イベリス
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最終話 素敵な想い出その十五
「八条教育出版もね」
「教科書とか参考書はなくならないでしょ」
「いや、将来はわからないから」
「あなたのお仕事もなのね」
「どうなるかわからないよ、けれどね」
「八条グループの会社だし」
父の勤め先と同系列であり世界的な企業グループである、社員を滅多なことでは辞めさせず系列内の企業が人員を減らしてもグループの別の企業全体で雇用することでも有名である。
「失業はね」
「滅多なことではないけれどね」
「それでもなのね」
「何があるかわからない、けれどね」
「家族でね」
「仲よくやっていこう」
「そうね、これからもね」
妻は夫のその言葉に頷いて応えた。
「一緒にカレーを食べて」
「その後のさくらんぼも一緒で」
「それでね」
そのうえでというのだ。
「これからも。ずっとね」
「一緒でいよう」
「そうしようね」
娘も言ってきた。
「お父さんとお母さんと」
「花でね」
「家族でね」
「ずっと一緒よ」
母親として娘に言った、そして。
母にだ、立ち上がってエプロンを着けながら申し出た。
「私も手伝うわ」
「いいのに」
「そういう訳にはいかないわよ」
笑顔で言うのだった。
「だってね」
「実家だからっていうのね」
「それでお母さんがやるなら」
「あんたもなのね」
「一緒にしないとね」
「そういうことね」
「ええ、だからね」
笑顔のままでだ、母にさらに言った。
「やらせてね」
「そこまで言うならね」
「美味しいカレー作りましょう」
母に笑顔で言った、そうして両親と家族の為に美味しいカレーを二人で作った。そのカレーは高校時代に家で作って食べていたものと変わらなかった。だが自分の家族と一緒に食べている分さらに美味しいと思ったのだった。
最終話 完
イベリス 完
2023・11・1
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