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神々の塔

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第五十四話 八艘跳びその四

「抑えてた」
「そんな人やったな」
「そやから弟さんのこともな」
「出来るだけやな」
「殺さんで済ませたかった」
 そうだったというのだ。
「実はな」
「そやったな」
「頼朝さんとは違ったわ」
 信長、彼はというのだ。
「決してな」
「そうやな」
「そやから織田家は残った」
「江戸時代も」
「頼朝さんと違ったさかいな」
「そういうことやな」
「実は僕もな」
 中里は頼朝についての自分の考えも話した。
「頼朝さん嫌いや」
「そやねんな、というかあの人好きな人は」
「あまりおらへんな」
「私等海外から来てる子でもな」
「ええ印象受けへんやろ」
「確かにお家騒動は常やけどな」 
 人の世のというのだ。
「あの人より酷いことしてる人おっても」
「それでもやな」
「何か妙に好かれへん」
 そうしたというのだ。
「そんな感じがするわ」
「あの人についてはな」
「どういう訳か」
「義経さんへの同情があっても」 
 リーは頼朝が人気がないその理由について言及した。
「それと共にな」
「あの人自体にな」
「好かれへんものがあるわ」
「陰湿なイメージあるな」
「暗くてな」
「そのせいか鎌倉幕府も」 
 彼が開いた日本最初の武家政権もというのだ、それが極めて重要なことであることは言うまでもない。
「暗いイメージあるな」
「そやな」
 リーも否定しなかった。
「あの政権は」
「どうもな」
「猜疑心が深くて暗殺を多くして」
「ちょっとでも邪魔と思ったら粛清する」
「身内でもな」
「子供にも容赦せん」
 中里は頼朝が木曽義仲や義経の子を殺したことも話した。
「これも歴史学んだら世界的に普通にしても」
「それでもやな」
「いい印象は受けんからな」
「どうしてもな」
「敵にも味方にも冷酷で」
「温かみもなくて」
「ほんま好かれる要素がな」
 中里から見てだ。
「ない人は」
「私等もそう思うわ」
「そういえば僕頼朝さん好きな人に会ったことないわ」
「八条学園でもやな」
「一人もな」
 それこそというのだ。
「ないわ」
「私もや」
「日本の歴史上屈指の不人気さや」
 そこに出て来た人物達の中でというのだ。
「功績はあっても」
「それでもやな」
「身内も腹心もな」
「邪魔やと容赦なく粛清する」
「そして暗くてや」
 そのうえでというのだ。 
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