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汚物には蠅

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第一章

                汚物には蠅
 その労働組合は組合の中でも評判が悪かった。
「あそこは駄目だ」
「絶対に関わるな」
「最近労働組合は色々言われているが」
「あそこは特に酷いぞ」
「腐りきっている」
「関わったら終わりだ」
 心ある者は口々にこう言ってだった。
 その組合と関わろうとしなかった、その話を聞いてだ。
 フリージャーナリストの平長宗一六五位の背で痩せた身体に細面で糸の様な目と薄い唇を持つ彼は仕事仲間に尋ねた。
「全労革か」
「ああ、全国労働革命連合な」
 仕事仲間は彼にその組合の正式な名称を話した。
「元々はその時の野党の左派の系列のな」
「組合だったんだな」
「そうだったけれどな、今はな」
「今の野党をか」
「支持してるさ、けれど今の野党は知ってるだろ」
「どんどん酷くなってるな」  
 平は仲間に眉を顰めさせて答えた。
「本当に」
「もう運動家の政党だよな」
「自分達は市民の政党とか言ってるけれどな」
「その今の野党の過激な連中をな」
「支持してるんだな」
「そりゃ酷いものさ、それでその全労革をか」
「ちょっと調べてみようと思ってるんだ」
 平はこう言った。
「実はな」
「そうか、正直かなり酷いらしいけれどな」
「だからどれだけ酷いかだよ」
 仲間に居酒屋の個室の中でビールを飲みつつ話した、二人でビールを飲み枝豆やだし巻き玉子を食べつつ話している。
「確かめるんだよ」
「そうするか」
「ああ、それで記事にするな」
「じゃあ頑張れよ」
 仲間は枝豆を食べつつ平に言った、平は次の日から早速この組合について調べはじめた。元組合員や他の組合の情報に詳しい者から話を聞いてだ。
 所属している者からもこっそりと話を聞いた、すると彼は聞けば聞く程顔を顰めさせそのうえで情報提供者に言った。
「それ本当ですか」
「本当ですよ」
 その提供者は真顔で答えた。
「元過激派ばかりで」
「極左運動家の巣窟ですか」
「もう幹部なんかまともに出社しないで」
 それぞれが所属している企業にというのだ。
「事務所に入り浸って」
「活動ばかりしていますか」
「それでその活動が」
 それはというと。
「組合がする様な労働争議じゃなくて」
「賃金とか労働時間とかですね」
「待遇とかの話じゃなくて」
 そうしたことを話さずにというのだ。
「自分達が会社の方からどう金を巻き上げるか」
「そんな話ばかりですか」
「それで自分達の懐に入れて」
 会社からそうして手に入れた金をというのだ。 
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