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イベリス

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第百二十八話 酒も飲んでその三

「いてくれたら」
「それなら」
 咲は吐き出すだけ吐き出した、泣きながらそうした。そしてそれが終わってから咲は愛にこんなことを言った。
「じゃあ後はね」
「後は?」
「ひたすら飲む?」
「結構残ってるわね」
 愛は酒を見て言った。
「そうね。けれどもう言いたいことは」
「全部言ったわ」
 そうしたというのだ。
「それでね」
「すっきりしたのね」
「そうなったわ」
 ほっとした顔での言葉だった。
「もうね」
「それは何よりよ、じゃあね」
「それならなの」
「まだ残ってるかも知れないし」
「失恋のことが」
「だから残ってるかも知れない分は」
 それはというのだ。
「お酒でね」
「それでなの」
「洗い流すのよ」
 そうしろというのだ。
「いいわね」
「そうすることね」
「そうよ、だからね」
 それでというのだ。
「今はね」
「どんどん飲むのね」
「折角買ったし」
 酒をというのだ。
「ここにあるのはね」
「全部飲んで」
「そうするのよ」
「それじゃあね」
「それとね」
 愛はさらに言った。
「二日酔いになってもね」
「朝になのね」
「お風呂に入って」 
 そうもしてというのだ。
「それでね」
「すっきりとすることね」
「そうよ」
 そうしろというのだ。
「いいわね」
「それじゃあね」
「それにね」
「それに?」
「このお酒飲みやすいでしょ」  
 酒の話もした。
「そうでしょ」
「ええ」
 咲もそれはと答えた。
「飲んでもね」
「そうでしょ、コーラサワーってね」
「飲み心地はコーラそのもので」
「それでね」
 そのうえでというのだ。
「アルコール度もね」
「結構高くて」
「よく酔えるし」
 それでというのだ。
「だからね」
「飲むことね」
「もう飲んで」
 そしてというのだ。
「そのうえで酔って」
「洗い流して」
「忘れるのよ」
「完全に」
「そしてね」
「前に歩くことね」
「そうよ、だから飲んでね」
 言いつつ飲む愛だった。 
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