ハッピークローバー
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第百十八話 戸籍謄本その十一
「いいだろ」
「そうなのね」
「それがな」
「何もないっていうのは?」
「聖人かよ」
明男は唸った顔で述べた。
「もうな」
「そう言うのね」
「俺から見たらな」
それこそというのだ。
「そんな人はな」
「聖人なのね」
「お二人共な、俺も許嫁欲しいよ」
かなり本気の言葉だった。
「それで結婚したいよ」
「今時そんなお話滅多にないわよ」
母の突っ込みは冷静なものだった。
「ましてや私達みたいに普通のお家だとね」
「ないか」
「ある訳ないでしょ」
息子に冷静な声のまま告げた。
「そんなことは」
「やっぱりそうか」
「そうよ、あるって思うなら」
それならというのだ。
「夢よってね」
「言うんだな」
「言うわよ」
実際にというのだ。
「その人達のお家って古いでしょ」
「猿飛佐助さんのお家らしいわ」
事情を知っているかな恵が答えた。
「何でもね」
「真田十勇士じゃない」
「その猿飛家の本家さんと分家さんでね」
「許嫁になったのね」
「そうなの」
「猿飛佐助さんは安土桃山時代の人でしょ」
母はこのことを話した。
「古いししかもお侍さんのお家でしょ」
「身分はそうよね」
「真田幸村さんにお仕えしていたからね」
武士である彼にというのだ、尚真田幸村は関ケ原以前は万石取りのれっきとした大名であった。結構以上の立場であったのだ。
「お侍さんよね」
「忍者は武士でしょ」
「服部半蔵さんにしても」
十勇士の敵とされることが常の彼もというのだ。
「そうよね」
「忍者は武士と農民の間位の身分だったらしいな」
父が言ってきた。
「そこから取り立てられるとな」
「お侍になったのね」
「武士にな」
こう娘に話した。
「それも十勇士は幸村さん直参だからな」
「武士の中でもなのね」
「上士になるか。結構な身分だな」
武士の中でもというのだ。
「考えてみたら」
「そうなのね」
「十勇士全員がな」
猿飛佐助に限らずというのだ。
「忍者ということを抜いてな」
「武士として考えたら」
「お大名直臣の」
父も真田幸村が大名だったことを知っていてそのことから話した。
「結構な身分だな」
「そうなのね」
「薩摩に逃れても」
主君幸村がそこに落ち延びた時に十勇士達も共に落ち延びたのだ、ただしこれは公の歴史には書かれていないことだ。
「武士だったしな」
「それで今も続いているから」
「許嫁もな」
「あるのね」
「そうだろうな」
こう娘に話した。
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