人生コンティニューしたらスクールアイドルを守るチートゲーマーになった
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86話 Thousandの堤も崩れ始める
「Sposami !!!!!」
突如として響いた声に俺と曜はドン引きする————そして俺は言葉の意味を知った上で、よりドン引きしている。興奮するとイタリア語言うんだな……
しかし月は驚いた顔ひとつせず、微笑してその返事をする。
「ごめんなさい!」
「いーや!これはキングである俺の命令だ!今日から君はクイーンだ!!」
「ごめんなさい!意味わかんないです!」
「じきにわかる!とにかくここは
「あぁー!!うるさい!!」
このままだと無限ループになると見た俺は、魁の顔目掛けて右ビンタを光速で繰り出す。運動エネルギーとは質量と速さの積……速ければ速いほど、
その威力は増強される。魁の体は建物を突き抜け、漁港を越え、海へとダイブする—————いやこんなことするつもりじゃなかったんだが……
流石に建物を何重にも突き破るビンタを繰り出すなど信じる客は居らず、他の客にはただ建物が突き抜けたことしか映らなかったようだ。
しかし曜も俺も唖然としてしまった。しかし月はこんな非人間的な出来事にも、動じず———というか少しワクワクした様子だ。
「おぉ〜ずいぶん飛んだねぇ!?」
「え……才君?」
「————とりあえず漁港の方へ……?」
俺と曜、そして月は魁がたどった軌道をたどる。
その間に2つの建物を突き抜け、ようやく遊覧船乗り場近くの海へとたどり着く————チラチラと見回すと、魁が12メートルの水中から浮かび上がってきた。どうやら……無傷なのか?
魁は神妙な顔でこちらを向く。
「え……才?————なんで俺は港に落ちてんだ?」
「それは聞かない方がいいかも……」
終始困惑する曜と俺。しかし月は浮かび上がった魁に手を差し伸べる………相変わらずコイツの適応能力には敵わないな————
「ま、それはそうと————改めてよーろしく〜!」
「え……あ、結婚してくれ!!」
「ふふっ。だーめ♪」
「いーや、結婚しろ!」
「無理です♪」
「ダメだ、結局変えられなかったわ————」
もうこの2人の関係はこういうモンだと受け入れるほかあるまい。
——————※——————
【ボルケニックナックル! アチャー!】
ナックルから溢れ出るマグマが辺りの怪人を崩壊させ、中から気絶した人間が出てくる。これでクウガとウォズとともにクローズは先ほど15体程度いた怪人らを完全討伐できたこととなる。
「やっぱり中に人がいるから攻撃もいつも通りにはできねぇ……」
「バーカ、それくらい頭使って工夫しろ。」
「うるせぇ!んなのできたらやってるわ!」
「やれやれ、君たちは……」
口論になるも束の間、すぐさま怪人通知システムが作動する。
「またか……一体どうなってんだ!?もう30件目だぞ!?」
「その答えははっきりしてる————ほんの些細な悪意が怪人を生み出してるからだ。ナムロドが完全復活したせいでな。」
「だが変だ……その怪人反応はあまりに近すぎる———」
ウォズの指摘は完全に的を得ていた………それはすぐに現れる。
【アタッシュアロー!】
血塗られた矢が一同を襲う。
「「!!」」
「お前ら———滅亡迅雷!?」
爆煙と共に姿を表したのは————滅と迅……そしてボーイッシュなアンドロイドに、アークドライバーを装着した漆黒のマギア。
虎太郎は早速見慣れない中性的な女性アンドロイドを指差す。
「お前、見ない顔だな。」
「私は滅亡迅雷.netの1人 亡です———以後、知り置きを。」
敵幹部が3人も引き連れてきたことに竜介は直情的にアークに問う。
「滅亡迅雷が3人も……一体何が目的だ!?」
『Aqours☆HEROES……お前たちは滅びる。今回はその挨拶をしに来た。』
「へぇ……殺人AIが人間に挨拶なんて、ずいぶん平和的だなw」
頭脳戦の一環で敵を煽る虎太郎。彼の発言は常に冷静ゆえに的確……だからこそ、煽りとなる。しかしアークはペースを一つ崩さずに話し続ける。
『我々はじき、悪意のエネルギーを一気に集める———この国全体に及ぶ悪意も見逃さず、全て怪人と化す。』
「なんだと……!?」
『この結論は誰にも止められない……ワタシの目的は必ず果たされる。』
「そんなの———俺たちが止める!」
『いいだろう……貴様らを欺き、絶望させる———それも人間の本質だ。』
すると滅亡迅雷は何もすることなく、煙幕と共に姿を消す。
「どういうことだ———?」
虎太郎の頭には疑念が残った。
——————※——————
「へぇ〜!町を守る仮面ライダーか〜カッコいいじゃん!」
「カッコいいのはいいけど、その分死ぬかもしれないリスクを常に負ってるけどな。」
「才君は例外だと思うんだけど……」
「しーっ、それは言うなって。」
一通り月には説明しておいた。適応力のある彼女なら打ち明けてもいいという俺の判断……というより、魁の頑丈さや俺の異常なパワーを見て説明しないわけにはいかない。
そして先ほどから魁は、月の家まで歩く道中ずっと月の顔を見つめている。一瞬『ここにストーカーが!』と騒ぎたいくらいには。
そんな変質者はさておいて、曜が事情を説明するように求める。
「でもどうして月ちゃんの家に?」
「お前が知らないで俺が知ってるのはどうかと思うが……お前のお祖父さん、静真高校の理事長で学校連盟の理事の1人なんだぜ?」
「え!?そうだったの月ちゃん?」
「うん、だから僕は静真高校に通ってるし曜ちゃんも誘ったんだけど……千歌ちゃんと一緒がいいって言うからさ。」
「そ、そうだったっけ……///」
曜が顔を赤らめる。
ここで俺はあることを思い出して、魁に尋ねる。
「魁、お前あの時オハラの株価どうなってた?」
「………」
「おい、いい加減目ぇ覚ませ!」
「え、あぁ、え、オハラエンタープライズの株価のことか?————上がってた。しかも暴騰と言っても過言じゃないほどに。」
「おかしい……俺の見立てじゃ、何もなければ株価は安定しているはずだが————何か大掛かりなプロジェクトでも打ち出したか。」
「そりゃぁ……多分ロケットの打ち上げだろうな。」
「ロケット?」
「オハラは定期的にロケットを打ち上げてる。いろんな目的でな。それは株価上昇にも一役買ってるってわけさ。」
「なるほど……ここにきて資金調達をしに来たか。」
そんな話で時間を潰していると、月の家までついた————何度も来ているこの家は、渡辺家の本家ということになるか。俺やホテルオハラほどではないが、かなり大きな家だ。明治の洋館に近いか。
早速お邪魔させてもらい、お祖父さんがいる応接間へと月に案内される。
「おじいちゃん〜曜ちゃん来てくれたよー」
「そうか……」
いくら話を通してくれているとはいえ、この家の人物に紹介もなしにドタドタと上がり込むわけにもいかないので、俺と魁は扉の側でその様子を覗く。
その部屋に座っているのは、杖を携えた紺青の眼を持つ白髪の男性。まさしく月と曜のお祖父さんって感じの人だ。500年前に曜のご先祖であろう人を見たが、その美形の血筋を現世に残す……そんな人物。俺が出会うAqoursメンバーの尊属の中で、一二を争う美形と言える。もうゆうに70代を過ぎてもこの顔の若さには驚かされる。
そんな彼は自身の孫である曜に声をかける。
「曜、元気だったか……?」
「うん!おじいちゃんも元気そうでよかったよ〜!」
「お前のパパは元気か?」
「うん、一ヶ月前に帰ってきた時は大丈夫な感じだった。」
「そうか……」
俺は肌で感じ取っていた。渡辺祖父は明らかに曜に負い目のような、未練のような、はたまた畏れを抱いている。それは確実に言える————それはここ数年なんてレベルじゃない、曜が生まれて間もない頃からの確執に違いない。
曜はそれに気づいていないだろうが—————
渡辺祖父は開いた扉から俺と魁を指差す。
「今日は、そこの人が主じゃないのかい?」
「あ、うん———私のクラスメイトの才君と魁君。」
「そっちの子は小原家の子か……?」
「おじいちゃん知ってたの?」
「何年も沼津に住んでたらそれくらいわかる……それにそっちの子は、お前と月がよく遊んでた伊口ファウンデーションの孫だろう。」
「!!」
驚いた……この人に会っても記憶が蘇らない————おそらく俺はこの人と直に出会ったことはない。となると、孫たちが側で遊んでいるのを傍観した人間の顔を覚えているということになる。
だが知っているのなら話は早く進む故、好都合だ。俺は早速本題を切り出す。
「渡辺祖父、静岡学校連盟の理事としてあなたに頼み事がある。」
「ほう。」
「学校連盟の理事会に俺と小原魁に発言させてほしい。」
「是非お願いする!」
魁が語気を強め、その要望の実現を乞う。渡辺祖父は杖を左手に持ち替え、少し微笑みながら我々に言葉を返す。
「君たちの要件はだいたい月から聞いている————浦の星学院の統廃合を阻止するのが目的だろう?」
「まぁ、そんなところです。」
魁がそう答えると、渡辺祖父は杖を使って掛けていた黒ソファから立つ。
「孫の頼みなら是非受け入れよう……しかしどうするつもりだい?株売却などはビジネスも絡んでくる関係で、易々と翻意はできないと思うが。」
「そこでのプレゼンはプランの前半部。後半のプランを目の当たりにすれば、絶対変わるはずだ……」
「自信のみ……か?」
「いや、俺は実力を把握した上での自信さ。」
俺は薄笑った。
———————※———————
「じゃ、また明日!」
「おう、じゃあな!」
用件を終えた俺と魁は、曜と流れ解散し、そのまま俺の家へと向かう。
「しかし明日が理事会とは……ギリギリ間に合ってよかった。」
「なんてことは無い。もし予定がずれ込むなら、理事会を無理やり開催させたさ。ゴリ押しと頭脳戦がゲームの極意なんでな。」
「才らしいか……」
ゴリ押しと頭脳戦……戦闘ゲームでは相反する概念。通常は後者が好まれるが、かと言って頭脳を毎回働かせられるほど人間は上手くできていない。ピンチになれば誰でも思考が短絡的になる。しかし俺は、長年のゲームでそれを克服している————それは実際の戦闘であっても変わらない。
「さて、いよいよ廃校から浦の星を守る時だ!!」
「そんな日は来ませんよ………!」
「…?」
魁の話を遮るように俺たちの目の前に現れたのは……はぁ〜だるい。
「いやーほんとシラける。このタイミングのテメェはよ。」
「父さん……!」
小原兆一郎……このメンタルは少しばかり見習うべきだろうか。
「久しぶりだな伊口才。今日こそ決着をつけようじゃないか……」
「決着も何もお前がだいたい敗走してるじゃねえか。」
久々に聞いたこのイライラ感。例えるなら、そこそこ強くも主人公を見つけると強制的に戦闘に突入させるキャラに出会ったときくらいだるい。
あくびをしながら魁の肩を叩く。
「よし、任せたよ。」
「バカ!俺は王だぞ!お前も戦え!」
「こんな終盤に出てくるダルいモブキャラも倒せないのかなぁ〜?修行の成果とは一体何なのかなぁ〜?」
「うっせ!やってやるよ……キバット。」
『いいだろう、絶滅タイムだ!』
【ガブリ!】
キバットII世の牙が魁に魔皇力を注ぎ込む。
「変身!」
漆黒の鎧が形成され、ダークキバへと変身を完了する。同時に王の剣 ザンバットソードを装備する。
【ゼツメツEVOLUTION! ブレイクホーン!】
「変身。」
【パーフェクトライズ!】
【THOUSER is born. Presented by OHARA. 】
アルシノイテリウムとコーカサスオオカブトのライダモデルが融合し、サウザーを爆誕させる。そしてサウザーも専用武器 サウザンドジャッカーを装備する。
「魁ィ……私にいつから勝てると思ったんだ?」
「勝てるさ。この剣と今の俺なら……」
「調子に乗るなぁ!」
サウザーが高速でダークキバの間合いに詰める……振り下ろされたジャッカーをするりと左に避けたダークキバは、入れ違いにザンバットソードをサウザーの腹に浴びせる。
「ぐっ……!」
「いくらヌープ硬度100兆とはいえ、この剣は効くだろ?」
「その剣は……」
「500年前の小原家先祖が封印した、未知の物質 魔皇石の結晶を贅沢に使った王の剣だ————小原家の面汚しのアンタに代わって、俺がこの剣と共に王の座を受け継ぐ。」
「一撃当てた程度でほざくな!!」
【JACKING BREAK!】
召喚されたUFOが雷や冷凍ビーム、ミサイル、極熱のマグマを上空から放出する。ダークキバは紋章を盾にしてそれらを防ぐが、垂れたマグマが冷却されて足を固定し、さらにニュートン魂の力による重力波が完全に身動きを取れなくさせる。
流石はサウザー。目立った能力はない高スペックライダーであるが、サウザンドジャッカーの拡張性をフルに活用している。
「このサウザーの真髄……その鱗片を見せてやろう。」
「ぐぐぐ…」
【BREAK HORN!】
アメイジングコーカサスキーのボタンを1回………
【AMAZING HORN!】
2回押す。押すごとに右足に溜まるエネルギーは桁違いに増大する———通常1000倍の必殺が3乗……つまり、10億倍の威力!!
そしてそのプログライズキーを押し込む!
【THOUSAND CUBE DESTRUCTION!!!】
跳躍したサウザーは右足に集約したエネルギーを、人が1人入れる立方体に変化させ、それをダークキバに向かって空中で蹴る。ダークキバを捕らえたキューブはそのままサウザーの元へ帰っていき………そこで綺麗なフォームの足刀蹴りでキューブを爆散させる。
流石にこの技には俺も驚きを見せる。
「おいおい……あのキューブはヤバいんじゃないか?」
「気付いたか伊口才。あの立方体は私の任意で発生させる空間——その変身解除率は99.9兆%だ。」
「なるほど……じゃあその残り0.1が今起きたわけだ。」
「何!?」
爆炎と共に……王は再び立ち上がる。
「何故だ……なぜ鎧が破れない!」
『このキバの鎧は世界中のどんな核をも凌ぐ……その3倍の威力の爆風を持ってしても傷一つないが……防御無視の一撃にはこの上なく弱い。さっきみたいな攻撃にはな。だが、一度食らった攻撃は2度と通さぬように鎧を強化する。装着者がより強力……かつ魔皇力に耐えうる器ならばな。』
キバットII世が話したことが本当なら、ナムロドと戦った際により強化されたということになる。基礎スペックも日を追うごとに上昇している。戦えば戦うほどその力はどこまでも上がってゆく————ライバルや強敵がいるほどに彼は進化し続けるだろう。
想いはテクノロジーを未知の領域へと導く。
それに溺れる者に負けるわけがないのだ。
「今度はこっちだ———今ここに宣言する……今日から俺が小原家の当主だ!」
「!?」
【ウェイクアップ 1!】
キバットII世がザンバットのフエッスルを咥え、ザンバットバットを一往復させ、その刀身を血に染める。
サウザーがそれを止めようと踏み出した時にはもう遅かった————サウザーの胸部に血染の十字架が刻印される。
血を拭うようにダークキバはザンバットバットを一往復させる。
「ぐわぁぁぁぁぁ!」
サウザーの装甲は砕け、よく見慣れたボロボロの中年おじさんが出てきた。それを見届けた魁はそのまま変身を解除する。
「俺たち小原家はテクノロジーを進化させ、人類を進歩させる戦闘を走り続けてきた……でも、それは人のためにやることだ。使命だけを受け継ぎ、その想いを受け継がないなんて本末転倒だと思わないか?」
「ぐっ……」
「俺は人々を守る。Aqoursを通して……だからアンタももう黙ってくれ。目的のために手段を選ばないのは俺も同じ……でも、アンタはそこに想いがあるのか?」
「目的か……もうそれも終わる。」
「何!?」
サウザーは狂気の笑顔を見せる。その笑顔には俺も哀れさを感じてしまうほどの。
「君たちの目的も計画もここでお終いさ……まもなく内浦は無に帰る。」
「何言ってんだ…?どういうことだ!?」
「魁、お前なら知っているだろう……?」
魁が一瞬たじろぐ……そしてハッと思い出したかのように、サウザーに問う。
「まさかお前!!」
「そう!定期的にオハラロケットだよ!!……あれは軍事転用も可能だ!例えば……核弾頭を配備することもね。」
「お前———そこまで性根がくさっていたとはな!!!!」
魁は怒りのままに傷だらけのサウザーの顔を殴るが、狂気的な笑いは止むことを知らない。
「私の計画は必ず実行されないといけない!!!これで内浦も全て吹き飛べゴミカスどもガァぁお、酢ふえんヶ!!!!」
理解できぬ笑いが虚空に響く。
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