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魔法少女リリカルなのはvivid 車椅子の魔導師

作者:月詠
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六話

突然現れた碧銀の髪を持つ女性。自称“覇王”の通り魔……

「あなたにいくつか伺いたい事と、確かめたいことが」

「質問すんならバイザー外して、名を名乗りやがれ!」

「失礼しました」

その言葉と同時にバイザーを外す

「カイザーアーツ正統、ハイディ・E・S・イングヴァルト。“覇王”を名乗らせて頂いてます」

この名前って事は……!!

「噂の通り魔ってことか」

「否定はしません」

街灯から降りて、ノーヴェさんと対峙する

「伺いたいのはあなたの知己にある“王”達についてです。聖王オリヴィエ複製体と冥府の炎王イクスヴェリア」

「ッ!!」

その名を聞いた途端、拳に力が入るノーヴェさん

「クロム。下がってろ」

「ですが……」

「いいから……!!」

ノーヴェさんの言葉に従い、後ろに下がる……

「あなたはその両方の所在を知っていると……」

 ・・・・・
「知らねぇな」

え…?

「聖王のクローンだとか、冥王陛下だのなんて連中と知り合いになった覚えねぇ。私が知ってんのは、一生懸命生きてるだけの普通の子供達だっ」

「――――理解できました。その件については他を当たるとします。ではもう一つ、確かめたい事はあなたの拳と私の拳、いったいどちらが強いのかです」

正気か!?ノーヴェさんだってあのスパーを見る限り、弱いわけじゃない。むしろ強い方だ。それに挑むなんて……

≪やはりストラトス様と考えた方がよろしいのでしょうか?≫

「ロンド、あれは100%間違いなく、アインハルトさんだよ」

間違うはずがない。同じクラスになってまだ短いけど、アインハルトさんは人一倍目立つ気を放っていた。それと同じ気があの人から感じられる……

≪どうしますか?≫

「ノーヴェさんに勝ってもらって、事情を聞くしかないよ」

それしかない

「防護服と武装をお願いします」

「いらねぇよ」

「そうですか」

「よく見りゃまだガキじゃねーか。なんでこんな事をしてる?」

確かに、通り魔のようなストリートファイターなんてどうして……

「――――強さを知りたいんです」

一瞬、その言葉を言った“覇王”の瞳には悲しみが見えたような気がした

「ハッ!バカバカしい」

そう言って、静かに構えると……

飛び膝蹴りの不意打ちをかました。もの凄い速さで不意打ちをしたのにもかかわらず、“覇王”はとっさで防いでいた

≪惜しい……!≫

でもまだだ……!

ノーヴェさんの右手にスタンショットの準備がある!

ノーヴェさんのスタンショット“覇王”の防御の上から当たる……が、

「うそ……」

後ろに下がっただけで、まともに受けきってしまったのだった

≪不意打ちとスタンショットをガードの上からと言ってもまともに受けきるなんて……。どんな防御力してるんですか……!?≫

「やっぱり、“覇王”を名乗るだけの事はあるんだよ」

あの実力、あの歳でどうやってあそこまで……

「ジェットエッジ!」

ノーヴェさんがデバイスを展開する。ローラーブーツ、あんな踏込がほとんど出来そうにないものをどうやって

「ありがとうございます」

武装がないとダイレクトで入ってしまうからね。そこはやっぱり心配するんだね

「強さを知りたいって、正気かよ?」

「正気です。そして、今よりもっと強くなりたい」

強くなりたい。強さと言う概念に溺れてるだけ……。そう言うわけではなさそうだけど

「ならこんな事してねぇで、真面目に練習するなり、プロの格闘家目指すなりしろよ!」

ノーヴェさんの言う通りだ。強さを求めるなら、目で実感できるプロの格闘家になった方が一番手っ取り早い。それなのに、こんな事をするって事は……

「単なる喧嘩馬鹿ならここでやめとけ。ジムなり道場なり、いい所紹介してやっからよ」

「ご厚意痛み入ります。ですが、私の確かめたい強さは――――私の生きる意味は、表舞台にはないんです」

構えをとる“覇王”。構え?あの距離でか!?

≪空戦か射砲撃ですね≫

いや、違う。覇王の戦い方は空戦でも、射砲撃でもない……!

あの距離だと……

「……って!!」

ノーヴェさんはとっさに避けたけど、“覇王”はすでに体勢を立て直していた

「やっぱり歩法」

≪縮地と同系統ですか?≫

いや、縮地よりは劣った歩法。覇王独自の歩法なんだと思う。

「がっ!?」

素早い一撃がノーヴェさんの腹に入るが、後ろに飛び、距離を取る……

「列強の王達を全て斃し、ベルカの天地に覇を成すこと。それが私の成すべき事です」

「寝惚けたこと抜かしてんじゃねぇ!」

その言葉と同時に“覇王”に向かって行くノーヴェ

「昔の王様なんざみんな死んでる!生き残りや末裔達だって、普通に生きてんだ!」

話しながらのインファイト……。僕には到底出来ないよ……

両方が、距離を取る

「弱い王なら――――この手でただ屠るだけ」

なっ!?今、なんて……!!

「このバカったれが!!」

魔力が一気に溢れたと同時にロード系の魔法が発動する。

その道は“覇王”へと続いている

その“覇王”は両足と両手がバインドによって、動けなくなっている

「ベルカの戦乱も聖王戦争もッ!ベルカって国そのものも!!もうとっくに終わってんだよッ!!」

強烈な蹴りの一撃が“覇王”の顔面に直撃する……

「っ!?」

「終わってないんです」

なっ!?どうかしてるよ!!“覇王”!!

≪防御を全て捨てて、カウンターバインド狙いで強烈な一撃を耐えきるなんて……≫

どこまで規格外なんだ!!

「私にとってはまだ何も」

“覇王”が右手を振り上げる……。あの構えは……!!

「ロンド!」

≪間に入ります!!入ったらすぐですので、ご注意ください!!≫

高速移動魔法の術式を車椅子に積んである魔導式エンジンに付与し、尋常じゃない速度を生み出す

「覇王……断空拳」

足元から練り上げた気を振り上げた右手からの打ち下ろしで放つ。多分、見た感じがそれだと思う……

「っ!?」

「なっ……。クロム!?」

打ち下ろした拳をノーヴェさんに当たる前に受け止め、ノーヴェさんへのダメージをなくす……

「結構キツイものだね。この一撃を受け止めるのって……!!」

≪スタンバースト≫

受け止めた手とは逆の手で射撃系のスタンバーストを撃つ

「くっ……」

とっさに避け、距離を取られてしまう……

「列強の王達を全て斃し、ベルカの天地に覇を成すこと。それがあなたの成すべき事だと、そう言いましたよね?」

「……はい。そうです」

そうか……。それがホントなら

「落ちぶれたものだな。“覇王”」

「なっ!?」

今の言葉にノーヴェさんは驚きを隠せないでいる……

「……今、なんと言いましたか?」

「聞こえなかったのなら、もう一度だ。……弱いな“覇王”」

「ッ!!」

≪プロテクション≫

“覇王”はもう一度言葉を聞き、こちらに向かってきた……。ロンドが合わせてくれなかったら、直撃してたね。うん

「どうした?誇りを汚されて怒っているのか?」

「弱いと言うなら、貴方の武を確かめさせて下さい……!!」

まだ、強さを求めるか……

「ロンド。臨界点は?」

≪今、残りの魔力とマスターの事を考えますと……30秒といったところです≫

30秒か。ギリギリかな?

「そう。今はそれで充分だよ!!」

プロテクションを解除し、こちらに向かってきた拳を掴み、引き寄せる

        ・・・・・
そして、そのまま蹴り飛ばす……

「……クロム。お前……立てて……!!」

そう、僕は今、立っている状態。魔力を全て足に注ぎ、強制的に動かす……

「説明は後でします。今は、少し言う事の聞かない駄々っ子を止めてきます」

限界は30秒しかない。どこまで出せるかわからないけど……!!

「くっ……!!」

≪マスター!?≫

やっぱり記憶が邪魔をするよね……。本気の戦闘になるといつもそうだ……。昔の父さんと母さんとの記憶が僕の動きを鈍らせる。あの楽しかった日々の記憶さえも……!

「大口を叩いたわりには躊躇するのですか」

その言葉と共に向かってきた“覇王”……

「はっ!!強さと言う概念に縛られた愚か者に負けるほど、腕は鈍っちゃいないよ!!」

お願いだから、少しでもいいから!言う事を聞いて!僕の体!

「強さを求めることはいけない事ですか」

「そうは言わないよ!でも、“覇王”。君は何の為に強さを願う!王達を全て斃し、ベルカの天地に覇を成すこと?違うでしょ!?君の……覇王の悲願はっ!!」

防いでは攻め、防がれては攻められ……。攻防戦は長く続けられないよね

冷静に対処はしているが、“覇王”の攻撃は一撃一撃が重い。これほどまでの武力を持ってまだ強さを求めるのか

「っ!?」

緩んだ!!なら……

「少し、頭を冷やしてこい!!」

右手に魔力を宿す……。スタンショットのおまけ付きだよ!!

「破城鎚!!」

右手でアイアンクローの容量で頭を掴み、地面に打ちつける……

轟音と共に“覇王”は地に伏した……

「はぁ……はぁ……」

≪28.9秒。お疲れ様でした。マスター≫

後ろから、遠隔操作してきた車椅子に座らせられる……

【うん……。後、お願いね】

その言葉を最後に車椅子に座り込んだまま、意識を手放した……


ノーヴェside

「あれがクロムの力……なのか?」

悔しいけど、“覇王”は今の私より強い。でもそれに真っ向から勝負を挑んで、身長差を物ともせずに“覇王”に勝ったクロムはそれより強い……

≪ノーヴェさん。とりあえず、お願いできますか?≫

「あ、ああ。少し待て」

スバルに言えば、なんとかなるよな

姉のスバルに連絡し、こっちに来てもらう事にした。

「“覇王”の奴。大丈夫なのか?あんな攻撃をもろにくらって……」

≪マスターも手加減を出来ないバカではありません。それに“覇王”だってちゃんと威力の軽減をしていましたから、大丈夫ですよ≫

あんな一瞬でそこまで……

≪それとノーヴェ様。今回マスターが勝てたのは、貴女のおかげでもあります≫

「え……?私の。どういうことだよ」

≪マスター自身、全盛期の三分の一も実力を発揮出来ていませんでした。あれで勝てたと言う事は、ノーヴェ様が“覇王”に与えた最後の攻撃が一番の勝因です≫

あれで全盛期の三分の一も発揮出来てないだ!?

「おいおい。クロムの全盛期って……」

≪たった二年前ですが、その二年はマスターの力の落とすには充分過ぎるほどでした……≫

そんなに酷いのかよ……

≪マスターは必要じゃなければ戦いたくはないんです。学校でも、普段なら実技の授業は見学ですが、試験が近づくとちゃんと出ます。でも、休日にこんな戦いをしたのは二年間の内、今日が初めてだと思います≫

「そうか」

「ノーヴェ!」

どうやら、スバルが来てくれたみてぇだ

まずは、こいつらの治療が先だ


クロムside

「う……んん……」

あれ?僕は……どうしたんだっけか?

昨日、ノーヴェさんと一緒に帰って、それで……

「はっ!」

普通は起き上がるんだろうけど、足が動かないから起き上がれないんだよね……

「っぐあ!?」

意識が覚醒していくと同時に足に激痛が走った……

「そうだった。昨日、“覇王”と戦った時に……」

久々に立って、戦ったんだっけか。それの反動かな?

≪マスター!!起きたのですか!≫

どうやらロンドは近くにあるみたいだね

≪体の方は異常ありませんか!?≫

「両足が痛い事以外は問題ないよ」

それにここ、僕の家じゃないよね……?

「お、起きたか」

ドアが開き、誰かが入って来た。ノーヴェさんだ

「ノーヴェさん。ここは?」

「私の姉貴のスバルの家だ」

ノーヴェさんのお姉さんの家……?

「痛むところはあるか?」

「両足への痛みが酷いくらいです」

あのわりには平然な顔をしてないか?とノーヴェさん

「我慢は取り柄ですから」

「そうか。じゃあ、リビングに行くぞ」

「あ、はい。ロンド」

≪大変申し訳ないのですが、まだ上手く浮遊魔法を使えるまで魔力回復してないので、使えないのです……≫

あー…だよね。昨日、全魔力は足に込めたから……

「ノーヴェさん。お願いできますか?」

「あ、ああ」

慣れない手つきで僕を車椅子に乗せてくれるノーヴェさん

「これで大丈夫か?」

「はい。ありがとうございます。ロンド、動かせないほどないわけじゃないでしょ?」

≪それは大丈夫ですので、ご心配なく≫

ちゃんと車椅子を動かしてくれるロンド

先にノーヴェさんがリビングに出ててくれてる

「クロムの奴。起きたぞ」

部屋から出て、リビングに出ると、青い短髪の女性とオレンジの長髪の女性、そして元の姿に戻ったアインハルトさんがいた……

「あ……」

僕の姿を見て、顔を伏せてしまうアインハルトさん

はてさて、これはどうしようかな?



僕はこの少し重い雰囲気をどうにかする方法を考えるのだった……

 
 

 
後書き
六話です

“覇王”との戦いと少しだけクロムくんの過去に触れました

戦闘描写のへたくそさは自分でも呆れます…

今回は文が浮かんだので、早めの更新としました

次もこうとは行かないと思います…。はい…

それでは、誤字報告、感想待っています 
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