浮気には余裕が必要
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第二章
「私もこれからパートがありますから」
「詳しいお話を」
「聞く気はありません」
話を切ってだった。
それで電話を切ってパートに出た、そしてだった。
プロジェクトを成功させて有給休暇を取って休んでいる夫にだ、この電話のことを話すとこう言われた。
「えっ、何それ」
「何それってそうした電話があったのよ」
「そんな余裕全くないよ」
夫は妻に答えた。102
「そんなのね」
「そうでしょ」
「そもそも浮気とか嫌いだし」
「私もよ」
「やってはいけないことだよ、しかもね」
倫理観に加えてというのだ。
「忙しかったし時間もないし」
「体力もね」
「かなり疲れていたから」
だからだというのだ。
「女の子を見てもね」
「奇麗だったり可愛かったり」
「そうした子達を見ても」
そうしてもというのだ。
「全くね」
「何も思わなかったのね」
「道の小石みたいな」
そうしたというのだ。
「何でもないね」
「そんなものに思えたの」
「そうだったんだ、本当にね」
「あまりにも忙しくて疲れていて」
「そうだったよ」
「それで浮気なんて出来ないわね」
「その女の子を見たってわかるのも少しだったんだよ」
そうでもあったというのだ。
「忙しくて余裕がなくて」
「脇目も振らずで」
「本当にそうだったからね」
「それじゃあよね」
「浮気なんてね」
それこそというのだ。
「出来るか」
「答えは出ているわね」
「そうだよね」
「そうでしょ、だからね」
「それは嘘だってわかったんだね」
「私もね、ただそんな嘘言ったの誰かしら」
「ライバル社かな、けれどプロジェクトは成功したし」
夫はそれでと答えた。
「別にいいよ、むしろそんな下らないことする相手なんてね」
「無視することね」
「責任者が浮気してるとか言うよりも」
「自分達がいいお仕事することよね」
「その方がずっといいからね」
「そうね、そのいいお仕事をしたから今はね」
妻は夫に優しい顔と声で話した。
「ゆっくりとね」
「休むことだね」
「そうしてね」
夫に言うのだった、そして彼をゆっくり休ませた。後日夫がライバル社と思っていた企業が傾いたがそれはまた別の話で彼のプロジェクトによって彼が勤めている会社は大いに業績をあげたのだった。
浮気には余裕が必要 完
2023・12・23
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