母を許した日
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第三章
「もういいんじゃないかな」
「許して」
「そしてね」
「また会えばっていうの」
「そうしたらどうかな」
「そうして、お母さん」
娘の言葉は強いものになっていた、そのうえで自分の母に言うのだった。
「お祖母ちゃん許してあげて」
「それは」
この時からだった。
夫と娘は時々久美子に冴子との和解を言う様になった、最初は聞くつもりはなかった彼女もだった。
何度も言われるうちに考えが変わってきた、それでだった。
母方の親戚にだ、まずは連絡を取って母のことを尋ねた。
「そうですか、癌で喋られなくなっても」
「癌自体は完治して移転もなくてね」
親戚の人は久美子に誠実に話してくれた。
「それでだよ」
「元気ですか」
「喋られなくなってもね」
そうであってもというのだ。
「元気かっていうと」
「そうですか」
「ただね」
親戚の人は電話の向こうの久美子に言った。
「久美子ちゃんが出て行ってからね」
「それからですか」
「一人でね」
そのうえでというのだ。
「パートと障害者年金とかでね」
「暮らしていますか」
「寂しくね。よかったらね」
「あの人とですね」
「会ってくれるかな」
「実はこれまでです」
久美子はまずはこう言った。
「考えてきました」
「冴子さんと会うことをだね」
「最近主人と娘に何度か言われて」
そうなってというのだ。
「会おうかと」
「そうなんだね、じゃあね」
「それならですか」
「冴子さんにはわしから言っておくから」
「そうしてくれますか」
「会う場所はね」
それはというと。
「こちらでセッティングするから」
「そこまでは」
「ああ、ずっとあの家に住んでると思ってるね」
「引っ越したんですか、あの人」
「久美子ちゃんが縁切ったらだろ」
そうしてというのだ。
「それからあの人退院してね」
「一人暮らしですか」
「そうなったからね、すっかりしょげかえって」
そうなってというのだ。
「あのアパートからね」
「私と二人で暮らしていた」
「もっと狭い。一人暮らし用の」
そうしたというのだ。
「部屋に引っ越してね」
「そこで、ですか」
「親戚の集まりとか。仕事は在宅でね」
「人には会わないですか」
「喋られなくなったからね」
だからだというのだ。
「そのことを気にしてね」
「一人で、ですか」
「殆ど家の中にいる様な」
そうしたというのだ。
「寂しい暮らしをしてるよ」
「そうですか」
「だからね」
そうした状況だからだというのだ。
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