おぢばにおかえり
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第七十九話 残さないことその十六
「煙で姿を消すとか」
「そんな風だったのね」
「それでニコ狆先生なんて作品もあります?」
「煙草?」
そのままニコチンからすぐに連想しました。
「それって」
「はい、忍者に弟子入りしまして」
そうしてというのです。
「隠れ身の術ですね」
「それで煙草なの」
「煙草の煙で姿を消すんです」
「そういうことね」
「それで忍者の先生が犬の狆そっくりで」
「そうしたお顔なのね」
「ニコチンと狆を掛け合わせて」
そうしてというのです。
「ニコ狆なんです」
「ユーモアあるわね」
「織田作さんの作品ってそうなんですよ」
新一君はカレーを食べつつ笑ってお話しました。
「ユーモアもあって」
「庶民的で」
「飾らなくて」
そうした作風でというのです。
「面白いですよ」
「そうした文学作品もあるのね」
「ですから純文学も娯楽ですよ」
また私にこう言いました。
「難しく考えないで」
「楽しい作品読むといいの」
「ためになったり」
「それだけのことなのね」
「そう思います、それに何かです」
私におソースをたっぷりとかけたカレーを食べつつ言いました。
「それぞれの人で読んだものが柱になるみたいですね」
「柱に?」
「中学の頃おちゃらけたクラスメイトがいたんですが」
「その子がどうしたの?」
「太宰治の走れメロスを授業でしまして」
「定番の一つね」
太宰治というとです。
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