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仮面ライダーキバ 目に見えないつながり

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第五十二章

「どうかしら」
「チョコレートは大きい私で苺は小さい私がね」
 コハナは苺ケーキを持っていた。
「だから食べて。是非ね」
「うん、じゃあ」
「おい渡」
 何とか気を取り直してとりあえずケーキを食べようとする紅に次狼が声をかけてきた。
「お客さんだよ」
「お客さん?」
「そう、何か黒い服の人が着てるけれど」
「御前に会いたいそうだ」
 ラモンと力も出て来て言う。
「どうするの?会うの?」
「向こうは絶対に会いたいそうだがな」
「そんなに僕に」
 紅は話を聞いて考える顔になった。
「それじゃあ」
「ただ。妙ですねえ」
 オーナーは相変わらず車両の奥でランチを食べている。
「今デンライナーに乗っておられる方で黒い服の方はおられませんが」
「御一人おられません?」
 その横でナオミがオーナーに言ってきた。
「ほら、あの方ですよ」
「おお、そうでしたね」
 オーナーもナオミのその言葉で気付いたようだった。
「あの方でしたら問題はありませんね」
「はい、あの方なら」
「あの方?」
 名護はそれを聞いてふと眉を顰めさせた。
「まさかそれは」
「はい、その通りだと思いますよ」
 オーナーはその名護に対して答えてきた。
「貴方が思っておられる通りの方です」
「まさかデンライナーにも乗っているのか」10
「あの方は特別なのですよ」
 オーナーはこうも話すのだった。
「ですから。それは御気になさらずに」
「それはわかったが。しかし渡君」
「はい」
「君もその人に会うことになるが」
「わかります。それは」
 紅は名護のその言葉にも頷くのだった。
「僕もライダーです。それなら会うのが」
「そうだ。俺も必ず会うと思っていた」
 それは彼も予想していたのだ。その黒衣の男と出会うことを。しかしそれは今とは思っていなかったのだ。そのことに意外なものを感じ戸惑っていたのである。
「じゃあ今からその人と」
「案内していいな」
「うん」
 紅は名護の話を聞き終えてからそのうえで次狼の言葉にも応えた。
「それじゃあ。御願い」
「わかった。じゃあな」
「来ていいよ」
 ラモンが後ろを向いて声をかけた。
「渡が呼んでるよ」
「そういうことだ」
 力も彼に告げる。
「来てくれ」
「それでは」
 彼等の言葉も受けてそのうえで今黒衣の男が姿を現わした。黒衣を着たその彼はまるで女のような顔をしていた。この世ならぬ美貌をそこに見せていた。
 彼は紅の前に来た。そのうえでまず一礼するのだった。
「はじめまして、キバよ」
「貴方があの」
「そう。私が黒衣の青年です」
 こう彼に語るのだった。
「そして貴方達を見守る存在です」
「そうですね。お話は聞いています」
 紅は彼の言葉に応えて述べた。
「貴方は。今までのライダー達の戦いを見守りそして支えてきた」
「彼等は人間です」
 青年は言った。
「素晴らしい人間です」
「人間ですか」
「そして貴方も」
 紅もだと話すのだった。
「素晴らしい。人間なのです」
「有り難うございます」
 まずは紅はその言葉も受けた。
「貴方の言葉。受け取らせてもらいます」
「スサノオに言われたのですね」
 青年はまた紅に告げてきた。
「人間のことを」
「はい」
 紅は青年の言葉にも頷いた。
「その通りです。人は醜いものだと」
「醜いのは事実です」
 青年はここでは彼の言葉、そしてスサノオの言葉をその通りだとした。
「ですがそれだけではありません」
「そのことはわかっていますけれど」
「貴方は既に御覧になられています」
 彼はまた告げてきた。
「それを」
「人の美しさをですか」
「そうです。その美しさを」
 青年の言葉は続く。
「多く御覧になられた筈です」
「多くですか」
「思い出すのです。今までの戦いで見てきたその多くの美しさを」
 彼は言う。
「覚えておられますね。その多くの美しさを」
「はい、それは」
 紅はまだ力強くはないがそれでも頷くのだった。
「僕もまた。見てきました。確かに」
「人としての誇りを失わず人として最後は死んだ方やあくまで人を愛し最後までその絆を抱いておられた方も」
「大村さん、竹内さん」
 彼等のことを思い出すのだった。自分に人とは何かを示してくれた大村に愛の美しさを見せてくれた竹内もだ。彼等のことを思い出したのだ。
「あの人達が」
「あの方々のことを忘れませんね」
「忘れられません」
 それだけはだった。決して。
「何があっても。僕は」
「ここにいる戦士達も」
 今この場にいる全ての者への言葉だった。
「誰もが同じです。美しくかつ素晴らしい戦士達です」
「皆。そうですね」
 それは彼もわかっていた。
「皆も。僕に多くのものを」
「見せてくれました。本当に」
「その通りです。それではこれからはどうされるべきか」
「戦います」
 答えはそれしかなかった。
「人間として。ライダーとして」
「戦われるのですね」
「美しいもの。人間のその美しいものを護る為に」
 その為に戦うというのだった。
「僕は戦います」
「それでは。貴方はこれからある場所に行ってもらいます」
「ある場所にですか」
「そうです。今九つの世界を巡り戦いを終わらせるべきライダーが出ようとしています」
「またライダーが」
「ディケイド」
 青年はそのライダーの名を告げた。
「彼が闘いに向かおうとしています」
「じゃあ僕は今からそのディケイドに会って」
「そうです。戦いに導いて下さい」
「わかりました。それでは」
「では渡君」 
 話が終わったところでまた名護が彼に声をかけてきた。
「今は。スサノオとのここでの戦いが終わったことを祝って」
「そうだ。少し遅れたが御前も入れ」
 登も言ってきた。
「それでいいな」
「はい。それじゃあ」
 ここでやっと笑顔になれた紅だった。彼は信じることができるようになった。人のその美しさを。その為か今の笑顔は曇りのない実に清々しい笑顔だった。その笑顔でまたあらたな運命と戦いに向かうことを決意するのだった。仮面ライダーキバとして。


仮面ライダーキバ  目に見えないつながり   完


                           2009・5・9
 
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