その時流れが変わった
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第五章
老人も他のファン達も固唾を飲んで見守った、あとスリーアウトであり。
ツーアウトまできた、マウンドに立つ岩崎は一点こそ頓宮のホームランで返されたが最早流れは確かだった。
阪神は勝った、この瞬間日本中が黒と黄色になった。
「やった!」
「日本一や!」
「あれのあれや!」
「ほんまにやったで!」
「三十八年ぶりや!」
「やっと日本一になったで!」
「ほんまあの時やったな」
皆喜びを爆発させ中には泣いている者もいた、老人も泣いていて。
そしてだ、仲間達に言った。
「思えばほんまな」
「ああ、湯浅やな」
「四戦目で出て来たのが大きかったな」
「五戦目でも出てきて」
「ほんま流れ変わったな」
「抑えてくれて」
「そうや、ほんまあの時でや」
湯浅が出て抑えてというのだ。
「流れが変わったわ、駆けやったかも知れんが」
「その賭けが当たって」
「見事な」
「阪神が勝ったな」
「日本一になったな」
「ほんまシリーズは短期決戦でな」
そうであってというのだ。
「ちょっとしたことでや」
「流れが変わるな」
「采配の一つで」
「ミスがあっても」
「誰かが頑張ってもな」
「それでどんでんの采配でや」
湯浅投入でというのだ。
「湯浅が抑えてな」
「それでやな」
「ほんまシリーズの流れが変わったわ」
「阪神のものになったわ」
「まさにな」
「そうなったわ」
「大きかった、阪神はそれで日本一になった」
老人は喜びの中で言った。
「そうなったわ、いやほんまよかった」
「そやな」
「いや、よかった」
「どんでんの名采配やったな」
「そして湯浅の力投やったな」
「そやった、それでや」
老人は仲間達に涙を拭きながら話した。
「これから飲みに行くか」
「ああ、そうしよか」
「明日月曜やけどな」
「仕事やけどな」
「三十八年ぶりやしな」
「折角の日本一やしな」
「祝わへんとどないするねん」
ファンならというのだ。
「それこそな」
「ネットのライブ観たら道頓堀飛び込んでるわ」
「そうしてるわ」
「それ見るとな」
「わし等もお祝いせんとな」
「飲まずにいられんわ」
「今日はな」
阪神が日本一になった日はというのだ。
「そやな」
「ああ、ほなな」
「今から難波に繰り出すか」
「もう大阪中凄いことになってるな」
「阪神日本一になったからな」
「そうなってるな」
「その中に入ろうな」
歓喜の渦、その中にというのだ。
「今から」
「そして飲んで食べて」
「楽しもうな」
「そうしよな」
満面の笑顔で話した、そうしてだった。
老人は難波の街に向かった、そこで阪神の日本一を心ゆくまで楽しんだ。その時の酒と肴は三十八年ぶりの美味さだった。
その時流れが変わった 完
2023・11・27
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