シンの助け
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第一章
シンの助け
突如として世界が暗くなった、それを見て神々の王であるマルドゥークはその威厳のある顔を顰めさせて言った。
「月の光だけになってしまったな」
「はい、世を照らすのは」
「急にそうなりました」
「シン神だけになりました」
「またシン神が家族と喧嘩したか」
年老いた男の神である月神が原因だとわかった、それで自らシンの下に行くと実際にシンは彼に憮然として答えた。
「左様、わしは今シャマシュとイナンナとアダドとな」
「自分の子供達とか」
「喧嘩してな、もっと働けと言ったらだ」
「皆臍を曲げたか」
「そうなった、困った者達だ」
「いや、貴殿の言い方が悪かったな」
マルドゥークはいつものことから彼にこう返した。
「彼等は私から見て普通にだ」
「働いているか」
「それでもっと働けというのはな」
このことはというのだ。
「よくない、それもガミガミ言ったな」
「それが悪いか」
「それで皆臍を曲げたのだ」
彼の子供であるそれぞれよを照らしたりそれを助ける天気を司る彼等がというのだ。
「だからな」
「それでか」
「私が間に入るからな」
「仲なおりしてか」
「そしてだ」
そのうえでというのだ。
「また世を光が照らす様にするぞ」
「わしが悪いか」
「いい加減子供に優しくな」
こうも言ってだった。
マルドゥークはシンと彼の子供達の間に入って仲なおりをさせて世に光を戻した、だがここでだった。
マルドゥークはシンにだ、ことが終わってから言った。
「今回間に入ったからな」
「それでわしも借りが出来たな」
「だからだ」
それでというのだ。
「貴殿にその借りを返してもらってな」
「このことは終わりか」
「もう二度と親子喧嘩はしないということでな」
このことを約束させてというのだ。
「そしてだ」
「借りをだな」
「返してくれるか」
「わかった、わしも恩には報いる」
シンは明るさが戻った世界の中で神々の王に答えた。
「では何でもだ」
「言っていいか」
「うむ、それではな」
聞くとだ、シンは答えてだった。
マルドゥークの話を聞いた、その頼みは人間と神の間に生まれた英雄ギルガメスを助けるというものだった。
その話を聞いてだ、彼はギルガメスの前に赴いて彼の話を聞いたが。
「そなたの周りを照らしてか」
「そうしてもらうとな」
それならとだ、ギルガメスはその雄々しい顔で答えた、黒い髪と髭は見事なもので大柄の身体は実に逞しい。
「嬉しい」
「それだけか」
「後は私が魔物を倒すからな」
「いいのか」
「どういった魔物も姿が見えたなら」
それならというのだ。
「何とでもなる」
「倒せるか」
「間違いなくな、むしろな」
「むしろ。どうした」
「貴殿は月の神だな」
シンに彼自身のことを言うのだった。
「その月の光が一番いい」
「一番か」
「優しく穏やかな光がな」
月のそれがというのだ。
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