魔法少女リリカルなのはStrikerS~赤き弓兵と青の槍兵
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本編
二十五話~陸曹の過去
前書き
今回の主役はヴァイスです。
時系列はゆりかご浮上の少し前になります。
side ヴァイス
「よ。こんなとこにいたか」
「旦那………」
アースラの端の方にある一室にいた俺に声をかけてきたのはランスの旦那だった。
「何しに来たんです?」
「いやな、お前の過去について聞きに来ただけだ」
「過去、ですか………」
「ああ。ミスショット、したんだろ?」
この人は普段飄々としているのにこういう時には研ぎ澄まされた刃物のような雰囲気を醸し出す。
そして、こちらの心情を当ててくるのだ。
「ええ。情けない話ですがね。人質になった妹に当てちまったんですよ」
「それでそん時の妹と同じくらいの年ごろだったあの召喚士の嬢ちゃんを撃てなかった、と?」
「………ま、そうすね」
しばらく二人とも無言だった。が、
「ヴァイス、お前は魔法をどう思う?」
「魔法を、ですか……?」
「ああ。特に非殺傷設定、って奴だ」
考えたこともなかった。管理局員は、魔力ダメージを与えて犯罪者を捕える。
俺たちにとっては当たり前すぎることだからだ。
「安全な力だと思います」
「そうだな。命にかかわるような事態にはならねえな。俺はよ、この手で何人も人を殺めてきた。親友とその息子の命をこの手で奪った。だからよ、俺は忘れねえんだ。自分が殺したことを。命を奪ったのならそのことに責任を持たなきゃいけねえからな」
「……………」
普段とは全く違う戦士としての貌。その貌は、精神はどこまでも強かった。
もし俺が親友を殺したとしたら正気なんて保てない。
非殺傷設定で妹を失明させても感じることのできないような恐怖を感じた。
「それによ。きっとお前の妹もお前を恨んだりはしてねえさ」
「どうして、そんなことがわかるんですか!」
「俺も恨まれてねえからさ。あいつは最後までを俺を気遣っていきやがった。死んだ奴だってそうなんだ。生きてるんならやり直しはいくらでもきくだろう?」
もしそうだったら……どんなに……
「ま、俺からはそれだけだ。トラウマに引きずられんのもほどほどにしてさっさと現場に戻ってこいよ」
それだけを言って旦那はこちらに背を向ける。その時だった。
「アラート………」
「おやおや、お呼び出しかよ。すまねえな、俺はこれで失礼するぜ。後は頑張んな」
そうして彼は部屋を後にした。
「それでも、俺は……!」
side ランス
「ったく、世話が焼けるな、どいつもこいつも」
そうして俺は頼んでいたことを確認するためにある人物に通信を繋いだ。
side ヴァイス
「……通信?」
しばらく一人で悩んでいた。俺はどうすべきか。ここにいる意味は何かを。そんな時に来た通信だった。
「ザフィーラの旦那か」
[出ないのですか?]
ストームレイダーが話しかけてきた。
「そうだな……」
少し迷ったが、通信を繋いだ。
「ようやく出たか。ヴァイス」
「用件は何すか?」
「いや、用があるのは私ではない」
「?」
「今変わる。ちょっと待っていろ」
そして旦那と通信を変わったのは、
「お兄ちゃん、久しぶりだね」
「ラグナ…………」
俺がミスショットで光を奪った妹だった。
side ザフィーラ
「全く、あいつの世話焼きも大概だな」
俺は独自にヴァイスの事を調べたランスから妹と向き合わせる機会を作ってやってほしい、と頼まれヴァイスの妹、ラグナのことを探していた。
そして、ようやく見つけてヴァイスと通信を繋ぐことに成功した。
後は無粋な部外者は去るのみだな。
(あとは君次第だ。頑張ってくれ)
(はい。ありがとうザフィーラさん)
さて、俺も仕事に戻らねばな。
side ヴァイス
「あのね、あの事件の時の傷、もう消えたんだよ。眼帯もそろそろしなくてもよくなるんだ」
「そうか………」
あの時以来、まともに向き合うのは久しぶりだ。
「お兄ちゃんの怪我、ランスさん、だっけ?その人が治してくれた、ってザフィーラさんから教えてもらったんだ。今度お礼言いにいかないとね」
「あ、ああ……」
「……お兄ちゃん」
ラグナの声のトーンが少し変わった。
「私は、怒ってないし、恨んでなんていないよ。お兄ちゃんと昔みたいに笑ってお話できるような関係に戻りたいだけなの」
「…………」
「お兄ちゃんはどうなのかな、聞かせてほしい」
「俺は………」
そんな時俺の頭をよぎったのは、
――― 生きてるんならやり直しはいくらでもきくだろう? ―――
先ほど言われた旦那の言葉。悩んで、情けなくて、悔しくて、それでふさぎ込んでしまった。
だけど、
「お前が許してくれるなら、やり直したい」
あの事件以降初めてしっかりとラグナの顔を見つめて言った。
その目は痛々しかったが、それでも目をそらさずに言い放った。
「………うん!」
そして、久しぶりに、本当に久しぶりにラグナの笑顔を見ることが出来た。
「それじゃ、この事件が片付いたら、迎えに行くよ」
「うん!待ってるね、お兄ちゃん!」
そうして俺は部屋を飛び出した。
side ランス
「さて、それじゃあ今回の件について説明するよ」
管制室にいるはやてからミーティングルームに集まったフォワード隊とギンガとアルトへ説明が行われる。
「今回は3チームに分かれて行動や。ゆりかごを制圧するチーム、スカリエッティを捕えるチーム、市街地で戦闘機人とガジェットを抑えるチームや」
「スカリエッティのアジトには俺とフェイトが向かう」
「ま、それは決まってたからな。問題はゆりかごや。空戦可能メンバーを全員送り込むわけにもいかんし、地上本部に向かった騎士を止める必要もあるからな」
「戦闘機人たちはどうすんだ?」
ヴィータの疑問は隊長たち空戦戦力を市街地に出すのか、という事だろう。だが、
「私達だけで行けます!」
「おい、ティアナ……」
「ええよ」
「はやて!?」
なんだ、ヴィータは聞かされてねえのか。
「許可を出したのは私だよ」
「なのは!?なんで……」
「この子たちだってもう一人前。ギンガもいるし、向こうの戦力も考えれば1対1に持ち込んでも戦える、ってのが私の見解だから」
「それにだ。せっかく俺が訓練付けてやってんだ。あの程度は倒してもらわねえと割に合わねえよ」
「………戦闘機人をあの程度呼ばわりするのはお前ぐらいだよ」
ヴィータが、もう突っ込むまい、とでも言いたそうな顔をしているな。
「俺はボケんのは得意じゃねえぞ?」
「ランス、会議中にふざけとるんやない」
「へいへい」
はやてに言われて大人しくする。
「てなわけで、フォワード陣が戦闘機人とガジェット。フェイトちゃん、ランスがスカリエッティのところ。私、なのはちゃん、ヴィータ、士郎がゆりかご。シグナムが地上本部の騎士、念のためにシャマルとザフィーラはどこにでもサポートに行けるよう待機、でええな?それじゃ……」
「待ってください!!」
はやてが号令をかけようとした時、部屋に駆け込んできた人物が。
「ヴァイス陸曹!?」
アルトが驚きの声を上げるが、
「俺も出ますよ……!」
「……そうか。もうええんやな?」
「はい、ご迷惑をおかけしました」
「全くだ、おせえっつうの!」
本当に世話のかかる奴だ。
「よし、じゃあヴァイス君ヘリ、お願いや」
「了解!」
「それじゃあ、各自出撃準備や!」
しかし、ヴァイスも振り切ったか。これなら地上は問題ねえな。
だが………
不安は消えないが、今は自分の戦いに集中だ。
後書き
今回はこの小説内の三大兄貴たちが主役でした。
え?士郎がいない?いや、あれはお父さんですから(笑)
さてさて、それではここでお知らせです。
後日談のために人気投票を行いたいと思います!
形式は基本コンビまたはカップル、家族、ライバルなど二人以上の組み合わせで一人3グループまでOKです。
EX)1,衛宮家(士郎、なのは、ヴィヴィオ) 2,ランス、フェイトのカップル 3,フォワードチーム(スバル、ティアナ、エリオ、キャロ)
みたいな感じでお願いします。投票方法は感想版に書き込む、またはメッセージで私に直接送ってください。
上位三グループまでその人たちが主役の後日談を作ろうと思います!
それでは投票お待ちしてま~す(=^・^=)
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