嫌な上司の末路

　　　　　　　　　　　　　　　　嫌な上司の末路
　徳光米助はとある企業の部長職にある、色黒で細い目をしてやけに下卑た卑しそうな顔立ちをしている、黒髪は安いポマードでセットしていて小柄で痩せている。
　卑しそうな顔立ちだが実際に心も行いも卑しく。
「人の手柄は横取りして」
「自分の不始末は押し付ける」
「偉い人にはへいこらしてな」
「立場が下の人間には凄い横柄でな」
「頼みごとする時はへらへらして」
「すぐに偉そうに何でも押し付けてくるな」
　彼の部下や立場が下の者は口々にだ。
　徳光のことを言う、兎角評判が悪かった。
「最低な奴だよ」
「ゴマを擦るだけで仕事出来ないしな」
「それも全く」
「専務と大学の先輩後輩ってだけで取り入って」
「それだけで出世してるしな」
「早く何とかなって欲しいな」
「会社クビになって欲しいぜ」
　こう口々に言う、そして取引先でもだ。
　彼についてだ、八条製鉄本社営業部の新入社員岩崎中は言った、茶色の癖のある髪の毛で眉は太い。剽軽そうな顔立ちで顔は小さく背は一七三センチ位で痩せている。
「あの、徳光さんですが」
「嫌な奴だろ」
　話を振られた先輩はすぐにこう返した。
「あんな嫌な奴いないだろ」
「ええ、何かこっちを露骨に下に見て」
「偉そうでな」
「ふんぞり返ってですよ」
「酷い対応してくるな」
「ええ、ですから」
　岩崎はそれでと先輩に言った。
「俺あの人のところに行くの嫌です」
「俺もだよ、あっちでも評判悪いしな」
「取引先だけじゃなくてですね」
「無能でな」
　それでいてというのだ。
「しかもあんな性格でな」
「人の手柄横取りしてばかりで」
「しかも自分の不始末押し付けてな」
「そんなことばかりなんで」
「それでな」
　だからだというのだ。
「滅茶苦茶嫌われてるよ」
「やっぱりそうですね」
「だからな」　
　それでというのだ。
「お前が嫌うのもな」
「当然ですか」
「好きな人なんていないだろ」
「どうにかならないですね」
「なるだろ」　
　先輩は岩崎に素っ気ない口調で答えた。
「そのうちな」
「なりますか」
「ああいう奴は普通に碌でもないことしてるしな」
「あれ以上にですか」
「どうせ会社のお金ちょろまかしたりセクハラとかな」
「やってますか」
「ああ、ああした奴の常だよ」
　それこそというのだ。
「だからな」
「そうしたことがばれて」
「クビになるだろ、むしろあそこまでやれたのがな」
「部長になるまで、ですね」
「悪運だろ、けれどその悪運もな」
「そろそろですか」
「終わるかもな、まあ見ていればいいさ」
　こう岩崎に言うのだった。
「どうなるか、取引先としてな」
「早くどうかなって欲しいですね」　
　それならとだ、岩崎は心から思って先輩にこの言葉を告げた。彼は自分はまだ取引先だからましだが彼の勤務先は本当に嫌だろうと思った。
　そして後日徳光の会社に行くとだった。