蟻の巣研究
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第二章
それを見てクラスメイトの張田世一やんちゃそうな顔立ちで癖のある黒髪の彼は自分の課題の工作で作ったマッチのお城を出しつつ言った。
「お前凄いな」
「そう?」
「ああ、蟻の観察日記なんてな」
それこそというのだ。
「結構時間かかるだろ」
「毎日少しずつ見たから」
「いいのかよ」
「うん、ご飯あげる時に」
「それでか」
「別にね」
これといってというのだ。
「大変じゃなかったよ、それで終わったら」
「八月三十一日になったらか」
「課題も終わったし」
それでというのだ。
「蟻さん達は水槽から出して水槽の土も戻して」
「終わったのか」
「そうしたの」
「後のことも大事にしたんだな、それならな」
張田は乙子に言った。
「お前ファーブルになれるかもな」
「昆虫記の?」
「そこまで凄いとな」
こう乙子に言うのだった。
「なれるかもな」
「じゃあ目指してみるね」
「そうしたらいいさ、まあ俺はな」
「あんたのものもかなり」
「そうか?」
「マッチ箱のお城って凄い。大阪城?」
「そうだよ、いいか」
「うん、あんたも何かになれるかも」
こう熱田に言った、実際に彼は後に芸術家として名を知られる様になった。
そして乙子は世界的な昆虫学者となった、全てはこの夏休みの宿題からだったと学者になった彼女は言うのだった。そのうえで芸術家になっている熱田とはお互い大人になってからも友人として付き合うのだった。お互いの人生を決めたことを言った相手として。
蟻の巣研究 完
2023・12・16
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