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魔法戦史リリカルなのはSAGA(サーガ)

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【プロローグ】新暦65年から94年までの出来事。
 【第3章】SSXの補完、および、後日譚。
   【第6節】背景設定3: 管理局の歴史とその諸制度について。(前編)



 まず、「執務官制度」は、〈時空管理局〉の創設とともに始まりました。
 それ以前の〈九世界連合〉の時代の反省を踏まえ、「広域捜査官」の上級職として新たに創設されたのです。
〈九世界連合〉は、まだ組織としての求心力が弱く、九つの世界の間では、まだ充分な連携(れんけい)が取れていませんでした。
 そのため、魔導師たちはそれぞれの世界で、あたかも当然の権利のように、連合全体の利益よりも「自分たちの世界」の利益やメンツの方を優先させており、他の世界から来た者たちに対しては可能な限り非協力的な態度を取ることが「当たり前」になってしまっていました。
 結果として、複数の世界にまたがる案件を担当する「広域捜査官」という役職は、「存在」はしていましたが、決して「充分に機能」はしていませんでした。どの世界へ行っても、現地の捜査官たちの協力がなかなか得られなかったからです。
 広域捜査官とは、文字どおり、基本的には「捜査権」しか持っておらず、法的には『あからさまに非協力的な現地の魔導師たちに対して、それでも自分の指示に従うように「命令」する』という権限が無かったのです。

『だが、このままでは、これからますます増えて行くであろう広域犯罪に対して、充分に対処することができない』

 そうした危機感から、賢明なる「管理局の創設者たち」は、新たに「執務官制度」を創設しました。
 すなわち、執務官とは、事件の捜査から現場の指揮・犯人の確保・場合によっては刑の執行までを、すべて単独でこなす権限を持った役職であり、当然ながら、状況次第では単独でも個々の案件を解決することのできる「万能型の魔導師」だけが、この役職に就くことを許可されました。
 こうして、管理局創設の翌年、ミッド旧暦466年に、執務官制度は始まったのです。

【なお、公式の設定では、『執務官には大きく分けて、特定の部署に所属してその法務全般を担当する「内勤派」の執務官と、特定の部署には所属せずに個々の事件を専任で担当・指揮する「独立派」の執務官の二種類がある』ということになっているようですが、この作品では、基本的に、後者だけを「執務官」と呼ぶことにします。
 と言うか、最初から前者のような仕事だけをしている人は、ただ単に「法務官」で良いのではないでしょうか?

 そこで、この作品では「プロローグ 第1章」で、クロノがなのはとフェイトに語ったとおり、『大半の執務官は、若いうちは「外回り」の執務官として幾つもの世界を巡ってさまざまな案件を処理し、(とし)を取ってそれが身体的にキツくなってからは(標準的には、55歳ぐらいで)本局や各々の世界の地上本部で「内勤」に転向する。内勤の執務官の仕事内容は、法務官のそれとほぼ同じである』という設定で行きます。
 また、この作品では、物語の都合上、『執務官試験も補佐官試験も「年1回」で、どの世界でもおおよそ10月前後に実施される』ということにしておきます。】

 ちなみに、旧暦末の〈統合戦争〉の時代には、執務官はまだ決して「花形」の職業ではなく、時には「事実上の暗殺」のようなヨゴレ仕事を引き受けさせられることすらあったのですが、旧暦の時代が終わる頃になってようやく脚光を浴びるようになりました。
 また、執務官は、最初から「万能型の魔導師」であることが前提なので、当初は補佐官について特別の規定はありませんでした。
 当然ながら、「補佐官に対する給与」についても特に規定が無かったため、当初は身内を補佐官にする執務官が圧倒的に多かったそうです。
 執務官の(基本給以外の)特定の案件に対する「成功報酬」は、当初から「一括払い」とされていましたが、後に、補佐官の取り分は「標準的には、成功報酬の20%とする。最低でも15%は保障し、最高でも25%を限度とする」と明文で規定されました。
 つまり、執務官が報酬の半分以上を取ろうと思うと、補佐官は最大でも三人が上限となる訳ですが、後に、実際には「一人、もしくは二人」が標準となりました。
(当初は、管理局の〈上層部〉の側にも、なるべく補佐官の人数は制限しておきたいと考える傾向があったのです。)

 その代わりに、執務官には補佐官を自由にスカウトできる権限が保証されていました。管理局員で あれば(士官を除いて)誰でも自由に採用でき、『特定案件に限っての臨時採用であっても構わない』と規定されました。
(実際、〈マリアージュ事件〉において、ティアナも最初のうちは、検死官のルネッサ・マグナスを「この案件に限っての、臨時の補佐官」とするつもりでいました。)

【なお、当初は、執務官自身のプライドの問題もあって、補佐官はあくまでも雑務が担当であり、大半の場合、現場の戦闘行為は執務官が単独で(おこ)なっていたのですが、後に、「もっぱら現場仕事を補佐するタイプ」の補佐官も登場しました。】

 ところが、〈マリアージュ事件〉では、何と「臨時の補佐官」が真犯人でした。
 管理局の〈上層部〉はこの一件によって、執務官の「補佐官制度」を抜本的に見直し、翌79年度には早くも「新たな法制度」を施行します。
(以前から、「試案」としてはそれなりに考えられていたのですが、実際にこのような事件が起きるまでは、『特に急ぐ話でも無いだろう』と思われ、ずっと先送りにされ続けていたのです。)

 この新制度によって、80年度からは、ウェンディやフェネイザ(後述)のような「特例措置」を除いて、新たに補佐官になるには「補佐官試験に合格していること」が必須の条件となりました。
(つまり、執務官であっても、もう補佐官を自由にスカウトすることはできません。)
 もちろん、その試験に際して、今まではティアナの時のように「考査試験」(主に筆記試験)を受けるだけで充分だったのですが、これからは「本人の思想信条や背後関係」なども(執務官試験と同様に)綿密に調査され、ルネッサのような「思想的に問題のある人物」は『成績には関係なく落とされる』という仕組みになります。

 また、この制度改革に(ともな)い、執務官の補佐は、まず二種類にきっぱりと分けられました。
 戦闘行為には参加しないことを前提とした「事務担当補佐官」と、逆に、参加することを前提とした「現場担当補佐官」です。
 このような区分は、以前から「現場の慣習」としては存在していたのですが、今回の制度改革ではそれを正式に法制化し、試験の内容も互いに別々のものとしました。
 具体的に言うと、事務担当補佐官用の「第二種補佐官試験」には「魔法実技」の科目が無い代わりに、法律関連の科目などは現場担当補佐官用の「第一種補佐官試験」よりもむしろ難しい内容に(執務官試験と大差が無いほどの内容に)なっています。
(そのため、必ずしも『第二種の方が簡単だ』とまでは言い切れません。)

 また、将来的に執務官を目指すのであれば、当然ながら「現場担当補佐官」としての経験を積んでおいた方が次の執務官試験で有利になりますが、必ずしも「現場担当補佐官志望者」のすべてが将来的に執務官まで志望している訳ではないようです。
 そこで、管理局の〈上層部〉は検討を重ねた結果、「第一種補佐官試験」をさらに、空戦スキル必須の「第一種・甲類」と空戦スキル不要の「第一種・乙類」とに分けることにしました。
 これによって、以後、執務官まで志望している訳ではない一般陸士たちは、もっぱらこの「第一種・乙類」の方へと流れて行くことになります。

 局としては、執務官の「質」を下げる訳にはいかないので、執務官試験それ自体は今までどおりの「狭き門」にしておかなければならなかったのですが、その一方で、『次元航行部隊の戦力増強が今ひとつ思うようには進んでいないので、次元世界全体の治安維持のため、せめて執務官勢力の戦力増強を図りたい』という思惑があったのです。
 要するに、〈上層部〉としては、個々の執務官にもっと「乙類の現場担当補佐官」の人数を増やして、手広く活動してほしかったのですが……そのためには、どうしても報酬の規定に関する法律を変更する必要がありました。
 しかし……例えば、『人数に合わせて、成功報酬を増額する』という制度にしてしまうと、今度は、執務官たちが、みな必要以上に補佐官の頭数(あたまかず)だけを増やしてしまう可能性(おそれ)があります。
 そうした懸念もあって、この法改正には、さらに幾年もの歳月を要したのでした。

 ちなみに、補佐官を経験してから執務官になる者の数は、60年代から少しずつ増え始めていたのですが、上記の制度改革によって、80年代以降は、ついにそれが過半数となり、いきなり執務官になる人の方がむしろ少数派となってしまいました。
 また、補佐官の経験がある執務官は、独立後も補佐官時代の上司(執務官)のことを「師匠」と呼び、その師匠も、かつては自分の部下(補佐官)だった執務官のことを「弟子」と呼びます。
 そうした「師弟関係」は一生(いっしょう)続くものですが、それだけに師匠の側の責任は大きく、『執務官志望の補佐官を育成する』という作業は、相当な経験と実績のある執務官でなければ、なかなか上手(じょうず)にできることではありません。
 実際のところ、〈次元世界〉広しと言えども、弟子が通算で五人も六人もいるのは、「炎の英雄」ラウ・ルガラート執務官ぐらいのものでしょう。


 なお、「時空管理局の組織図」としては、あくまでも〈上層部〉の下に、〈本局〉と「個々の管理世界の地上本部」とが、「横並びで」存在しています。
 しかし、〈上層部〉は、物理的な現実としては、「今では〈本局〉と呼ばれている巨大構造物」の内部に存在しており、両者の人的な交流も活発なので、『多くの業務において、〈上層部〉と〈本局〉は必要以上に緊密に結びつきすぎてしまっている』というのが、実情です。

【時空管理局における「本局」と「地上本部」の関係は、公式には今一つ判然としないのですが、どうやら「地上本部」はそれぞれの管理世界に互いに独立した形で存在しているようなので、この作品では、両者の関係を「アメリカ合衆国におけるFBI(連邦警察)と州警察の関係」のようなものだと考えておくことにします。
 現実に、『個々の州警察の側には強固な「縄張り意識」があるため、FBIとの仲は決して良好ではない』という話ですから、この作品でも、『時空管理局で、〈本局〉と各世界の地上本部との仲があまり良くないのは、もっぱら個々の地上本部の側に強固な「縄張り意識」があるからだ』ということにしておきます。】

【また、執務官は全員、原則としては「上層部直属」であり、特定の部署には所属していません。ただし、新人のうちは、もっぱら〈本局〉の「運用部・差配課」から仕事を受ける形になります。
(運用部の本部長は、もう長らくレティ提督が務めており、彼女はその地道な功績によって、新暦82年には同じ役職のまま、55歳で少将になりました。)】

 さて、管理局の〈上層部〉は、ごく大雑把に言うと、「司令部、参謀部、法務部、査察部、財務部、文書部、報道部、総務部」の8部門から成り立っています。
 現在は〈元老〉が空席なので、司令部の実態は、「総代」を中心とする「中央評議会」そのものであり、これは、中将以上の階級を持つ局員の中から選ばれた30名の「評議員」から成る、管理局の最高意思決定機関です。
 次に、参謀部の長官は「参謀総長」と言います。
(参謀部のことを「統合幕僚監部」と呼んでいた時代の名残(なご)りで、ミゼットのような「かつては参謀総長を務めていた元老」の称号は「本局統幕議長」となります。)
 情報を集めて精査し、計画を立案して司令部に具申するための部署ですが、司令部の判断を仰ぐまでもない案件に関しては、そのまま他の部署に命令を出すこともできます。また、執務官もみな「形式的には」この部署で統括(とうかつ)されています。
(以下、略。)

 また、〈本局〉の組織は同様に「情報部、運用部、技術部、教導部、次元航行部、古代遺物管理部、広域捜査部、特定問題対策部、医療部、保管部、環境部、総務部」の12部門から成り立っています。
 まず、情報部は諜報活動や情報の記録管理などを主な仕事としており、〈上層部〉の参謀部とも緊密に連携を取り合っています。
(一般的には、独立した存在のように扱われている〈無限書庫〉も、組織としてはここに属しています。)
 また、運用部は非常に手広く、人員や艦船や資材などの円滑な運用を本務としており、運用部の本部長には常に相当な手腕が要求されます。
 技術部は「技術開発部」と呼ばれることもありますが、次元世界における管理局の優位性を維持するためには、必要不可欠の部署であり、最新型の次元航行船の建造なども、しばしばこの部署が担当しています。
 教導部は、各管理世界における各種訓練校の監査なども行なっていますが、最も有名な部署は、やはり、高町なのは一等空尉も所属する「航空戦技教導隊」でしょう。

 次元航行部は、文字どおり次元航行部隊と各種の武装隊を指揮しており、内容的には、かつての「海軍」そのものです。
 古代遺物管理部は、捜査課・機動課・保管課・総務課から成り立っており、かつての機動六課も組織としてはここに属していました。
 広域捜査部は、文字どおり多数の広域捜査官を統括(とうかつ)し、彼等を組織的に運用する部署です。
 特定問題対策部も、全く文字どおりの組織で、新暦81年の特務六課も組織としてはここに属していました。
 医療部・保管部・総務部は、特に説明の必要も無いでしょう。
 最後に、環境部は各世界の自然環境の調査や保全を目的とした部署であり、実は、個々の世界における「自然保護隊」も、現地の「地上本部」にではなく、〈本局〉のこの部署に属しています。


 また、話は変わりますが、管理局の規定によれば、「将軍」には明文で幾つかの「将軍特権」が認められています。
 中でも最大の特権は、『個々の将軍は、固有戦力として相当な規模の「直属の部隊」を保有することができる』というものです。
 具体的には、例えば、海(次元航行部隊)でなら、御座艦(ござぶね)となる大型艦の他にも、中型艦二隻を「直属の部隊」とすることが認められており、それを実行した場合には、自分の固有戦力だけで(最小限のものではありますが)「艦隊」を組むことも可能となります。
【また、一般に、中型艦一隻は小型艦二隻に換算されるので、『御座艦の他、小型艦四隻』を保有することも「法的には」可能です。(←重要)】

 しかし、こうした「将軍特権」は、実際には〈九世界連合〉の時代の「負の遺産」であり、今ではほぼ死文化しています。つまり、実際には、それほど多くの「直属の部下」を(かか)え込んでいる将軍など、今ではほぼ実在しません。
 あくまでも一般論ですが、それを保有するメリットよりも、直属の部下が不祥事を起こした時のデメリット(つまりは、責任問題)の方がはるかに大きいので、将軍たちはみな、それほど多くの「直属の部下」は持ちたがらないのです。
(言い換えれば、大半の将軍は、「本当に信頼できる、ごく少数の人間」だけを直属の部下にしています。)
【今では『法令そのものを書き換えて、将軍特権など廃止しよう』という動きもあり、実際に、新暦100年の「大改正」では、将軍特権も大幅に縮小されることとなります。】


 さて、次は歴史の話になりますが、〈九世界連合〉の時代には、いろいろな意味でミッドチルダとヴァイゼンが二大強国でした。と言うよりも、〈連合〉が九つの世界から始まったこと自体が、両国の駆け引きの結果だったのです。
 ミッド政府は当初、『まずは、かつて「聖王家直轄領」だった八つの世界だけで連合しよう』と計画していました。しかし、そうすると、ミッドチルダは地理的にも連合の中心に位置し、ヴァイゼンは連合の西端部に位置するという形になってしまいます。
 ヴァイゼン人としては、これは面白くありませんでした。
(一方、ガウラーデやファストラウムの人々は、そんなことは全く気にしていなかったようです。)
 そこで、ヴァイゼン政府は、『新たな体制に参加するのは、「惑星統一政府があり、なおかつ、身分制度の無い世界」だけにするべきだ』と主張して、ミッドよりも東側にある三つの世界(キルバリスとシャグザードとパドローナ)を切り捨てようとしました。
(結果としては、オルセアもまた切り捨てられることになります。)

 主張そのものは全くの正論なので、ミッド政府はヴァイゼン側の意図を理解しながらも、あからさまな反対はしませんでした。ただ、『加盟する国が四つだけでは、わざわざ連合するメリットに乏しいのではないか?』と苦言を(てい)するに(とど)まります。
 すると、ヴァイゼン政府は、『それならば、先の二つの条件に適合する諸世界に広く参加を呼び掛けてみるのは、どうか?』と主張し、みずから「北隣のゼナドリィと、南隣のフォルスと、西隣のフェディキア」に声をかけました。
(ヴァイゼンから見ると、この三つの世界と「東隣のミッドチルダ」には、一等航路がつながっており、「個人転送」でも移動できる程度の距離なので、フェディキアが参加してくれれば、ヴァイゼンは地理的にも「連合の中心」となることができるのです。)
 しかし、フェディキアは歴史的に、ヴァイゼンとは若干の確執があったため、フェディキア政府はマグゼレナ政府とともに「様子見(ようすみ)」を決め込みました。
 一方、フォルス政府はごく自然に(これといった思惑も無いままに)自分たちの世界と一等航路で結ばれている「モザヴァディーメや、さらにその先にあるパルドネア」にも声を掛けます。
【しかしながら、フォルス政府は後に議会での議決の手続きに手間取った結果、管理世界としての番号(ナンバー)は、フォルスの方がパルドネアやモザヴァディーメよりも(あと)になってしまいました。】

 そして、『最終的には多数決で物事を決めるのなら、加盟国の数は最初から奇数の方が良いのではないか?』という声が上がったところへ、最後に飛び込んで来たのが、ドナリムだったのです。

 こうして〈九世界連合〉は成立しました。
まずは、各世界を代表する九人の大将軍が〈本局〉に(つど)い、直接に話し合いの席を持つことになります。
 この時代にはどの世界でも大将は一人だけだったのですが、幾人かの大将は疑心暗鬼に駆られ、暗殺や(だま)し討ちを警戒して、『会談の席まで相当数の兵を同伴させることを認めてほしい』などと言い出しました。当時は、まだ『他の世界の人間を無条件に信頼する』ということの難しい時代だったのです。
 そこで、「大将が同伴できる固有戦力の規模」などに関する次官級の協議が先行して開催され、その席で「各世界の大将に認められる特権の数々」が決定されました。
 確かに、そうした規定が無ければ、九世界連合の運営はこれほど円滑には進んでいなかったことでしょう。
 しかし、それらの諸権利は後に個々の世界で「大将以外の将軍たち」にも拡張され、九世界連合の時代の末期には「将軍特権」として一般化してしまいました。
 言うならば、「将軍特権」とは、相互不信と妥協の産物であり、後に死文化したのも当然の「負の遺産」なのです。

 また、ミッド旧暦462年に〈次元断層事件〉が起きて「高名な」レガルミアが滅び去ると、その国とも多少の国交があったフェディキアとマグゼレナは大いに危機感を(いだ)き、『もはや様子見(ようすみ)などと言っている場合では無い』と、連合への参加の動きを見せ始めました。
 一方、セクターティは長らくミッドチルダに対して、ほとんど(さか)怨みのような敵対心を持っていたのですが、『新たな時代の潮流から取り残される』ことを(おそ)れて、その両国を出し抜くように、今ひとつ乗り気ではなかった隣国ルーフェンをやや強引に巻き込んで、一足先に連合へ正式に加盟を申請します。
 その直後にフェディキアとマグゼレナも参加したことによって、ミッド旧暦465年に、合わせて13個の世界から成る〈時空管理局〉が成立しました。

 時空管理局は、創設の直後から「ロストロギアの管理」と「質量兵器の廃絶」という根本理念を(かか)げて「統合戦争」を開始しました。
 この戦争によって、まずはシガルディスが、次にデヴォルザムとリベルタが、新たな「管理世界」となりました。
 すると、長らく「中立」を決め込んでいた北方のイラクリオンとラシティも、ようやく重い腰を上げて「管理局システム」への参加を表明します。
 さらには、南方の四世界同盟(ゲルドラングとザウクァロスとヴェトルーザとハドマンド)も、停戦に合意して管理世界の一員となりました。
 そこで、ミッド旧暦540年に、管理局は〈中央領域〉の統一を記念して改暦し、その年を「新暦元年」としたのでした。


 
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