神々の塔
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第五十七話 音楽の神霊その九
「私は待つことが嫌いだ」
「そうなのですか」
「だからだ」
それでというのだ。
「生卵を食べたのだ」
「そやったんですか」
「卵は受け取られたが」
芥川が右手でそうした、しかも壊さずにそうした。
「後で食べるか」
「戦が終わったら下の旅館でオムレツにしてもらいます」
芥川は笑って答えた。
「そうします」
「そうなのだな」
「しかし食べものを粗末にするんは」
芥川はどうかという顔になってベートーベンのその行いをとがめた。
「あまり」
「うむ、つい怒ってな」
「癇癪ですか」
「それを出してしまった」
こう言うのだった。
「謝る、その卵は貴殿達にあげる」
「まあ落ち着いて。それで君達とこれから戦うけれど」
今度はモー^ツアルトが出て来て一向に言ってきた。
「いいトイレした?」
「それ聞きます?」
「大事なことだからね」
自分の今の質問に引いた顔になったシェリルに邪気のない笑顔で答えた。
「聞いたんだ」
「おトイレのことをですか」
「そうだよ、いいおトイレしたかな」
「しましたけど」
「女の子はよく困るからね」
「それも言いますか」
「だから大事だよ、いいおトイレが出来ることは」
まだ言うモーツァルトだった、実に人懐っこい感じでありそこに邪気はない。それでそのうえで言うのだった。
「いいことだから」
「それで、ですか」
「聞いたんだ、じゃあ皆いいおトイレしたら」
そうすればというのだ。
「戦おうね」
「もうしてたら」
「その場合は今からだよ」
「そうですか」
「それで君も他の子達もだね」
トイレのことをさらに聞くのだった。
「出来るね」
「はい、皆そこは大丈夫です」
一行を代表して綾乃が答えた。
「多分ですけれど」
「そんなことはどうでもいい」
ベートーベンは憮然として腕を組んで言った。
「というか常に出すことを言うな」
「僕はね」
「そこで悪びれないしな」
「それ君もだよね」
「私の何処に問題点がある」
ベートーベンはモーツァルトを指差して彼に問うた。
「一体」
「ないって言うよね」
「当然だ、問題点があってこそ悪びれるものだ」
こう言うのだった。
「そうであるからな」
「問題点がないとだね」
「悪びれることもない、この様に堂々と胸を張ってだ」
見ればふんぞり返ってさえいる。
「世界を守っていればいいのだ」
「そういうことだね」
「そうだ、では最初は誰が試練を受ける者達と戦う」
ベートーベンはあらためてだ。このことを話した。
「それで」
「では私が」
シューベルトが出て来て名乗り出た。
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