人達があんな形で悪用していたなんて……」

ヴァンの指摘に頷いたアニエスは辛そうに語ってフェリやアイーダ達の出来事を思い返した。

「……そのせいでフェリちゃんとアイーダさんにあんな想いをさせて……」

「ただ、お前が持ってたゲネシスが2番目のヤツを”抑えた”のも確かだ。ヤバイ状況だったがあの不思議現象で一発逆転にも繋がったし……これ以上の悪用を防いだって意味でも回収した甲斐はあっただろう。――――――何よりもどうせ、今後も退くつもりはねえんだろ?」

「はい、前回に続いて猟兵の方達も亡くなって……――――――でも、危険だからこそ目を背けられないと改めて思いました。ですからヴァンさん……これからもよろしくお願いします。」

(今回の出来事でさらに決意を高めたアニエス………もしかしたら、アニエスは”時代に選ばれた英雄”になるのかもしれませんね。)

ヴァンの確認に対して頷いたアニエスは決意の表情で答え、その様子を見守っていたメイヴィスレインは真剣な表情である推測をしていた。



「ま、約束だしそれはいい。――――――だがアニエス、改めてバイトの方はどうだ?俺は警察でも遊撃士でもない。あくまで自分の流儀を貫くだけだ。黒でも白でも、灰色ですらない。(あおぐろ)い狭間の領域で。お前までそれに染まる必要は――――――」

「大丈夫です、染まりはしませんから。アイーダさんへの”慈悲”……私には到底真似はできませんから。フェリちゃんが大人になるのを待ってあげる優しさも……でも、そんな貴方を支えて寄り添うことはできると思うんです。まだまだ半人前ですけどあくまで私ならではの”色”で。ですからアルバイトの方もよろしくお願いします、ヴァン所長。」

ヴァンの忠告に対して優し気な微笑みを浮かべて答えたアニエスはヴァンに微笑んだ。

「……ッ……ったく、あれだけの修羅場に立ち会って呑気なんだか、腹が据わってんだか……――――――アルマータも含めて何かが動き始めてるのは確かだろう。”中央”とメンフィルの合同捜査隊の動きも本格的になっていやがるみたいだし、どうやら”北の猟兵”の生き残りも連中と共闘関係のようだからな。」

「そのようですね。……そういえば、あの時加勢してくれた猟兵の方達を”北の猟兵”と仰いましたけど……当時の新聞によれば確か”北の猟兵”は3年前のヨルムンガンド戦役でのメンフィル帝国によるノーザンブリア占領の際に壊滅した、との事でしたけど……」

「ああ。俺が集めた情報によるとその生き残りが総督府に隠れて支援するノーザンブリアの市民達の支援を受けつつ、故郷(ノーザンブリア)の独立を目的に今までメンフィルを含めた各国、各勢力に悟られないように秘密裏に活動していたようだが、どうやら最近遊撃士にメンフィル帝国との和解を仲介してもらって、とりあえずはメンフィルが”北の猟兵”達の生き残りの”残党狩り”を中止する程度までは和解できたそうだ。」

「え……遊撃士が猟兵とメンフィル帝国の和解の仲介をしたのですか?遊撃士と猟兵は相容れない関係で、ヴァンさんと違って”猟兵の依頼自体を引き受けないのでは……?”」

ヴァンの話を聞いて目を丸くしたアニエスは新たに抱いた疑問を口にした。



「その遊撃士ってのはノーザンブリア出身で、しかも元”北の猟兵”でな。”北の猟兵”達の依頼を引き受けたのもあくまで”そいつ個人として”であって、”遊撃士として依頼を引き受けた訳じゃなかったらしい。”後でその事を知った遊撃士協会(ギルド)はその遊撃士の行動は本来は問題行動だったが、その依頼を引き受けた遊撃士ってのは貴重な”A級”に加えてエレボニアの王家や政府、有力貴族の関係者に加えて総督府の関係者にも伝手があるエレボニアの重鎮クラスと言っても過言ではない遊撃士である上、依頼内容は遊撃士協会(ギルド)の役目でもある”争い合っていた勢力同士の和解の仲介役”だったから色々と思う所はあれど”黙認”したとの事だ。」

「なるほど……そんな事が。という事はその依頼を引き受けた遊撃士の方も故郷(ノーザンブリア)の独立の為に、和解の仲介役を引き受けたのでしょうか?」

「恐らくはな。それで”北の猟兵”の和解を受け入れたメンフィル帝国は、”独立を認める条件”として、メンフィル帝国が関わる”表の世界にも影響が出る程の裏の勢力との戦い”に協力する事を要求し、その要求に”北の猟兵”達も応じたとの事だ。」

「”表の世界にも影響が出る程の裏の勢力との戦い”……”A"の事ですね。だから、あの時”北の猟兵”の方達は”A”の幹部の一人であるメルキオルという人を追ってあの場に現れて私達に加勢してくれたのですか……」

「ああ。――――――GIDはGIDで怪しげな動きをしてやがるし……ギルドとは立ち位置的にそこまで馴れ合いはできねえ。ふう……こうなってくるとちょっとばかり手が足りねえな。」

アニエスの推測に頷いたヴァンは今後の事を考え肩をすくめて溜息を吐いた。

「ヴァンさん……」

「だったら丁度よかったですっ……!あ……!ノックが先、ですよね……?」

ヴァンの様子をアニエスが心配そうな表情で見つめている中聞き覚えのある少女の声が聞こえた後ノックがされ、扉が開くとフェリが現れた。



「お前……」

「フェリちゃん……!?」

ハサン副頭目達と共に故郷に帰ったはずのフェリの登場に二人はそれぞれ驚きの表情を浮かべた。

「えへへ……その節は本当にお世話になりました。あの後、ロクにお礼もできずにお別れすることになっちゃって……」

「そんな……!ふふ、でもよく来てくれましたね。」

「依頼料もちゃんと受け取ったしな。あの後、クルガの里に帰ったようだが今度は親父さんと一緒に来たのか?」

「いえ……そのう……実は勘当されちゃいまして。」

「へ。」

「えええええっ………!?」

気不味そうな表情で答えたフェリの驚愕の話にヴァンは呆け、アニエスは驚きの表情で声を上げた。

「戦士団の言いつけに背いて勝手に動いたことが理由です。戦士としても、あまりにも未熟………”半人前”にすら至っていないと。それで副頭目(おとうさん)に、広い世界を学んでくるように言われまして。――――――アイーダさんの件、お二人には本当にお世話になりました。依頼以上に大切なものを教えてくれてアイーダさんの望みも叶えてくれて……そしてクルガの戦士にとって”恩”は全身全霊を賭けてお返しするものです。ですから――――――どうかわたしもしばらくお手伝いさせて下さいっ!」

「わあっ、もちろん大歓迎ですよ~!」

「か、勝手に歓迎すんじゃねえ!?」

フェリの申し出にアニエスが手を叩いて喜んでいる中、ヴァンは疲れた表情で反論した。

「あ、忘れてました……!これ、お父さん(アブ)からヴァンさんにって。」

「手紙……?ったく冗談じゃねえぞ……(ハハン、大事な娘みたいだし、俺の方から思い止まらせろってか……?)」

フェリに手紙を渡されたヴァンは手紙の内容を推測して呆れた表情を浮かべて手紙を読み始めた。





前略 ヴァン・アークライド殿



この度は娘の我儘に付き合っていただき感謝する。以前クルガの者も世話になったようだが噂に違わぬ仕事ぶりと改めて感服した。――――――しかし娘の成長の機会を奪ったこと、親としてはともかく、副頭目としては遺憾だ。



代償として、幾らコキ使ってもよいのでおぬしから成長の機会を与えてやって欲しい。……ただし万が一手を出したら”全クルガ”を持って死を与えるか――――――色々な意味で”責任”を取ってもらうのでそのつもりでおれ。



草々 ハサン・アルファイド





「えっと、ヴァンさん……?なんだか顔色が青いようですけど……」

「えっと、お父さん(アブ)はなんて……?」

手紙を読み終えて表情を青褪めさせているヴァンが気になったアニエスとフェリはそれぞれ不思議そうな表情でヴァンに訊ねた。

「何でもねえっつの!そもそも住む場所はどうすん――――――って。だああっ、もうこの上の空き部屋を契約してんのかよっ!?」

二人の疑問に対する答えを誤魔化したヴァンは手紙にフェリが事務所の上の空き部屋を借りて住む事も書いてあるのを確認し、二人目の”押しかけ助手”も断れなくなったという状況に表情を引き攣らせて声を上げた―――――



 
 

 
後書き
次回、アークライド解決事務所側の仲間になるエウシュリーキャラがちょっとだけ登場します。 
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