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X ーthe another storyー

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第四十七話 慕情その十五

「共に笑おうぞ」
「わらわは望んでいません」
 これが丁の返事だった。
「その様なことは」
「まだ言うか」
「あくまで」
「なら止めてみせよ、この状況を乱し」
 そうしてというのだ。
「そのうえでな」
「全てを滅ぼすのですか」
「そうしてやるからのう」
「まだ何を動くのか」
「見ておれ」
 そこまでは言わなかった。
「やがてわかる」
「そうですか、しかし」
「そなたは止めるか」
「わらわはあくまで、です」
「人間を護るか」
「地球も。人は必ずです」
「地球も護るか」
「そうですから」
「わらわは人間がそうするかどうかなぞな」
「どうでもいいというのですね」
「そうじゃ、そんなことはじゃ」
 それこそというのだ。
「よい、ただじゃ」
「憎いこの世の全てを滅ぼす」
「そうする、だからな」
「動かれますか」
「そうする、だから見ておれ」
「ならば必ずわらわは止めます」
「ふふふ、止められるなら止めてみよ」
 もう一人の丁は不敵に笑って応えた。
「わらわをな」
「貴女が出たのもわらわの責。ならば」
「止めるか」
「そうします」
「その言葉受けた、では勝負じゃ」
「わらわはそうしたことなぞしたくないですが」
「そなたの考えに関わらずじゃ」
「貴女と闘うことになりますか」
「そなたはわらわであるからな」
 だからだというのだ。
「鏡合わせであるなら」
「闘うしかない」
「しかしそなたは決して害さぬ」
「わらわ達は同じなので」
「この世で只一愛おしい存在じゃ」 
 もう一人の丁はこのことは真顔で述べた、そこには悪意も邪気もなく純真に想っている気持ちが出ていた。
「どうして害する、この世を滅ぼし」
「わらわ達が世を去るまで」
「共にいようぞ」
「・・・・・・そうであっても人間も世界も滅んでは何になるか」
「憎いものなぞ滅ぼすのじゃ」
「それはならないです」
 あくまでと言ってだった。
 丁は深い眠りに入った、だがそれでもだった。
 目覚めても憂いがあった、だがそれを隠してそのうえで考えるのだった。もう一人の自分が何を考えどう動き自分はどうすべきかを。だが今は何も読めずわからず憂いを持ったままであった。


第四十七話   完


                 2023・10・8 
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