栄光の架橋
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第三章
「もうこのままな」
「アレよね」
「アレして欲しいな」
「久し振りに」
「今首位や」
順位はというのだ。
「それやとな」
「このままね」
「あれして欲しいわ」
「絶対に」
「このまま勝っていって」
そうしてというのだ。
「最後はな」
「アレよね」
「横田選手の為にもな」
こう言うのだった、そのうえで彼は阪神の応援を続けていった。阪神は一時広島に首位を明け渡しながらも勝ち進み。
マジックを点灯させた、マジックは次々に減り遂にマジック一となり甲子園で全人類普遍の敵にして戦後日本のモラル崩壊の及び知性の劣悪さの象徴巨人を成敗し優勝を手にせんとしていた。その試合で阪神は。
「よし、やった!」
「これが今の阪神や!」
「今日も勝てるで!」
「十一連勝や!」
「それでアレや!」
「甲子園の胴上げや!」
「阪神やれるな」
俵は自宅のパソコンの前で観戦しつつ言った。
「今日でな」
「優勝ね」
「ああ、アレをな」
一緒に観ている妻に言った、尚二人の一人息子の幸一父親によく似た顔の長身で痩せた彼は大学の後はアルバイトで家にはいない。
「やってくれるで」
「そうよね」
「十八年ぶりや」
「思えば長かったわね」
「何だ噛んだで滅多に優勝せんチームやからな」
阪神についてこうも言った。
「そやからな」
「中々優勝観られないわよね」
「十八年前って幸一まだ子供やぞ」
「ほんのね」
「その幸一も大学生になって」
そうしてというのだ。
「アルバイトもしてる」
「コンビニでね」
「そうなってるのにな」
それがというのだ。
「ずっと優勝してへんって」
「ほんま阪神は困るわよね」
「こんなファンを困らせるチームないわ」
「優勝しそうでも肝心な時に負けたり」
「そんなんばっかりやさかいな」
だからだというのだ。
「ほんまな」
「困るわよね」
「阪神はな、けど今日の試合は」
「もう勝ったわね」
「巨人なんか何でもないわ」
ペナント前に岡田監督が言った様にというのだ。
「ほんまな」
「そうよね」
「このまま勝てるわ」
この試合はとだ、俵は妻に言い切った。既に二人で優勝した時のシャンパンでの乾杯の準備も整えていた。
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