お見合いの写真と別人

　　　　　　　　　　　　　　　　お見合いの写真と別人
　八条海運大阪本社で働いている小泉良純は上司に夕食に誘われた、そしてその場で一枚の写真を見せられた。
　そこにはふくよかで色白で優しい顔立ちの赤と桃色の振袖姿の女性がいた、黒髪を左右で分けて伸ばしている。
　その女性の写真を見せてだ、上司は茶色がかった収まりの悪い髪の毛に面長で顎の先が尖った顔と日に焼けた肌と引き締まった薄い唇を持っている。背は一七五位で唇と同じく身体も引き締まっている。
「八条電機で勤めていてね」
「そうなんですか」
「私の大学時代の同期の娘さんなんだ。どうかな」
「一度お会いさせて下さい」
　これが小泉の返答だった。
「是非」
「いいのかい？」
　上司は小泉の返事に驚きの声をあげた。
「いや、断られるとね」
「思われましたか」
「外見のことでね」
　そのふくよかなもっと言えば丸々とした体格から言っていることは明らかだった。
「それでね」
「いや、性格が大事ですから」
「それでだね」
「どんな性格かです」
　その彼女がというのだ。
「一度お会いして」
「確かめたいんだね」
「美人でも性格が悪ければ」　
　それならというのだ。
「駄目ですよね」
「その通りだよ」
「じゃあお会いさせて下さい」
「わかった」
　上司は確かな声で答えた、高級レストランの席でそうした。
「それならな」
「宜しくお願いします」
　確かな声での返事だった、実際彼は外見が気になったことは事実だが結婚するならそして一緒に暮らすなら性格だと考えていたからだ。
　まずは彼女の性格を知りたいと思い会うつまりお見合いを受けることにした、彼女の名前は小羽田美咲といい彼と同じ八条大学出身だった。
　その彼女と会うとだった。
　梅田の八条ホテルでのお見合いだったが何と。
　顔立ち、優しくて穏やかそうなそれと長い左右に分けた黒髪は同じであった。だが。
　非常にすらりとしていてスタイルもよかった、振袖は同じだがその痩せた彼女に彼は目を丸くさせた。