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碌でもない奴は碌でもない仕事に就く

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第一章

      碌でもない奴は碌でもない仕事に就く
 貴蔵一民と聞いてだ、彼の隣の家で学年では一年下の須藤慎吾は顔を顰めさせて言った。
「あいつかよ」
「あいつ呼ばわりかよ」
「いつも迷惑しているんだよ」
 細い吊り目と色黒の肌が目立つ顔で言った、黒髪を真ん中で分けていて背は一七二位絵痩せている。今は高校二年生である。
「本当にな」
「評判悪いよな」
「学校でもな」
「中学からな」
 友人は須藤に述べた。
「底意地悪くてさぼってばかりでな」
「人の悪口ばかり言ってな」
「イキリでな」
「何かあると偉そうに言ってな」
「自分は何もしないな」
「煙草吸ってな」
 そうしたこともしてというのだ。
「その癖成績学年最下位クラスでな」
「喧嘩も弱いな」
「そんな奴でな」
「死ねばいいんだよ」
「お前も嫌いなんだな」
「嫌い?違うよ」
 須藤は友人の今の言葉を即座に否定した。
「本気で死ねばいいって思う位にな」
「大嫌いか」
「超だよ、真夜中に騒いでな」
「寝られないか」
「しかも空き缶うちのところに捨てるんだよ」
「家に迷惑言ってるな」
「その都度親にな」
 そうしているというのだ。
「手前の息子何とかしろってな」
「苦情言ってるんだな」
「ああ、中学の頃はあいつにいじめられていてな」
「今度はそれか」
「ああ、本当に死んで欲しいよ」 
 こう言うのだった。
「あいつはな、どうせな」
「どうせ?」
「碌な奴にならないだろ」 
 このままいくと、というのだ。
「だからな」
「死んで欲しいか」
「とっととな、それで何で俺にあいつの名前出したんだよ」
「聞きたくないか」
「そこまで嫌いだよ」
「お隣だと特にか」
「というかあいつ好きな奴いるのかよ」
 須藤は友人に問うた。
「世の中にな」
「俺達の間でも評判悪いしな」
「一つ上の先輩の間でもだろ」
「同級生にも偉そうで底意地悪いらしいな」
「頼む時だけへらへらしてな」
「図々しくて卑しいともな」
 その様にもというのだ。
「有名だしな」
「そんな奴好きな奴いるか」
「皆嫌いだな」
「人間の屑だよ、だからな」 
 須藤は忌々し気に言い切った。
「大人になっても碌な奴にならないさ」
「ヤクザ屋さんにでもなるか」
「その下っ端な、何か悪いことしてたらな」
「警察に通報するか?」
「そのつもりだよ、とっとといなくなれ」
 兎に角だった。
 須藤は隣の家の貴蔵に迷惑していて忌み嫌っていた、その将来は碌でもないものだと確信していた。
 だが貴蔵は高校を卒業すると何処かに就職していなくなった、須藤はこのことにまずはよかったと思ったが。
 それでも確信してだ、友人に言うのだった。
「絶対に碌でもない仕事しかな」
「働き口ないか」
「あんな奴まともな人雇うか」
 友人に対して言った。 
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