イベリス
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最終話 素敵な想い出その九
「後でね」
「喫茶店なの」
「それでね」
そのうえでというのだ。
「美味しいもの飲みましょう、ケーキやクレープもあるわよ」
「そうなの」
「花ちゃんはどちらが好きかしら」
「どっちも。けれど今はクレープを食べたいわ」
こちらをというのだ。
「それじゃあね」
「クレープ食べよう」
「そうしましょう、お母さんは紅茶かコーヒーにするわ」
「コーヒー?私コーヒーちょっと苦手」
娘は眉を曇らせて答えた。
「苦いから」
「大人になったら美味しいって思うわ」
「そうなの?」
「高校生になってもね」
その頃にもというのだ。
「なるわ」
「美味しいって思うの」
「だからね」
それでというのだ。
「その時になったらまた飲んでね」
「そうするね」
「花ちゃんはミルクがいいかしらね」
娘の好きな飲みものを話に出した。
「それなら」
「うん、私ミルクにするわね」
「ええ、じゃあ今はね」
「モコちゃんとお散歩ね」
「そうしましょう」
「うん、一緒にね」
母に手を引かれつつだ、花は笑顔で応えた。そうして母娘で愛犬と一緒に歩いていった。そうしてだった。
家に帰ると母娘で渋谷に行くことにした、すると玄関でモコが見送ってくれた。
「ワン」
「いいのよ、今日帰って来るから」
咲はそのモコに笑顔で声をかけた。
「その時にまたね」
「モコちゃんすぐに帰って来るね」
花もモコに声をかけた。
「その時にまたね」
「ワンワン」
「じゃあ行きましょう」
咲はここでも娘の手を引いて言った。
「それでね」
「うん、渋谷にね」
「行きましょう」
こう話して駅まで行ってそこからだ。
電車で渋谷に来た、そしてハチ公の銅像を見てからだ。
店に入った、そこにはマスターがいて言ってきた。
「ああ、嬢ちゃんかい」
「お久し振り、マスター」
咲は笑顔で応えた。
「何ヶ月振りですね」
「二ヶ月か」
「まだそれ位ですか」
「そうさ、相変わらず元気そうだな」
「この通りです」
花の手を引いたまま答えた。
「元気です」
「それは何よりだな、それでそっちの娘は」
「娘です」
ここでも笑顔で言葉を返した。
「言ってました、この前」
「結婚してな」
「子供がいるって」
「何度か言ってたな」
「その娘です」
花を見つつマスターに話した。
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