王昭君の柳
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第一章
王昭君の柳
中国前漢の頃の話である。
王昭君という絶世の美女がいた、王昭君は宮女であり。
柳の様にほっそりとした身体に流麗な黒髪と白く奇麗な細い顔を持っていた。その彼女が皇帝後に元帝と言われる彼に言われた。
「そなたには済まないが」
「匈奴の単于殿にですね」
「そうだ」
皇帝は王昭君に険しい顔で答えた。
「嫁いでもらう」
「そうですか」
「そしてだ」
皇帝は厳めしい顔をさらにそうさせて言った、黒い髭も今は歪んで見える。
「漢朝と匈奴の和の基にな」
「私がなるのですね」
「両国が婚姻を結べばな」
そうすればというのだ。
「戦もなくなる」
「民も苦しまないですね」
「匈奴は強い」
皇帝自身が最もよく知っていることだ。
「だからな」
「彼等と戦えば」
「高祖も敗れられている」
劉邦、彼もというのだ。
「それに九死に一生を得られた」
「匈奴はそこまで強いですね」
「だから戦わないに越したことはない」
「それで、ですね」
「そなたにはだ」
「匈奴の単于殿の妃となって」
「和の礎になってもらうぞ」
一も二もない、皇帝の言葉は絶対だった。
それで王昭君は匈奴の単于の妃となる為に異国に入ることになった、この時彼女は自分の両親に対してだった。
自分達の家の庭に柳の木を植えてからだ、悲しい顔で話した。
「若し私がこの世をされば」
「匈奴において」
「そうすればなのね」
「この柳も狩れます」
そうなるというのだ。
「その時は」
「そのことを確かめろというのだな」
「柳を通じて」
「そしてこちらで」
今度は鏡を出した、それを両親に差し出して言うのだった。
「私を見て下さい」
「蚊が見には大切に想う人の姿が映る」
「だからなのね」
「私に何があっても」
それでもというのだ。
「そうして下されば」
「お前はいいんだな」
「そうなのね」
「左様です、ですからお願いします」
こう言ってだった。
王昭君は両親に鏡を渡してだった。
そのうえで匈奴の単于に嫁いでいった、柳の木は暫くは庭にあった。だが王昭君が嫁いで数年程経つと。
枯れてしまった、両親はその柳を見て全てを悟り。
「あの娘が言った通りな」
「せめてもね」
「鏡に出るあの娘の姿を見てだ」
「偲びましょう」
こう話してだった。
二人で鏡を見てそこに映る娘の姿を見て偲んだ、皇帝はその話を聞いて宮中の庭に柳の木を植えさせて言った。
「これより柳を王昭君の木とする」
「そうされますね」
「柳が枯れたお話から」
「そうされますね」
「そして柳の様な美しさだったからな」
王昭君のこのことについても言うのだった。
ページ上へ戻る