大阪のキョンシー
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第三章
「デリヘルのお姉さんやお客さんね」
「そういえば一人でホテルに入るな」
「そういうことなの」
「そういう風俗もあるから」
だからだというのだ。
「それでなのよ」
「一人の人もいるんだな」
「カップルでなくて」
「そういうことよ」
「成程な」
「そういうことね」
二人もその事情を知って納得した、こうした場所に行ったことのない二人にはこうしたこともはじめて知ることだった。
そしてだ、そのうえでだった。
亜梨沙はホテル街の物陰を見てだ、また二人に話した。
「それで私達の本来の目的の」
「ああ、幽霊とか妖怪な」
「ここにいるかどうか」
「外国の幽霊や妖怪がな」
「どうかよね」
「そう、じっくりと腰を据えてね」
そうしてというのだ。
「探すけれど」
「いたらいいな」
真琴は心から思って言った。
「あたしが言い出しっぺだしな」
「そうね、いたら面白いわね」
由乃はクールに応えた。
「本当にね」
「そんな妖怪がな」
「そう思うわ」
「そうだよな」
真琴は由乃の言葉に頷いた、そうしてだった。
三人でホテル街を歩いていると目の前から両足を揃えて撥ねて前に進んで来る人が来た、両手は前に出している。
着ている服を見れば中国清代の服だ、由乃はその人を見て言った。
「あれってまさか」
「キョンシーだよな」
「そうね」
「中国からの観光客の人も多いしな」
「それでキョンシーも来たのかしら」
「っていうとな」
真琴は前から来るその人をキョンシーと認識したうえで二人に話した。
「息止めるか」
「キョンシーはそうしたらわからなくなるし」
「そうする?」
「すぐにな」
「おい、そんな必要はないぞ」
だがその人の方から言ってきた、そしてだった。
何時の間にか三人のすぐ前まで来ていた、そのうえで言ってきた。
「わしは人は襲わん、好物はお好み焼きとたこ焼きだ」
「ってまんま大阪じゃねえか」
その好物を聞いてだ、真琴は即刻突っ込みを入れた。
「あんた中国の妖怪だろ」
「うむ、生まれは中国の上海だ」
「バリバリ中国じゃねえか」
「だが観光客について日本に来てな」
キョンシーはその白い顔で真琴に話した、両手は前に突き出したままである。
「すっかり馴染んで日本の妖怪さん達とも仲よくなってな」
「ここで暮らしてるのかよ」
「今ではな、それでだ」
「お好み焼きとたこ焼き好きなんだな」
「バッテラもな」
「バッテラ?最近少ないわね」
由乃はこの寿司についてはこう述べた。
「残念だけれど」
「確かに残念だ」
キョンシーも思うことだった。
「あれはかなり美味い寿司だからな」
「そうよね」
「うむ、そこは何とかして欲しいものだ」
キョンシーは心から思って言った。
「大阪のお寿司屋さん達はもっとバッテラを作って欲しい」
「それをお寿司屋さんにも言ってるのかしら」
「客として入れば思うことだ」
「言いはしないのね」
「それも無粋と思ってな」
それでというのだ。
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