隣の未亡人

　　　　　　　　　　　　　　　　隣の未亡人
　三橋友樹サラリーマンをしている彼は同僚の小久保五郎に難しい顔で話した、眼鏡をかけた細面の男で黒髪を左で分けている。背は一七八位で痩せている。
「俺の部屋の隣の奥さんな」
「人妻さんか？不倫は止めろよ」
　小久保は即座にこう返した、長方形の顔で小さくきりっとした目で口元は引き締まっている背は一八〇位で毎日ジムに通っているだけあって逞しい身体をしていて黒髪は短い。
「後で慰謝料とかな」
「いや、その奥さんまだ三十代前半でもな」
　三橋は小久保に不倫を止められたがそうではないと返して言った。
「旦那さん二年前に事故でな」
「お亡くなりになってるか」
「つまりあれだよ」
　三橋は真面目な顔で話した。
「未亡人だよ」
「後家さんとも言うな、だったらな」
　夫がいない人ならとだ、小久保は答えた。
「別にな」
「付き合ってもいいか」
「不倫にならないからな」
「お前やけに不倫にこだわるな」
「親戚が不倫して修羅場になったんだよ」
　小久保はそれでと答えた、二人でラーメン屋で昼食を食べつつ話している。
「泥沼のな」
「だから俺にも言うか」
「本当に不倫はな」
「止めた方がいいか」
「不倫する位ならな」
　それならというのだ。
「自分ですっきりするんだ、ＤＶＤとかゲームとか漫画を目にしてな」
「すげえ即物的なもの言いだな」
「実際そうだろ、自分で解消しても罪になるか」
「ならないよな」
「しかし不倫は泥沼になるんだ」
「だったらか」
「ああ、自分で解消するんだ」
「そうすることか」
「彼女いない俺が言うんだ」
　自分でこう言う小久保だった。
「だからな」
「不倫よりもか」
「自分でだ」
　解消しろというのだ。
「いいな、それでその未亡人さんがどうしたんだ」
「どうもな」
　難しい顔で小久保に話した。
「毎日部屋に男の人が来るけれどな」
「交際している人がいるんだな」
「それが毎日違う人なんだよ」
「ほお、それは凄いな」
「もう朝から晩までな」　
　三橋はこうも言った。
「休日なんかな」
「そんな感じか」
「毎日違う男の人がな」
「未亡人さんの部屋に入るか」
「それで出て時には一度に何人もか」
「それってな」
「あれだよな」
「その未亡人さんあれか」
　真顔でだ、小久保は言った。
「好きモノか」
「相当にな」
「そうか」
「うちのマンション壁は厚くて防音が出来ていて」
　それでというのだ。