金木犀の許嫁
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第四話 同居の準備その十一
「それから」
「うん、じゃあね」
「そうするわね」
「何時でも帰ってきていいしな」
父はこのことは笑顔で言った。
「佐京君と白華ちゃん連れてな」
「そうしてよね」
「里帰りしていいのね」
「その時はな」
父はさらに言った。
「うちで母さんの料理食べるのもよし、外でな」
「食べてもいいのね」
「そうだな、難波に行ってな」
そうしてというのだ。
「道頓堀でだ」
「かに道楽?」
「いつもは無理だけれど時々な」
「行くのね」
「たまにはいいだろ」
蟹もというのだ。
「お前達も好きだしな」
「食べるのに手間かかるけれどね」
「美味しいのよね、蟹って」
姉妹で応えた。
「だからなのね」
「時々でもなのね」
「蟹もいいな、あとな」
父はさらに話した。
「カレーもラーメンもあるしな」
「そうね、難波に行くとね」
母はまさにと応えた。
「自由軒もあるし蓬莱もあって」
「蓬莱の豚まんだな」
「金龍ラーメンもあるし」
「安くてな」
「美味しく食べられる場所一杯あるのよね」
「だからな」
それでというのだ。
「あそこに行くのもいいだろ」
「そうよね」
「まあその時にな」
「考えればいいわね」
「夜空は絶対にな」
佐京と許嫁同士になった下の娘にはこう言った。
「夫婦善哉に行くんだ」
「法善寺横丁にある」
「あのお店にな」
「行かないと駄目なのね」
「許嫁だからな」
「佐京君と」
「あそこはそうしたお店なんだ」
その夫婦善哉はというのだ。
「カップルか夫婦で行くものだ」
「何か善哉二つ出るのよね」
「一人前でな」
「二つで夫婦ね」
「そうなんだ、その方が量が多く見えるからそうして出しているらしいが」
織田作之助の夫婦善哉まさに表題にしているその作品の中で書いている、そして作中実際に主人公二人が食べている。
「夫婦でだ」
「入るお店ね」
「だから一度でもな」
「行って来ることね」
「そうだ」
まさにというのだ。
「是非な」
「そうするわね」
夜空は素直に応えた。
「私善哉好きだし」
「そうだったな」
「お汁粉も好きだけれど」
それと共にというのだ。
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