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鰻と椰子

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第一章

                鰻と椰子
 オセアニアに伝わる話である。
 引き締まった身体に端整な細面と豊かな黒髪と髭のない整った顔を持つマウイは英雄神として神々の間で知られている。
 そのマウイは女神ヒナに想いを寄せていた、ヒナを見るだけでだった。
 マウイは心躍った、それで友人である神々に話した。
「俺は絶対にだ」
「ヒナと結婚するか」
「そうするんだな」
「絶対にな」
 波立つ豊かな黒髪に切れ長の睫毛の長い目に褐色のきめ細かな肌に見事なスタイル、形のいい顎と奇麗なピンクの唇を持つ彼女のことを想い言うのだった。
「そうするぞ」
「そうか、しかしな」
「ヒナは鰻の神トゥナも好きだぞ」
「トゥナは強いぞ」
「お前でも勝てないかもな」
「いや、トゥナも好きならだ」
 マウイは友人達から言われ即座に答えた。
「あいつと決闘をしてだ」
「そうしてか」
「どちらがヒナと結婚するか決めるか」
「そうするか」
「そうするぞ」
 こう言うのだった、そしてだった。
 鰻の頭に人間の身体を持つトゥナの海中にある家に行って彼に決闘を申し出た、すると鰻の神もそれならと応えた。
「俺もヒナが好きだ」
「だからだな」
「お前と決闘をして相手を決めるならな」
 それならというのだ。
「それでいい、ただしだ」
「お前は強いと聞いている」
「お前よりも強いかもな」
 マウイに腕を組み自信に満ちた顔で答えた。
「俺は」
「俺も強いぞ」
「そうだな、ならお互いだ」
「強いもの同士でな」
「決闘をしよう、勝った方がヒナを妻にする」
 トゥナはこのことについても言った。
「そしてだ」
「まだあるか」
「負けた方は人間達に一つ恵みを与えないか」
 トゥナはこうも提案した。 
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