バスの運転手のファインプレー
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第二章
犬の首輪を見た、そこには名前と住所が書いてあった。
「クーパーか」
「住所も書いてあるな」
「ちょっと連絡するか」
「ああ、こちらにな」
「貴方のお家ですよね」
トーマスは男を見据えて彼に問うた。
「そうですよね」
「ああ、今から戻るんだ」
「この住所この終点から離れてますが」
「そうするよ」
こう言ってだった。
男はそそくさとだった、バスに運賃を払うとだった。
逃げ出した、客は彼の逃げる様子を見てトーマスに言った。
「絶対にな」
「犬泥棒だな、警察に通報するな」
「監視カメラの映像付きでか」
「そうしたらな、すぐに身元もわかってな」
「捕まるな」
「あいつはな、それで飼い主さんにはな」
トーマスは強い声で言った。
「今からな」
「連絡するな」
「それでな」
「この子は家に戻れるな」
「そうなるよ」
トーマスは笑顔で言った、そうしてだった。
連絡すると実際にだった、ポートランドで働いているジェーン=マーフィーきりっとした顔立ちで大きなアイスブルーの目と薄いブロンドの長い髪の毛のモデルの様な外見の彼女が飛んで来た、そしてだった。
犬を抱き締めた、そうして言った。
「クーパー、また会えて嬉しいわ」
「ワンッ」
「本当に見付けてくれて有り難う」
今度はトーマスと客に言った。
「盗まれていたなんて」
「ええ、随分怪しい奴だったので」
トーマスはマーフィーにあの男のことを話した。
「警戒していたけれど」
「わかったのね」
「見れば見る程。聞いても」
そうした時のことも話した。
「おかしかったので」
「わかったのね」
「そうだよ、けれど飼い主さんのところに戻れてよかったよ」
「全くだな」
客も言った。
「本当に」
「ああ、気付いてよかったな」
「あんたのファインプレーだな」
「そうか?そう言われてもピンとこないがな」
「けれどこの子が飼い主のところに戻れたからな」
だからだとだ、客はトーマスに話した。
「本当にな」
「ファインプレーか」
「そうね、お陰でクーパーは私のところに戻ったし」
マーフィーもそれならと応えた。
「貴方のファインプレーよ」
「そうなんだな」
「本当に有り難うね」
「そこまで言ってもらえると嬉しいな」
トーマスはマーフィーにも言われてようやく笑顔になった、そして彼女がクーパーと共に家に帰るのを見届けてだった。
そのうえで仕事に戻った、仕事が終わるとパブで飲んだ、そのうえでこの日のことを振り返って笑顔になった。
バスの運転手のファインプレー 完
2024・2・25
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