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側室

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第二章

「ここは」
「源内さんの知恵で、ですか」
「何とかしていいか」
「頼めますか」
「ああ、任せろ」
 こう言ってだった。
 源内は動くことにした、すぐにだった。
 彼は知り合いの幕府に仕えている自分と親しい典医に会ってまずは田沼のことについて尋ねたのだった。
「どう思われますか」
「田沼様は出来た方だ」
 典医はこう答えた。
「出が低いので幕府では何かという方もおられるが」
「譜代の方々ですな」
「しかしな」 
 それでもというのだ。
「頭はよくお心も確かでな」
「出来た方ですか」
「上様も信頼されておる」
 将軍もというのだ。
「間違いなく今以上にだ」
「身を立てられますな」
「そうなられる方だ」
「ではです」
 源内は典医の話をここまで聞いて本題を出した。
「実はその田沼様に近付ける方法があります」
「わしがか」
「そうなればです」
 典医にさらに話した。
「あの方は蘭学にも興味がおありで」
「蘭学にか」
「八代様よりのことで」
 蘭学を許した吉宗は紀伊藩の藩主だった、田沼家はその彼に取り立てられた家であるのだ。
「それで、です」
「それは初耳だったが」
「非常に新しいものがお好きで」
 田沼はというのだ。
「蘭学についてもです」
「興味がおありでか」
「そちらの書もです」
 こちらもというのだ。
「貸し出されるそうです」
「そうであるか」
「それでご典医殿は」
「是非な」
 源内にすぐに答えた。
「学びたいと思っておる」
「出は田沼様と縁を結びたいですね」
「出来ればな」
「ではです」
 源内はここまで聞いて笑って言った。
「一つよい方法があります」
「それは何じゃ」
「実は田沼様は吉原のある花魁に入れあげておられて」
「そしてか」
「はい、それでその花魁を側室にと望まれておられますが」
「その花魁は侍の家の出でないので」
「それではな」
 典医も言った。
「とてもな」
「側室に迎えられませぬな」
「そうであるな」
「しかしです」
 ここで源内はそっと言った。
「養子縁組をすれば」
「ああ、その花魁を侍の家のか」
「養子にすればです」
「侍の身分となってな」
「そしてです」
 そのうえでというのだ。 
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