事件が起こるよりも
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第二章
「先輩推理ものは」
「読まないわよ」
きっぱりとした返事だった。
「漫画でもね」
「そちらでもですね」
「読まないわ」
実際にというのだ。
「私はね」
「じゃあドラマも」
「観ないわよ」
「推理ものはですね」
「だって嫌いだから」
きっぱりとしたものが顔にも出ていた。
「それでよ」
「何で嫌いなんですか?」
「だってね」
眉を顰めさせてだ、冴子は答えた。
「推理ものって事件が起こってでしょ」
「殺人事件とか」
「それが起こってからね」
そうしてからというのだ。
「動くでしょ」
「そうですね」
「刑事さんなり探偵さんなりがね」
「真犯人を突き止めますね」
「犯罪が起こってからね」
それからというのだ。
「そうでしょ」
「ですね、確かに」
「犯罪は起こるけれど」
どうしてもというのだ。
「起こらないに越したことはないでしょ」
「最初からですよね」
「治安がいいならね」
即ち犯罪が起こらないならというのだ。
「もうね」
「それで、ですね」
「越したことはないから」
だからだというのだ。
「私達警察官の仕事は」
「勿論犯罪を取り締まってね」
「悪い人達を捕まえることですね」
「そうだけれど」
「それ以前に」
「ちゃんと治安をよくしてね」
そうしてというのだ。
「事件が起きない様にする」
「事前の防止ですね」
「だからパトロールもしてね」
そうしてというのだ。
「交番もあるし子供達に何かとね」
「お話もしていますね」
「そうよ、起こったことをどうするかじゃなくて」
「起こらない様にする」
「それこそがね」
まさにというのだ。
「大事なのよ」
「警官は」
「それで起こってからね」
事件がというのだ。
「それを解決するのはね」
「それもまた大事にしても」
「やっぱりね」
起こしてしまったことはというのだ。
「それだけでどうかとなるわ」
「だからですか」
「私は推理小説は読まないの」
こう明星に話した。
「起こってからじゃ駄目だって」
「それで、ですか」
「まして連続殺人とかだとね」
そうした事件を扱った作品はというと。
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