神々の塔
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第四十八話 仙人達その六
「むしろ日本みたいにな」
「夏に冷たいもんを飲む国の方がやな」
「実は少数派や」
「アイスコーヒーやアイスティーもな」
「日本から生まれてるっていうな」
「みたいやな」
こうした飲みもの達はというのだ。
「どうやら」
「そやからワインもな」
この酒もというのだ。
「欧州やとホットワインもな」
「あるな」
「日本やとあまり飲まれてへんが」
「ワインはな」
「そやな、熱燗で飲む人もな」
「少数派やな」
「そやな、ただ」
ここでだ、中里はこうも言った。
「泉鏡花さんはな」
「ああ、あの人な」
「あの人熱燗やったな」
その羅と施が応えた。
「夏でも湯豆腐でな」
「火を通したものしか食べへんで」
「お酒もやったな」
「熱燗やったな」
「沸騰させんとな」
中里は泉鏡花の飲み方を話した、尚彼は犬嫌いで有名だったがこれは狂犬病を恐れてのことだったという。
「飲まんかった」
「流石に夏それはな」
「幾ら何でもええわ」
「暑い時に熱いもん飲んでも」
「それが身体によおてもな」
「僕もや、まああの人は例外や」
当時でもかなり変わっていると言われていた。
「ほんまな」
「そやろな」
「そこはな」
「かなりの変人ともな」
そうもというのだ。
「言われてたしな」
「実際そやな」
「他にも逸話一杯あるしなあの人」
メルヴィルとトウェインも言った。
「蛸とか海老とか蝦蛄も食べんかったらしいな」
「変わった形の生きものも」
「どれも日本では広く食べられてるけどな」
「それでわい等も食べてるけどな」
「そんな人やった、お刺身もな」
この食べものもというのだ。
「食べんかったわ」
「それあかんわ」
綾乃は刺身を食べないと聞いて我がことの様に項垂れた。
「お刺身の美味しさわからへんって」
「綾乃ちゃんの大好物や死な」
「てっさのお話もしたけど」
他ならぬ河豚の刺身のそれをというのだ。
「他の魚介類のお刺身も」
「綾乃ちゃん大好きやな」
「お酒とめっちゃ合うから」
それ故にというのだ。
「お刺身食べられへんって」
「綾乃ちゃんとしては絶望するな」
「カルパッチョもあかんね」
「勿論な」
「それはあかんわ」
「蛸とか海老とかはそれ自体がな」
「うち泉鏡花さんにはなれへんわ」
またしても項垂れて述べた。
「なるんやったら他の人や」
「綾乃ちゃんやと若山牧水さんやな」
シェリルが微笑んで言ってきた。
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