英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~
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第165話
~逆しまのバベル・中枢区画~
「なあああああああぁぁっ!?」
「”灰色のアルセイユ”だと……!?」
「障壁ごとバベルの壁を貫いた上”零の騎神”にも傷をつけるなんて、一体何なの、あの灰色のアルセイユは……!」
「”零の騎神”を攻撃した事から察するに、少なくても敵側ではないようだが……」
レボリューションの登場に”マキアス”は驚きの表情で声を上げ、”アガット”は信じられない表情で声を上げ、ぬいぐるみを持った少女――――――ナーディア・レインはレボリューションを見上げながら真剣な表情で呟き、ナーディアの傍にいた少年――――――スウィン・アーベルはレボリューションの事について考えていた。
「馬鹿なああああぁぁぁぁっ!?障壁ごとバベルの壁を貫くだとっ!?」
「どうやら向こうにとっても”灰色のアルセイユ”の登場は予想外だったみたいね。」
「つー事はまさか味方か!?」
一方イシュメルガ=リィンも驚きの表情で声を上げ、イシュメルガ=リィンの様子を見たサラは真剣な表情で呟き、”アッシュ”は信じられない表情で声を上げた。
「ピンポーン!大正解!そしてただいま、みんな!!」
「…………ぇ…………」
「ミリ………アム…………」
「生きて……帰ってきて……くれたのですか……?」
するとその時”ミリアム”が”Ⅶ組”の傍に現れて笑顔で話しかけ、”ミリアム”の登場にその場にいる全員が血相を変えている中”アルティナ”は呆けた声を出し、ユーシスは呆然とした様子で、”クレア”は信じられない表情で”ミリアム”を見つめて呟き
「ハッ、帰ってきたのは”ミリアム”だけじゃねぇぜ!!」
更に”クロウ”の声がその場に響いた後、レボリューションの格納庫から”オルディーネ”と”ヴァリマール”が現れて”エル=プラドー”の両脇に着地した。
「ク……ロウ……君……?」
「そ、それに…………!」
「あ………あぁ………ッ!」
「「リィン(教官)――――――ッ!!」」
”トワ”は思わず呆然とした様子で”オルディーネ”を見つめ、”ユウナ”は嬉しそうな表情で”クレア”は涙を流しながらそれぞれ”ヴァリマール”を見つめ、”アリサ”と”アルティナ”は嬉しそうな表情で声を上げた。
「ただいま、みんな!今まで心配をかけてすまない………今回の件が終わったら後で説明をさせてもらうよ。――――――ルーファスさん、事情はオリヴァルト殿下達から既に伺っています。ここからは俺達も加勢させてもらいます!」
「まさかアンタがⅦ組に協力する光景を目にする時が来るなんて、思いもしなかったぜ。」
「フフ、君にだけはそれを言われる筋合いはないと思うが………――――――それはともかく、君達をここまで運んできたあの”灰色のアルセイユ”は我々の味方だと判断していいのかね?」
”リィン”はその場にいる全員に自分達の帰還を伝えた後すぐに表情を引き締めてルーファスに加勢を申し出、”クロウ”の指摘に苦笑したルーファスはすぐに気を引き締めて”リィン”達に確認した。
「うふふ、そう判断してもらって構わないわよ。」
するとその時ルーファスの確認に答えたレンが転位魔術で”エステル”達の傍に現れ
「な………」
「ふええええええええっ!?」
「レ、レンが二人!?」
「あちらの”レン”は、今のレンよりは幼いようだけど………」
”自分自身の登場”に”レン”は絶句し、レンがもう一人現れた事に”ティータ”と”エステル”は信じられない表情で声を上げ、”ヨシュア”は困惑の表情でレン達を見比べた。
「初めまして、並行世界の皆さん♪クスクス、さすがの”レン”でも、この状況には心底驚いたようね♪」
「ハアッ!?並行世界ですって!?」
「い、一体何があって並行世界の方々がリィンさん達と一緒に………」
上品な仕草で挨拶をしたレンは絶句している”レン”を見つめて小悪魔な笑みを浮かべ、レンの挨拶を聞いた”セリーヌ”は困惑の表情で声を上げ、”エマ”は信じられない表情でレンを見つめた。
「今は悠長に説明している場合じゃないから、そういった細かい事は後にしてね♪」
「いや、全然細かい事じゃないでしょう!?」
”エマ”の疑問を笑顔で誤魔化したレンの答えにその場にいる全員が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中”ユウナ”が思わず突っ込んだ。
「君が”並行世界のレン”という事はもしかして、ヴァリマール達も並行世界のヴァリマール達なのか?」
「あら、中々鋭いわね。”機体自体はレン達の世界の騎神よ。”だけど、今あの2体に騎神達に宿っている意志は”そっちの金の騎神同様この世界の騎神達よ。”で、そっちの世界と違って”レン達の世界の騎神達は黒以外は消滅していないのよ♪”」
「え。」
「”黒以外の騎神達は消滅していない”という事はまさか……!?」
”ガイウス”の推測に感心したレンはある事実を伝え、その事実を知った”デュバリィ”は呆けた声を出し、ラウラが信じられない表情で声を上げたその時残りの騎神達とヴァイスリッターが次々と格納庫から出撃して”ヴァリマール”達の周囲に着地してゾア=ギルスティンと対峙した。
「セドリック……!?」
「あ………あぁ………またお会いする事ができるなんて………マスター――――――ッ!!」
テスタ=ロッサを目にした”クルト”は信じられない表情で声を上げ、”デュバリィ”は嬉し涙を流しながらアルグレオンを見つめて声を上げた。
「団……長………」
”フィー”は呆然とした様子でゼクトールを見つめたが
「あ~、感動している所悪いが、俺達の世界の今のゼクトールの起動者は猟兵王のオッサンじゃねぇぜ、妖精。」
「え………」
「ええっ!?い、今の声って……!」
「ランディッ!?」
「おいおいおい……!”俺が紫の騎神の起動者”とか、一体そっちの世界では何があってそんなことになったんだよ!?」
「というか何気に白い”神機”まで味方側として現れたけど……まさかとは思うけど、その”神機”にも操縦者がいるのかい?」
気まずそうな表情で答えたランディの声を聞くと”フィー”は呆けた声を出し、”エリィ”と”ロイド”は信じられない表情で声を上げ、”ランディ”は困惑の表情でゼクトールを見つめて声を上げた、ある事が気になった”ワジ”はヴァイスリッターを見つめて訊ねた。
「はい。この白い神機――――――ヴァイスリッターの起動者は私――――――エリゼ・シュバルツァーです。」
「そして私達の世界のエル=プラドーの起動者である私は兄リィン・シュバルツァーの妹の一人にして、双子の姉エリゼ・シュバルツァーの妹であるエリス・シュバルツァーです。」
「ええっ!?エ、エリゼちゃんが”神機”の起動者……!?」
「しかも”金の騎神”の”起動者”はこの世界には存在していないエリゼさんの双子の妹だなんて……!」
「ったく、そっちの世界ではどんな超展開があったか知らねぇが、そっちの世界のシュバルツァー達は俺達の世界の時よりもイージーモードだったみてぇだな。」
エリゼとエリスの説明を聞いた”エリオット”は驚きの表情で声を上げ、”クレア”は信じられない表情でエル=プラドーを見つめ、”レクター”は苦笑しながら呟いた。
「うふふ、レン達の世界はこちらの世界の時よりも戦力が圧倒的に充実していたからね♪そしてその”充実な戦力差”は騎神達だけじゃなく、”あの子”にも反映されているわ♪」
「あ、”あの子”……?」
「まさか………」
”レクター”の指摘に対して答えたレンの話のある部分が気になった”ノエル”は困惑の表情を浮かべている中、察しがついた”レン”が信じられない表情でレンを見つめたその時
「来て――――――”パテル=マテル”!!」
「……っ!!」
「パテル=マテルですって!?」
レンが得物である大鎌を掲げてパテル=マテルの名を呼び、それを聞いた”レン”は目を見開いて息を呑み、”エステル”は信じられない表情で声を上げた。すると格納庫からパテル=マテルが現れて騎神達の傍に着地した。
「なあっ!?あの機体は……!」
「3年前の”クロスベル動乱”で、クロスベルを解放する時にレンさん達を守る為に自爆して”神機”と相打ちになったレンさんの………」
「パテル………マテル………」
「レン…………」
「レンちゃん……」
パテル=マテルを目にした”ロイド”は信じられない表情で声を上げ、”ティオ”は驚きの表情で呟き、呆然とした様子でパテル=マテルを見つめる”レン”を”ヨシュア”と共に心配そうな表情で見つめた”ティータ”はすぐに決意の表情を浮かべてレンとパテル=マテルを見つめた。
「それぞれに思う所はあるだろう――――――だが、今はここに来た目的を果たす事に集中するのみだ!」
「エリュシオンですらも予言できなかった想定外のこの状況………今が絶好の好機よ!!」
するとその時”風の剣聖”――――――”アリオス・マクレイン”とエリュシオンの旧管理者――――――ラピス・ローゼンベルクがその場にいる全員に指摘し
「ああ!この想定外過ぎる状況、存分に活用させてもらおう!」
「計算なんてするヒマなんざ与えねぇ。思う存分イレギュラーを味わいな……!」
「お前はもう、”俺”じゃないという事をこの剣で示す……!」
ラピスの言葉にルーファスは力強く頷いて答え、”クロウ”は不敵な笑みを浮かべ、”リィン”は真剣な表情でゾア=ギルスティンを睨み
「アルノール王家の一員として……王位継承者として……そして、この世界の僕が犯した罪の償いの為にも、今この時だけこの世界の皆さんの力になりましょう……!」
「例え世界は違えど、黒である貴方には一切の容赦はしません。この世界の私に代わり、必ず貴方の野望は阻止します。」
「同じ兄様の妹として、この世界の”私”に代わり、この世界の兄様も支えさせて頂きます……!」
「私も兄様の妹の一人として、姉様と共にこの世界の兄様を支えます……!」
「世界は違えど、俺にとっての故郷の為にも、本気で行くぜ……ッ!」
「パテル=マテル、今回は騎神達のサポートに徹するわよ!」
「――――――!!」
更に並行世界の起動者達もそれぞれ決意の表情で声を上げ、レンはパテル=マテルに指示を出し、それぞれの騎神達はそれぞれの武装を構えた。
「す、凄い……!”黒”以外の騎神達全てが共闘する光景を目にすることができるなんて……!」
「まさに壮観だな………」
「ハッ、帰って来て早々、とんでもないモノを見せてくれるじゃねぇか、シュバルツァー!」
”黒”以外の全ての騎神達が共闘するというまさに”夢のような光景”を目にした”エリオット”は信じられない表情で呟き、”ガイウス”は呆けた表情で呟き、”アッシュ”は不敵な笑みを浮かべてヴァリマールを見つめた。
「行くぞ――――――ヴァリマール!!オルディーネ!!エル=プラドー!!テスタ=ロッサ!!ゼクトール!!」
「行きましょう――――――アルグレオン!!ヴァイスリッター!!エル=プラドー!!パテル=マテル!!」
「応ッッ!!」
「――――――!!」
そしてそれぞれの”相棒”に号令をかけた起動者達はゾア=ギルスティンとの戦闘を開始した!『巨イナル一そのもの』である”零の騎神”は”エリュシオン”による予知も活用している事でイシュメルガを越える強さではあったが、”リィン”達の帰還を始めとした様々な想定外の状況によってエリュシオンの未来演算は崩れた事で”リィン”達はその隙を逃さず、準起動者達とも協力して”零の騎神”を追い詰めた。
「何故だ……貴様ら如きに”エリュシオン”の予知を破れるはずが……!――――――!!」
ヴァリマール達に追い詰められた事で信じられない様子であったイシュメルガ=リィンはヴァリマール達の背後でそれぞれ武装を構えている準起動者達を含めたクロスベル解放勢力を目にして何かの違和感を感じると血相を変えた。
「このノイズ、まさか……!!」
違和感に気づいたイシュメルガ=リィンがゾア=ギルスティンに片腕を振るわせると、なんとクロスベル解放勢力は幻影のように消え失せた後コードで端末に繋がれているラピスとその周囲で端末を操作している”アリサ”、”ティータ”、”レン”、”キーア”、そしてラピス達を守るようにそれぞれの武装を構えたクロスベル解放勢力が姿を現した!
「気づかれたわ……!」
「ラピスさん、まだですか!?」
「あと少し――――――後少しであいつをエリュシオンから”切断”できる――――――!」
「旧管理者、貴様ぁああああ………!!!」
ラピス達の目的を知ったイシュメルガ=リィンは怒りの表情で声を上げてゾア=ギルスティンに武装の一つである弓矢を構えさせた。
「ちょ、ちょっと……!端末ごと吹き飛ばそうっての!?」
「さすがにあの攻撃は……!」
「逃げろ、お前ら――――――!!」
ゾア=ギルスティンの行動を見た”エステル”と”ヨシュア”は焦り、”アガット”がラピス達に警告をしたその時ゾア=ギルスティンはラピス達目掛けて矢を放った!ゾア=ギルスティンが放った矢はラピス達に命中するかと思われたが何とルーファスが駆る”エル=プラドー”がラピス達の盾となり、ラピス達の代わりに矢をまともに受けていた!
「な―――――」
「ルーファス!?」
矢が刺さり、地面に崩れ落ちた”エル=プラドー”を目にしたスウィンは絶句し、ラピスは心配そうな表情で声を上げて立ち上がろとしたが
「―――――続けたまえ!!」
ルーファスに制止の声をかけられるとその場で止まった。
「っ………それは君のやるべき事……君にしかできない事のはずだ……!ならば見せてみろ―――――君が”ラピス・ローゼンベルク”である証を!!」
そして致命傷を負いながらも痛みに耐えながら声を上げたルーファスの激励の言葉を聞くと再びその場で座って集中を始め
「パテル=マテル、リバイバルシステム起動!対象者はルーファス・アルバレア!!」
「―――――」
レンはパテル=マテルに”エル=プラドー”の中にいるルーファスへ治癒エネルギーを放つように指示をした。
「重層統制サーキット強制分離、メビウスモデルに介入――――――第三、第六、第七……リンククリア、凍結処理並びに認証阻害、解除――――――掴んだ!!」
「「「”エリュシオン”システム・切断――――――!」」」
再びその場で座って集中したラピスが”エリュシオン”への介入作業を終えると声を上げると端末を操作していた”ティオ”、”キーア”、”レン”も声を上げた。すると”エリュシオン”とゾア=ギルスティンとの繋がりは切断され
「おおおおおっ………!?」
”エリュシオン”の繋がりを切断されたゾア=ギルスティンは苦しみ始めた。
「今だ、リィン!!」
「行くぞ、クロウ!!」
それを目にした”リィン”と”クロウ”は必殺技をゾア=ギルスティンに叩き込んだ!
「「蒼覇・無想十文字!!」」
「ぐああああアアアアア……ッ!?リィン・シュバルツァーアアアアアァ……!」
”ヴァリマール”と”オルディーネ”によるコンビクラフトをまともに受けて苦しみの声を上げたイシュメルガ=リィンは怨嗟の声を上げながら”ヴァリマール”に斬りかかり
「ッ!」
「リィン!!」
「「兄様!!」」
イシュメルガ=リィンの行動に気づいた”リィン”はすぐに振り返って斬りかかるゾア=ギルスティンに攻撃を叩き込もうとした。するとその瞬間閃光が走り、目を開けた”リィン”は謎の空間――――――暁に染まった空間に立っていた。
~???~
「………ここ………は………」
自分が謎の空間にいる事に戸惑っていた”リィン”だったが気づくと白髪の長髪で金の瞳の”リィンと全く同じ容姿”の人物と対峙していた。
「……やあ、”俺”。こうやって面と向かって話すのは初めてだな。」
「……ああ。この場所は一体……」
???に話しかけられた”リィン”は戸惑いの表情で周囲を見回した。
「ここは”俺”の内面だ。ちなみに”ヤツ”はここにはいない。安心してくれ。」
「そうか――――――」
するとその時突如痛みを感じた”リィン”は片手で頭を抱えた。
「この痛み………」
「ああ、”同化”が始まろうとしている。リィン・シュバルツァーの因果はやがて一つに収束するだろう。」
痛みを感じている”リィン”に???が説明をしていると何と”リィン”の髪は再び白髪に染まり、更に瞳も片方が金色になっていた!
「不安に感じることはないさ。元々お前は、俺だからな。ただ………」
「それは――――――”イシュメルガ”を今の因果の俺が引き継ぐことを意味する。……そうなんだな?」
「……ああ。」
”リィン”の確認に対して???は重々しい様子を纏って頷いた。
「だがこれはある意味チャンスでもあるはずだ。」
「……どういうことだ?」
「”ヤツ”はお前との同化でこの世界に自身の存在を確定させてしまった。残滓でしかない俺ではもはや”ヤツ”をどうにかすることはできない。だが、お前ならできるはずだ。”ヤツ”と一体になったら、”ゾア=ギルスティン”の力を使え。そうすれば、女神の”枷”を解き、どこへでも行けるはずだ。”ヤツ”を引き連れて、大気圏外でも大陸の”外”へでも行けばいい。それでこの事件は解決する。」
「それは………」
「一度存在が確定したヤツを完全に消し去るには、もうそれしかない。人間の悪意は決してなくならない――――――イシュメルガもいつかは甦ってしまう。後の時代に問題を残さないためにも………俺は、俺だけはその決断ができるはずだ。」
「……………………」
???の指摘に対して”リィン”は何も答えず目を伏せて黙り込んだ。
「さあ、”同化”を受け入れろ………リィン・シュバルツァー。」
そして???が”リィン”に手を差し出して声をかけたその時”リィン”はふとかつての状況――――――”黒の騎神”の勝利後”呪い”に染まった”ヴァリマール”と共に幻想機動要塞から飛び去り、大気圏外へと向かった時の絶望の表情を浮かべたの”アリサ”達の様子を思い出した。
「いいや――――――それはできない。」
「!?なぜだ?これが”ヤツ”を封じる最も確実な方法なのはわかっているだろう!?いまさら自分一人の命が惜しいとでもいうのか?皆を助ける為には――――――」
決意の表情を浮かべた”リィン”の予想外の答えに驚いた???は真剣な表情を浮かべて”リィン”に指摘しようとしたが
「違うんだ、”リィン”。以前の俺は……そうやってずっと一人で抱え込もうとしていた。自分の身に何があろうとも他のみんなを救えればそれでいいって。でも、本当は救えてなかったんだ。――――――俺の事を思ってくれる……俺の為に泣いてくれる人達のことは。」
「………ぁ………」
「あの”黄昏”の引金を引いた俺なんかが幸せになってはいけないと思っていた……いや、今もどこかでそう思っているのかもしれない。でも、資格がどうこうの話じゃない。――――俺は幸せにならなくちゃいけないんだ。人は一人では幸せになれないから………そして、一人だけ不幸でいることもできないから………大切な人達に幸せになってもらうためには、まず俺が、幸せにならなくちゃダメなんだ。それが……帰ってきたばかりの今の俺にとっての、一番の目標かな。だからもう、一人で背負ったり、抱え込んだりしない。自分と大切な人達を、そしてまだ見ぬ仲間達を信じて前へ進む。たとえこれから先、再び強大な悪意が立ちはだかっても。俺達全員でなら、きっとより良い結末を勝ち取れるはずだって。」
「………そうか。それが”俺”の選んだ道だったんだな。どうやら俺はお前だが、お前は俺じゃないみたいだ。少し羨ましい気がするな………」
”リィン”の決意を知った???は呆けた後苦笑を浮かべて”リィン”を見つめた。
「……………………」
「いいだろう、だったら勝ち取ってみるといい。異なる世界で”ヤツ”を倒した”俺達”を知るお前達なら、きっと乗り越えられるはずだ。」
「ああ――――――任せてくれ。」
???の言葉に”リィン”は静かに頷いて答えた。
「そろそろ時間みたいだ。それじゃあな――――――リィン。」
「自分で言うのも変だけど……達者でな、リィン。」
そして別れの言葉を交わした”リィン”は全身が黒く染まり始めた???に抜刀からの一撃を叩き込んだ。するとその瞬間は元の状況――――――ゾア=ギルスティンと互いの攻撃を交わす瞬間に戻ると”ヴァリマール”がゾア=ギルスティンに一撃を叩き込んでいた!
~逆しまのバベル・中枢区画~
「オオオオオオォォォォォオオッ!!!」
”ヴァリマール”の一撃を受けた事でゾア=ギルスティンは暴走を始め、一方騎神達は力を使い果たしたのかそれぞれ地面に膝をついた。
「力が暴走しているのか……!!」
「しぶとすぎるっての……!不死身とか言わないわよね!?」
ゾア=ギルスティンの状態を”アリオス”は分析し、”エステル”は厳しい表情で声を上げた。
「………ああ、あと少しのはずだ……!」
するとその時”リィン”の声が聞こえると”騎神”達からそれぞれの起動者達が光に包まれて現れた。
「リィン……!!」
「その髪と瞳は――――――」
”リィン”達の登場に”アリサ”は声を上げ、”リィン”の髪と瞳の色が元に戻っている事に気づいた”ガイウス”は静かな表情で呟き
「っ………何とか”俺”を切り離せたみたいだ……!あとは”イシュメルガ”を倒せば……!」
「あ………」
「そういうことか……!」
”リィン”の説明を聞いた”エマ”は呆け、”ラウラ”は真剣な表情で声を上げた。
「―――――後は任せてくれ、リィン!」
「決着をつけてきます!」
「ルーファスの分まで……!」
「ご苦労様、パテル=マテル。後はレン達に任せて、貴方はゆっくり休んでいて♪―――――プリネお姉様!」
「わかっているわ、レン!私達全員、いつでも出撃可能よ!!
「貴方方も後は私達に任せて、休んでいてください。」
「わかりました……!後はお願いします、サンドロット卿……!」
「エルンスト、後は頼んだぜ……!」
「あいよっ!後は任せな、ランディ!!」
”リィン”に声をかけた”ロイド”と”ユウナ”、決意の表情を浮かべたラピスは仲間達と共に敵――――――”終焉のイシュメルガ”の元へと向かい、パテル=マテルに労いの言葉をかけたレンは通信機でプリネに通信をした後それぞれ疲労によって動けない起動者達の中で唯一まだ余力が残っている事で戦闘可能なリアンヌ、そしてランディが召喚したエルンストと共に”ロイド”達の後を追った。
「大陸ヲ………再創世スル………全テヲ”無”ヘト消エ去ルコトデ……!」
「滅茶苦茶言ってんじゃねぇ……!させるかよ、んなこと!!」
「リィンさん達が作ったチャンス、決して無駄にはしません!」
「私達を導いてくれたみんなの思いに応えてみせる………!」
「行くぞ――――――俺達の手で未来を掴むんだ!!」
「おおおおおっ!!!」
終焉のイシュメルガの言葉を聞いた”ランディ”は怒りの表情で声を上げ、”ティオ”と”エリィ”は決意の表情で声を上げ、”ロイド”は号令をかけた。そして”ティオ”と”エマ”は空中に戦闘可能なフィールドを具現化させて仲間達と共に終焉のイシュメルガの前に転位した。するとレボリューションのハッチが開き――――――
「―――――”灰獅子隊”並びに協力者一同、出陣!撃破対象はイシュメルガだ!!
「特務支援課、出動!並行世界の俺達の加勢をするぞ!!」
「紅き翼、戦闘開始!みんな、絶対に全員無事で乗り越えるよ!」
「みんな、行くわよっ!!」
「おおおおおっ!!!」
リィン、ロイド、トワ、エステルの号令に力強く答えた仲間達がハッチから現れて”ロイド”達と合流した。
「ええっ!?あ、”あたし達”!?」
「並行世界のレンの件があるからもしかしてとは思ったけ――――――ぇ………」
「レー………ヴェ…………」
「ふええええええええっ!?リベル=アークで亡くなったレーヴェさんまで生きているなんて……!」
「一体何がどうなってやがるんだよ……!?」
リィン達の中にいるエステル達を見つけた”エステル”は驚き、ヨシュアを見つめながら信じられない表情で呟いた”ヨシュア”はある人物――――――レーヴェに気づくと”レン”と共に呆けた表情でレーヴェを見つめ、”ティータ”はレーヴェを見つめながら驚きの表情で声を上げ、アガットは困惑の表情で声を上げた。
「ええっ!?ティ、ティオちゃんに翼が……!?」
「そ、それにシスターの貴女はまさか………――――――キーアちゃん!?」
ティオの漆黒の翼を目にした”エリィ”は驚きの表情で声を上げ、キーアに気づいた”ノエル”は信じられない表情でキーアを見つめながら声を上げた。
「ふふっ、どうやら見た所”そちらの私や姫様達”は今の私達よりも年齢が数年下である事を考えると、”そちら”は私達の世界とは相当異なる部分が色々とあるのでしょうね?」
「勿論ですわ。――――――例えば私達の世界の私は数多く存在しているリィン総督閣下の婚約者の一人ですわよ♪」
「ハアッ!?ミュゼが教官の婚約者の一人って……というか、教官にたくさん婚約者がいる事もそうだけど、教官が”総督”って一体どういう事!?」
”ミュゼ”は苦笑しながらミュゼを見つめて呟き、その言葉に対して答えたミュゼの答えを聞いた”ユウナ”は困惑の表情で声を上げてリィンやミュゼを見つめ
「うふふ、ちなみにわたくしもミュゼ同様リィンさ――――――いえ、”ご主人様”が侍らす女性の一人ですわよ♪」
「ちょっ!?今はそんな事を言っている場合じゃないだろう、ミュゼ、アルフィン!」
「なあっ!?リ、リィンが皇太女殿下をよ、呼び捨てに……!」
「しかも”皇太女殿下に主呼ばわりされている”とは、どうやら”そちらのリィン”は色々と興味深い事実があるようだな。」
「………まあ、知らなかった方がよかったと思う事実もあるがな。」
「全くもってその通りだな。」
「……どうやらそちらのリィン教官は不埒な部分が相当強化されているようですね。」
「その点については否定できませんね。」
アルフィンはミュゼの説明に悪乗りし、二人の話を聞いたリィンは表情を引き攣らせて二人に注意し、リィンがアルフィンを呼び捨てで呼んでいる事に”マキアス”は驚きの表情で声を上げ、自分を苦笑しながら見つめて指摘した”ユーシス”の言葉に静かな表情で答えたユーシスに続くようにマキアスも疲れた表情で頷き、ジト目で呟いた”アルティナ”の言葉にアルティナもジト目で肯定した。
「やあ、初めましてになるかな”風”の方の食えない兄弟子。これで”もう一人の食えない兄弟子”もここにいれば、騎神達の時のように老師の弟子全員勢ぞろいによる夢の共闘もありえたかな。」
「俺を”兄弟子”だと……?…………フッ、老師も人が悪い。まさか”剣聖”の”妹弟子”がいる事を黙っていたとは。」
「姫の実力を一目で見抜くとは世界は違えどさすがは音に聞こえし”風の剣聖”でござるな。」
片手を挙げて呑気に挨拶をしてきたシズナの挨拶に眉を顰めた”アリオス”はシズナの正体をすぐに悟ると苦笑し、”アリオス”がシズナの実力を見抜いたことにクロガネは感心していた。
「リィン・シュバルツァーやパテル=マテルのようにこの世界とは様々な異なる”因果”の俺達の世界ではリベル=アークで死なず、結社を抜けて生まれ変わったカリンと共に新たな道を歩んでいる俺もいる――――――それだけの話だ。」
「ぇ………姉さん……が……?」
「あ、あんですってー!?カリンさんが生まれ変わったって、一体どういう事!?」
「色々と気になる事はあるでしょうけど、今は戦いに集中しなさい!それよりも、”あたし達”なんだから当然遠慮は無しでいいのよね!?」
レーヴェの口からた語られた自分達にとって驚愕の事実を知った”ヨシュア”は呆然とし、”エステル”は驚きの表情で声を上げ、その場にいる全員に戦闘に集中するように注意をした”サラ”はサラを見つめて確認した。
「ええ!あたし達もあたし達の世界に無事に帰る為にそいつは倒す必要があるから、遠慮や自重もするつもりは一切ないから安心していいわよ!」
「そもそもサラに”遠慮”とか”自重”なんてできないし。」
「さすが”わたし”。わたしも全く同じ意見だね。」
「「そこ、うっさいわよ!!」」
並行世界の自分自身の確認に対して力強く答えたサラの答えに指摘したフィーの言葉に”フィー”は同意し、二人のサラはそれぞれのフィーに注意し、その様子にその場にいる全員は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。
「ハハ………エステル、ロイド、プリネ皇女殿下。」
「ええ!」
「ああ!」
「はいっ!」
苦笑した後気を取り直したリィンに声をかけられたエステル、ロイド、プリネはそれぞれ力強く頷いた後それぞれの使い魔達を召喚した。
「来い――――――メサイア、ベルフェゴール、アイドス、ユリーシャ、レジーニア、ベアトリース、アンリエット、ルシエル!!」
「おいで――――――パズモ、永恒、テトリ、ニル、カファルー、クーちゃん、フェミリンス!!」
「頼む――――――ルファ姉、ギレゼル!!」
「お願い――――――メヒーシャ!!」
「お願いします――――――ラグタス、ラテンニール!!」
「来て――――――ペルル、アムドシアス、フィニリィ、パラスケヴァス!!」
「ええっ!?な、何なのその人達は~!?」
「まさか………”使い魔”!?」
「ハアッ!?って事はあの連中は黒猫と同じ存在かよ……!?」
「亜人、妖精、悪魔、天使……どの種族も”この世界には存在していないはずの空想上の存在――――――幻想種”です……!」
リィン達が召喚した使い魔達の登場に並行世界の面々がそれぞれ驚いている中”エステル”は困惑の表情で声を上げ、信じられない表情で声を上げた”セリーヌ”の言葉を聞いた”アッシュ”は困惑し、”エマ”は驚きの表情で使い魔の面々を見回し
「しかも何気に大型の魔獣やツァイトの”同胞”以外の竜まで”使い魔”として現れるとはね……どうやらそっちの世界は中々面白い世界になっているようだねぇ?」
「フフ、こんなの序の口だよ?リィン総督が呼んだ夕焼け色の髪の女性とエステルが呼んだ金髪の女性は”異世界の女神”だし、僕達の世界では”本物の空の女神”まで降臨して、”碧の大樹”の攻略や”巨イナル黄昏”の解決に協力してくれたからねぇ?」
「ええっ!?い、異世界の女神様ぁっ!?」
「しかもそちらの世界では”本物の空の女神”まで降臨して”碧の大樹”や”巨イナル黄昏”の解決に協力してくれたとは………ふふっ、”本物の空の女神”を目にした事があると思われるそちらのオレ達が少し羨ましくなってきたな。」
興味ありげな表情でリィン達が召喚した使い魔の面々を見回した”ワジ”は口元に笑みを浮かべてワジに問いかけ、その問いかけに答えたワジの説明を聞いた”エリオット”は驚きの表情で声を上げ、”ガイウス”は目を丸くした後静かな笑みを浮かべてガイウスを見つめた。
(エイドス様達の事を並行世界のオレ達にも教えるべきだろか?)
(止めた方がいいわよ………私達の時みたいに、空の女神に抱いていたイメージが粉々に破壊されるから。)
(それにボク達が黙っていても、どうせエイドスの方からバラすと思うからね~、ニシシ♪)
並行世界の自分に羨望の眼差しで見つめられたガイウスは気まずそうな表情を浮かべて仲間達に小声で問いかけ、ガイウスの問いかけにアリサはジト目で答え、ミリアムはからかいの表情で指摘した。
「も~、今は並行世界の人達の事を気にしている場合じゃないよ~!」
「来るぞ――――――構えろ!!」
するとその時ナーディアが呆れた表情で指摘し、スウィンが警告し
「「行くぞっ、みんなっ!!それぞれの未来を掴む為に!!」」
「おおおおおっ!!!」
二人のロイドは互いに視線を交わして頷いた後号令を再びかけ、その号令に力強く頷いた仲間達は戦闘を開始した!終焉のイシュメルガは手強かったが、同じ存在同士による連携や異種族達の協力によって誰も窮地に陥る事なく、終焉のイシュメルガを追い詰めていた。
「決めるよ、ツーヤちゃん、セレーネちゃん!」
「うん!」
「はいっ!」
「「「ハアアアアアアアアァァァァ………!グオオオオオオオオオォォォォ――――――ッ!
ミントの呼びかけにツーヤとセレーネは力強く頷いた後それぞれ竜化し
「ええええええええっ!?ひ、人が竜に変身した……!?」
「まさか”竜人”だったなんて……」
竜化したミント達を目にした”エリオット”は驚きの表情で声を上げ、”エマ”は信じられない表情で竜化したミント達を見つめた、竜化したミントは炎のドラゴンブレスを、ツーヤは吹雪のドラゴンブレスを、そしてセレーネは雷光のドラゴンブレスを終焉のイシュメルガ目掛けて放ち、3体が放ったドラゴンブレスは螺旋を描きながら合体して凄まじいエネルギーのブレスと化して終焉のイシュメルガを襲った!
「「「ツヴァイスパイラルブレス!!!」」」
「ガアアアアアアアアア………ッ!!??」
凄まじいエネルギーのブレスをまともに受けてしまった終焉のイシュメルガは悲鳴を上げながら怯み
「好機!行くぞ、シズナ!」
「了解!」
「私達も行きましょう、エステルさん!」
「オッケー!」
終焉のイシュメルガの様子を見たリィンとシズナ、エイドスとエステルはそれぞれコンビクラフトを発動した。
「「相ノ太刀・黒葉十文字斬!!」」
「「その身に刻みなさい!!」」
リィンとシズナのコンビクラフトが終わると神剣を構えたエステルと神槍を構えたエイドスが終焉のイシュメルガを十字するように攻撃を叩き込んだ後、終焉のイシュメルガの周囲にそれぞれ3本ずつの神槍を召喚して終焉のイシュメルガを貫かせて終焉のイシュメルガの動きを封じ込め
「たあっ!」
「ハアッ!」
終焉のイシュメルガの動きを封じ込めた二人はそれぞれ跳躍して自身の背中に翼を具現化させた。
「おいおいおい、何なんだよアレは……!?」
「へ、並行世界のエステルお姉ちゃんに翼が……!」
「……………………」
エステルが背中に具現化させた翼を目にした”アガット”は困惑の表情で声を上げ、”ティータ”は信じられない表情を浮かべ、”エステル”は口をパクパクさせた。一方翼を具現化させた二人はそれぞれ異空間から神槍を取り出して突撃の構えをし
「「双神技!クロス・ヴァレスティ!!」」
「ぐぎゃあああああああ………ッ!?」
それぞれ終焉のイシュメルガ目掛けて空から地上へと斜め突撃をして終焉のイシュメルガに十字を刻み込み、更に追撃の大爆発を起こした。悪意の塊である終焉のイシュメルガにとって”浄化”の力もある神技は天敵である為、苦しみの声を上げながらダメージを受けていた。
「これで決めるぞ!」
「ああ!!」
そして互いのロイドは互いに視線を交わした後同時に同じSクラフトを放った。すると二つの竜の頭はの闘気は合体して双頭龍の頭の闘気となって、終焉のイシュメルガをかみ砕き、大爆発を起こした!
「「デュアル・ライジングサ――――――ンッ!!」」
「アアアアアアアアァァァァ――――――ッ!?」
止めに放たれたコンビクラフトと化したロイド達のSクラフトによるダメージで限界が来た終焉のイシュメルガは全身に光を放って、悲鳴を上げながら暴れていた――――――
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